まろの公園ライフ

公園から世の中を見る

男たちの背中

2012年03月30日 | 日記

先日、新宿で写真展を見た後
久しぶりに「歌舞伎町」の雑踏の中を歩いた。
ご存じのように日本で一、二をあらそう大歓楽街である。



まだ薄暮の時間にも関わらず、すでに人があふれていた。
久しぶりに・・・とは書いたが、東京に出てもう10年以上になるけれど
歌舞伎町に足を踏み入れたのは2、3度しかない。
歓楽街は嫌いではないのだが、歓楽過ぎてどうも肌に合わない。



とにかく「猥雑」な街だ。
ここ歌舞伎町を舞台にした小説も数多いが
大沢在昌の「新宿鮫」シリーズは以前から欠かさず愛読している。
そんなにカッコよくは生きられないよなあ・・・などと言いつつ
主人公の鮫島刑事の背中に自分をオーバーラップさせながら読んでいる。
それ以上に、街の喧噪やすえた臭いまで立ち上って来るような
欲望の街の「猥雑」な魅力にハマっているのかも知れない。



ただ、その歌舞伎町も時代の流れと無縁ではない。
不況もあって庶民が気軽に「歓楽」を愉しめるような大らかさは無くなりつつある。
ありふれたチェーン店や大型店舗ばかりが目立ち
街から愛すべき「猥雑さ」がしだいに薄れているような気がする。



途方に暮れて信号機。
どこかの店に入ろうと思うのだが、なかなか決心がつかない。
やっぱり肌が合わないのだろうか・・・



仕方なく反対側の西口に行ってみることにする。
高層ビルに陽が沈んでいく。

JRの大ガードをくぐって新宿西口へ。
車が疾走する中を、自転車のオッサンが果敢に疾走してくる。
危ないけどスゴイなあ・・・



ガードをくぐると街の雰囲気がガラリと変わる。



ガード横にあるのが有名な「思い出横丁」。
戦後の焼跡・闇市時代にルーツを持つ古い飲み屋街だ。
オジサンはこの看板を見るとホッとする。
確か東京に出て来て初めて一人で入ったのがこの「思い出」横丁だった。



正式には新宿西口商店街と言うそうだが
別名「やきとり横丁」と呼ばれるように焼き鳥屋さんが圧倒的に多い。
「仕方がない、ここで一杯やるか」(何が仕方がないのか・・・)

ほとんどが立ち呑みスタイルで
小さな店が肩を寄せ合うようにひしめきあっている。
オジサンは俄然、元気が出る。

おお、いるいる、オジサンたちの背中が並んでいる!
男の背中には哀愁があるというが、哀愁が団体で並んでいるぞ。

  「いらっしゃい!一日お疲れさん」
  「一人だけど・・・」
  「ハイ、お一人さん!ちょっと奥に詰めてもらえますか」
  「すみません」

そんなやりとりがあって私も哀愁の仲間入りをさせてもらった。

ほとんどが勤め帰りのサラリーマンたちだ。
若い上司の悪口や子供の進学問題、天下国家の話まで話題は多種多様。
それを聞きながら焼き鳥をアテに呑む。
焼跡の時代からこうした夜がどれほど繰り返されて来たことか・・・
それを考えたら急速に酔いが回って来た。



見上げると高層ビルの上には美しい三日月だった。


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