牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

肥育と稲ワラ

2010-10-21 21:54:14 | 肥育

肉質が低迷している原因の一つに、肥育飼料の給与法があげられる。

期待したように体幅が出ない。
仕上げ期になってからの食い込みが今一である。
軟便や下痢がちである。
アシドーシスや蹄葉炎に罹りやすい。
肝膿瘍になり易く、肝廃棄が目立つ。
ルーメン絨毛の付着が診られる。
肉色が濃く、サシも今一で枝肉評価が低い。
皮下脂肪が薄すぎる。

以上のような症状が度々起きる場合、ルーメン内環境が正常でないことが考えられる。
その原因として考えられるのは、肥育用配合飼料と粗飼料、とくに稲ワラの給与バランスが崩れていて、配合飼料の給与割合が多過ぎると上記のような症状を起こし易い。
本来、牛は稲ワラや乾草などの粗飼料を消化するために反芻をする。
つまり草食動物であることから、肥育であっても粗飼料の摂取割合がやや高い方が、ルーメン内の環境は正常に保持される。
育成期間の頃から、稲ワラは常に飽食状態とし、配合飼料を漸次増量する給与法を取ることにより、ルーメン内環境が正常に保たれることから、飼料の摂取量は順調に経過し、健康状態を保持できることから、増体や体幅が期待できることになる。
以前、屋外肥育と称した実験の中で、育成期では、乾草(ル-サン)を稲ワラを2~3cmに細切したと同様な状態で、配合飼料(75%)と乾草(25%)に混合して与え、肥育中期からは稲ワラ(25%)に置き換えた混合を、いずれも飽食させたことがある。
この場合、25%の粗飼料は、草草、ワラワラだけを思わせるような状態で、配合が隠れて見えるほどであった。
この場合、育成期も肥育期も実に好んで採食し、増体速度は良好で、体幅に富んだ結果となった。
この給与法を行うことで、正常なルーメン環境が保持され、このような結果となったと判断したものである。
話を戻すと、それにより、下痢なども改善され、枝肉の評価も上がることとなる。

以前国産稲ワラは肉質に問題ありと記述したことがあるが、その原因は、ワラが良質のあまり、V/A含量が高いためか?としたが、国産ワラは細切しないケースでは、その比重が軽すぎるために、実質の摂取量が不足しがちとなることから、上記した内容と同様で、肉質に問題が生じたことも考えられる。
国産稲ワラを利用する場合は、カサの割には軽量であることを認識して、細切などを行う必要がある。

また、増体を期待して摂取量を高めることを述べたが、但馬系の素牛の場合は、育成期からこのように強引すぎた給与法では、体脂肪の蓄積などにより肥育後半に問題を引き起こす可能性がある。