玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

こんどは反靖国十字軍ですか

2005年10月18日 | 「世に倦む日日」鑑賞記
常にレベルの高い記事で私を楽しませてくれる「世に倦む日々」が小泉総理の靖国参拝を受けてまたもや素晴らしい考察と予測を明らかにしてくれた。

小泉靖国参拝の裏にある三つの政治目的 - 中韓は全力で阻止を
小泉首相が昨日(10/17)を靖国参拝の決行日に選んだ裏側を考えてみると、何やら用意周到で狡猾な戦略的計算を感じさせられる。(略)この参拝は挑発であり、政治的な仕掛である。中国のナショナリズムを刺激し挑発して、その反動で噴出する「被害者意識」と中韓への反感を利用して日本国内の政治空気の右傾濃度を強め、右傾化政策を通過させる思想的基盤を固めようとしているのだ。
「小泉は馬鹿」「頭がおかしい」と罵倒するばかりの一部左翼(右翼)ブログと比べると「世に倦む日々」の質の高さは明らかだ。馬鹿や狂人が4年以上も総理の座を奪われずにいるはずがなく、強い意志を持ち政治的直感に優れてなければ不利とされた選挙に打って出て大勝利を掴むことなどできはしないのだから。


さらにこの時機の選択については、さらに二つの意味を加えて考えることができる。一つは国内の政治関心を靖国問題に揺り戻すことで、国民の脳裏から郵政民営化選挙の「ファシズム的経験」の記憶を希釈し消去することである。政治議論の争点を靖国問題に戻し、改革ファシズムへの疑念や追及を焦点化させないように揉み潰すことである。
これはどうだろうか。靖国参拝支持・容認派にしてみれば、参拝が現に行われているのだからわざわざそれを争点にすることにメリットはない。靖国問題で国民を煽っているのはむしろ反靖国・左翼勢力のほうであろう。


恐らく小泉首相は、この二週間ほど中韓からのリアクションを報道させ、国内の政治関心を靖国問題に集中させ、国内での世論対立状況を高め、結果的に小泉内閣の支持率を落とすことを企んでいるのだろう。右翼のフジは別にして、NHKも含めて報道側の大勢は、近隣諸国との友好関係を破壊する小泉外交に批判的である。昨夜のNHKの7時のニュースの世論調査数字がそれをよく示していて、靖国参拝反対が賛成をポイントで上回っていた。このバランスは基本的に変わらない。だからこの二週間のあいだ、政治報道が靖国問題に関わる中韓の対日批判で埋められれば、小泉内閣の支持率は自然に下落する。
小泉総理の靖国参拝はすでにほとんどの国民にとって「織り込み済み」なので、いまさら支持率を上げたり下げたりする効果は少ない。マスコミが大騒ぎしても、国民のほとんどは大して関心を持っていないだろう。
無関心な観客の目で小泉総理の「簡潔・寡黙・庶民的」な参拝の姿(そのために保守勢力から批判されている)と、中韓の反靖国デモにおける「絶叫・激怒・侮辱」の映像とを見比べたとき、多くの国民は「原因と結果がつりあってない」と感じ、中韓の反応は異常に大げさで共感できないと思うだろう。
選挙のときも各党の政策よりCMを比較していた映像重視の私としては、「小泉さんが参道を歩く姿」「英霊の前で一心に平和を祈る姿」が映画の一シーンのようでとても絵になっていたので支持率はむしろ数パーセント上がるんじゃないかと予想している。


私の予想では、二週間後の内閣人事のサプライズで内閣支持率は過去最高値を記録し、国民はその前に報道された靖国問題と不全外交の不興不評を一瞬で忘れる。
次の内閣改造では、後継者候補をもれなく党と内閣の要職に就け、その働きぶりを見せて国民の判断を仰がなければならないのだから、サプライズ人事をする余地はそもそも少ない。小泉内閣有終の美を飾るためにはサプライズは必要なく、むしろこれまでの仕事をまとめられる人材をそろえた重厚であまり面白みのない顔ぶれになるだろう。内閣支持率は上がるにしても小幅に留まる(すでに充分高いのだから、上げようにも上げしろが少ない)。


私は、破壊の極にある日中日韓関係を欺瞞的に「正常化」演出する人間、また釣魚台迎賓館で国務委員の唐家旋を前にして、小泉首相の靖国参拝を「内政問題だ」と強弁して開き直れる適役の人間として、刺客ギャルで国際政治学者の猪口邦子が選ばれるだろうと予想したのだが、果たして人選結果はどうなるだろうか。
私は町村外相の留任を予想し期待するが、もし代えるのであれば安倍氏か武部氏を推す。
安倍氏はともかくなぜ武部氏?と疑問に感じる方も多いだろうが、私は日本の外交責任者には「英語がうまくて頭のいい国際通」よりも「実直で腹の据わった愛国者」がふさわしいと考えているのであえて武部氏の名前を挙げた。猪口氏や舛添要一氏のような国際政治学者を外相に起用するのは安直すぎて小泉の好むところではあるまい。外交を自らの得意分野と考えている小泉総理が、自分を素人扱いしそうな鼻っ柱の高い学者先生を重用するとは思えない。経済が苦手なのを自覚して竹中氏に任せたのとは全く違う。


さて、中国と韓国はどう出るのか。どう対抗するべきなのか。日本国首相の靖国神社参拝は絶対に許容できない国家の一大事である。それは日本国民の一人として首相の靖国参拝に反対している私も同じ立場であり、また戦争の悲劇を繰り返すまいと念じているアジア諸国の人々も共通の思いだろう。これは絶対に阻止しなくてはいけない。今回、韓国が中国と同一の方式で対応を合わせたのはよかった。両国ともそれなりに今回の事態への準備をしている。両国政府はこの問題をテーマにした緊急外相会談を開き、対応を詰め、APECで中韓首脳会談をやって「反靖国参拝」の共同声明を世界に発表するべきだ。その共同声明にロシアとシンガポールの支持を取ることだ。そして、あの六カ国協議の場で、日本の靖国問題を東アジアの平和へ脅威として問題提起すればよい。

中国と韓国の国民は「反靖国参拝」のブロガー同盟を作って、世界中にバナーを貼りまくることだ。日本大使館を壊す愚行の前にそれをやれ。
そもそも日本国総理の靖国参拝を「絶対に許容できない国家の一大事」としてしまったのが中韓(最近は「特定アジア」とも呼ばれる)の大いなる愚行であった。日本人が選ぶ日本の総理が日本国内の宗教施設に参拝するのを外国が無理やり止められるはずがない。これまでの総理のように中韓の機嫌を伺う人物であれば思うようにいったが、小泉純一郎という変人の頑固者が総理でいるあいだは中韓がいくら「絶対に許容できない」といきりたっても参拝を阻止することはできず、いたずらに敗北感に浸るだけである。馬鹿馬鹿しくもお気の毒な限りだ。「絶対に許容できない」という極端な主張ではなく「不快感の表明」程度にとどめておけば良かったものを。
「『反靖国参拝』の共同声明」「中国と韓国の国民は『反靖国参拝』のブロガー同盟を作って、世界中にバナーを貼りまくることだ」というthessalonike2さんのアイデアは実に素晴らしい。私は諸手を挙げて賛成する。
中国・韓国と日本のどちらが偏狭なナショナリズムのとりこになっているか、どちらがより平和で民主的か、世界の人々に曇りない目で判断してもらおうではないか。