休日は黒澤映画を楽しみました。
1963年製作の傑作サスペンス『天国と地獄』です。
もう半世紀以上も前の映画ですが・・・
そんな古さを全く感じさせない骨太な映画ですねえ。
「用心棒」「椿三十郎」と立て続けに娯楽時代劇を撮った黒澤が
初めて現代劇に挑んだのは「身代金誘拐事件」を扱った
エド・マクベイン原作のサスペンス。
脚本も映像も黒澤映画らしい迫力と緻密さに溢れています。
主演は黒澤映画の不動のエース・三船敏郎。
私、昔からこの人の演技が気に入らず
ただ声がデカイだけでワンパターンの「大根役者」と
散々こきおろして来ましたが
最近になってようやくその魅力がわかって来ました。
彼の動きや表情は徹頭徹尾「カメラ」を意識した映像的な演技で
黒澤監督はその迫力を何よりも買っていたのでしょう。
いわば映画育ちの生粋の映像派。
主任刑事役を演じた仲代達矢。
この人は対照的に「舞台派」の代表選手でしょうか。
セリフの説得力は他の追随を許さぬ迫力で
八十歳を超えてなお「マクベス」を演じ続ける舞台人の気概を感じます。
その他にも錚々たる演技人が出演していますが
なにせ50年以上も前の映画で物故者がほとんどです。
だからこそこういう名作映画は後世に残していきたいですねえ。
いい映画を観た後は、いい夕焼けでした。
いい機会だから・・
黒澤映画をまとめて観てみようかなあ。
電車の路線を利用した、犯人のトリック然り、三船さんが動くと、ストーリーの全体が一緒に動き出すようなオーラ、迫力があってこその現代劇だと思います。
「マクベス」…、シェイクスピアも大好きです。黒澤監督も、大きな影響を受けていて、オマージュは豊富にありますね。歴史好きが、文学と一致する、つまり、一時代を築いた作家だと思います。
私は決して黒澤ファンではなかったのですが
最近になってようやくその「凄さ」がわかって来ました。
俳優・三船敏郎の魅力も然りです。
おっしゃる通り、ストーリーを引っ張っていく迫力、動的オーラがありますねえ。
マクベスのオマージュと言えばやはり「蜘蛛巣城」でしょうか。
近々、もう一度見直してみたいと思います。
これからもよろしくお願いします。
私は、この作品が黒澤明のピークだったと思います。その理由の一つは、当時彼の子供が大きくなり、幼児誘拐の恐怖を黒澤が感じていたからだと思う。
次の『赤ひげ』は異常な精神状態になり、1年間も撮影にかかってしまいます。
以後東宝は黒澤明を見離し、三船敏郎をはじめ脚本家もいなくなり、その結果黒澤は5年に1本しか作れなくなるのです。
なぜ黒澤明は、ずっと三船敏郎を使ったのか、私の考えでは、自殺してしまった彼の兄、須田貞明に三船が非常によく似ていたからだと思います。
初めて聞く『黒澤映画の裏話』ですねえ。
監督の精神状態と作品の出来は決して無縁ではないとは思いますが
そんな事情があったとは知りませんでした。
プログラムピクチャーの撮り手だった黒澤が
ドンドン「大家」になって行く背景にもそんな原因があるのでしょうか。
確かに「天国と地獄」の活劇としての面白さは彼のピークだったかも知れません。