テレビ、新聞、雑誌、ラジオ・・・
各メディアで「戦後70年」特集が花盛りです。
でも、まさか漫画(コミック)までとは思いませんでした。
ビッグコミックオリジナル増刊号も戦後70周年特集。
コミック雑誌のことはよく知りませんが初めての試みではないでしょうか。
漫画が戦争や戦争の時代をどう描いて来たのか・・・
ちょっと興味がわいて「文藝春秋」のついでに買ってしまいました。
なかなか豪華な執筆陣です。
巨匠あり、鬼籍に入った人あり、中堅あり若手あり・・
戦争をテーマにした旧作・新作、力作がズラリと掲載されています。
考えてみれば当時は漫画のような軟弱なものを書くこと自体が「非国民」と呼ばれました。
でも、そんな時代でもちゃんと「表現」はあったんですねえ。
水木しげるの「人間玉」という作品が迫力ありました!
輸送船の狭い船底に押し込められた兵士たちが
突然、魚雷攻撃の報を受けてパニックになって必死に脱出する話です。
ご覧のように一本のロープに人間玉のようにぶらさがって
懸命に甲板を目指すのですが、一度にぶら下がったために身動きできず
やがてロープが切れるという哀しい結末です。
これは水木しげるさんの実体験を下敷きにした漫画だそうです。
滝田ゆうさんの漫画も懐かしいですねえ。
本土空襲も激しくなって来た東京の下町で暮らす兄と妹の話です。
すでに両親はなく、川べりの貧しいバラック小屋で肩を寄せ合うように生きる二人。
イモの蔓などをかじって飢えをしのぐ耐乏生活の中で
兄に白い米を食べさせたい一心で、とうとう男に体を売る妹。
その哀切極まりない兄妹愛は「火垂るの墓」を彷彿とさせて胸が詰まります。
折りこみページには
なんと藤田嗣治が描いた戦争画「アッツ島玉砕」が入っていました。
そんなコミック雑誌、見たことありません。(笑)
「アッツ島玉砕」は国威発揚のために描かれた戦争画です。
アッツ島は太平洋戦争最大の激戦地で日本の守備隊2600名が全滅。
戦中、国の命で従軍画家となった藤田は各地を転戦しながらアッツ島を描きます。
まさに死屍累々、地獄絵を思わせるその迫真の描写は身震いするようで
後に戦争画の傑作として高い評価を受けますが・・
終戦後、この絵によって「戦争協力者」のレッテルを貼られた藤田は
日本社会に絶望し、失意のまままま再びパリへと去り
二度と祖国の土を踏むことはありませんでした。
私は藤田嗣治の「アッツ島玉砕」は世界に誇る反戦絵画の傑作だと思いますね。
国立近代美術館でいつでも観られますので、皆さんも、ぜひ一度!
ちょっと話は逸れましたが・・・
ビッグコミックオリジナルの戦後70周年特集号。
失礼ながら予想以上に見ごたえがあって、なかなか素晴らしかったス。
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