まろの公園ライフ

公園から世の中を見る

大阪ゆらり法善寺

2012年02月17日 | 日記

道頓堀をぬけて法善寺にやって来た。
入り口に掲げられた看板の文字は今は亡き「藤山寛美」の手蹟。

盛り場のど真ん中でうっかりすれば通り過ぎてしまいそうな露地。
でも、一歩入れば濃密な「大阪」が立ち現れる。

有名な「夫婦善哉」の店。
そう、法善寺は大阪が生んだ作家「織田作之助」ゆかりの町だ。
織田作は太宰治や坂口安吾と並んで「無頼派」作家の代表選手だが
二人よりはるかに文章はうまいし、人情の機微を知った大人の作家だったと思う。
肺結核で34歳の若さで他界。惜しみて余りある才能だった。

法善寺の「水掛け不動」さんは昼間でもお参りの人が絶えない。
法善寺と言えば「月の法善寺横丁」というヒット曲があった。

  ♪ ああ、夫婦善哉 思い出横丁 法善寺 名残り尽きない 灯がうるむ・・

思わず歌いたくなったが前のカップルに笑われるからガマン。

水掛け不動さんは苔むして凄いことになっている。
庶民の悲喜こもごもの願い事を一身に引き受けて来た歳月の結果だろうか。
その労苦に感謝しながら私もひしゃくで水をかけて参拝。
はやく仕事が終わって心おきなく思い切りビールが飲めますように・・・



そう言えば、映画「夫婦善哉」でお馴染みの女優・淡島千景さんが亡くなった。
森繫久彌さんの「柳吉」と、淡島千景さんの「蝶子」は
ともにネイティブだけに大阪弁の掛け合いも見事で息ピッタリの夫婦だった。
日本の人情映画のまさに代表作ではなかろうか。

法善寺横丁の猫もどことなく人情がある。
織田作では「夫婦善哉」もいいが、私は「わが町」が大好きだ。
「ベンゲットの他やん」こと佐渡島他吉という放蕩無頼な主人公の魅力は
岩下俊作の名作「無法松の一生」の人力車夫・富島松五郎とオーバーラップする。
その他吉が四つ橋にある電気科学館のプラネタリウムで
星空を仰ぎながら息を引き取るラストシーンは何とも哀切で忘れられない。

というわけでやって来たのが法善寺の先にある「丸福珈琲店」本店。
実は久しぶりにここのコーヒーが飲みたくて、わざわざミナミまで足を伸ばしたのだ。
今さらかも知れないが、昭和9年創業の大阪でも屈指の老舗珈琲店だ。

実にクラシックなつくりで落ち着く店内。
大阪の文化人や芸能人たちにもこよなく愛された店である。
確か田辺聖子の小説「薔薇の雨」の舞台にもなったと聞くが・・読んでない。
ここのコーヒーは自家製焙煎技術と秘伝の抽出法が自慢で
「濃いコーヒーの極み」と呼ばれる。

とにかく味が濃い!
しかし、濃いだけでなく、深みがあって、しかも後味がサッパリしている。
実に不思議なコーヒーでクセになる。
何やら長々と観光案内みたいなものを書いて来たが
要するに「丸福」のコーヒーの素晴らしさを伝えたかったのである。
二杯おかわりをして、その馥郁たる香りに陶然とした後
走るようににしてホテルに帰ってパソコンに向かった私であった。