くまわん雑記

時々問い合わせがありますが、「くまわん」というのは、ある地方の方言です。意味はヒミツです。知る人ぞ知るということで。

渡辺淳一の反天皇論: 『週刊新潮』の「あとの祭り」

2012年08月11日 | Weblog
渡辺氏、日の丸はお好きなようだが、君が代は随分お嫌いらしい。それについて氏は、「あまり素晴らしいとはいいかねる」としたうえで、以下の抜粋の通りに述べておられる。まず、

 その証拠に、この国家を大きく口を開けて、明るく歌っている日本人はほとんどいない。よく見かけるのは、大相撲の千秋楽の日だが、みな口を小さく開け、しぶしぶ歌っている感じ。

「はあ?」である。全集までお出しの大作家先生にしては、まるで子供の作文だ。いや、夏休みの宿題にいやいや書かせられる読書感想文にも劣る、とはでは言うまいが。「すばらくしくない」と言っておいて、その「証拠」がご自身のあくまでも個人的な印象論。それは「証拠」とはいいませんよ、大先生。そもそも、日本語の使い方として、それはおかしい。それとも、「オレは大作家なのだから、オレが見たもの、感じたものは、間違いなく真実なのだ」とでも?

 それに、国家は「明るく」歌うものだとでも? それも一面的、一方的な決めつけですよ。国家には血なまぐさい歌詞や背景をもって作られたものも少なくはないですが、それを「明るく歌え」とは、大先生、血を見るのがお好きなんですね。中国の国歌、そもそもは映画に出てきた抗日歌ですが、あれは歌詞からいって「明るく」歌うよりも、力んで気持ちを高ぶらせてうたってこそなのでは? ヘラヘラして歌っては、抗日に命ささげた同志、同胞に礼を失しますよ、中国人としては。


 大先生も妄言はまだまだ続きます。先生のおっしゃる歌いっぷりについて、「無理もない」と。ところが、なぜ「無理もない」のか、その理由には直接触れず、君が代の歌詞を載せ、その後は歌詞批判。

おいおい、先生。自説、自論をむりやりあなたの印象論のなかで「しぶしぶ歌っている」人々の心理状態と同一化するって、それはあなた、もう無茶苦茶ですし、あなたに「君が代」を歌っている姿をウォッチされた方々に対して失礼ですよ。他人の心のうちを勝手に詮索を超えて、決め付けてしまうなんて・・・。いかに大作家先生でも許されません。

 では、一体歌詞の何がいけないと大先生はおっしゃるのかというと、それは冒頭の「君が代」がいけないと。大先生「君が代」を「天皇が統治されるこの世」と解釈されたうえで、次のようにおっしゃるんです。

 だいたい、天皇が統治する時代など、とうに、第二次世界大戦で終わったはず。それから70年近く経っているのに、いまだに「君が代」などと歌わせること自体、疑問である。

今度の「はあ」は「?」ではなく、ため息の「はあ」、つまり「はあ~」です。あのねえ大先生、その「天皇が統治する」っていうあなたの解釈自体、それ、あなたの自前の解釈でしょう。じゃあ、「統治」を「君臨」と変えたら、あなたどう反応します。なぜ「君臨」ではなく、「統治}なんですか。「統治」だとか「君臨」だとか、近代になってから事実上頻繁に使われるようになった言葉ではなく、「天皇のおはします世」とか「天皇をいただくこの世」って訳でも、「第二次世界大戦で終わった」って相変わらずおっしゃいますか。戦前、戦後ともに「天皇」をいただいておりますよ、我が国は。日本国憲法の英訳において、皇位は「throne」。つまり「君主の地位」ですから、政治への関与や権能はさておき、我が国の国君であることには、かわりなしということなのでは。起草をしたGHQの連中もそう意識していたから「throne」としたのでは。「象徴」すなわち「symbol」ってのも、英国君主をさす言葉からの拝借品ですしねえ・・。

 「君が代」を「天皇が統治する」とするのも、またそれを戦前までの日本史の実際と同一視するのも、歴史学的には大いに、大いに、議論、いや批判、反論の余地のあるところでしょうなあ・・・。いかに大作家先生といえども、歴史学に関しては「ど」素人。ご自分の土俵ではないところで好き勝手いえば、そりゃ馬脚ものです。いえ、それ以前に「君が代」反対論を天皇の在り方云々をもって論じられるのであれば、少なくとも天皇をめぐるこれまでの諸学の研究成果に親しんでおくべきでした。それを無視して「公器」での言いたい放題は、大先生の影響力を考えれば、ちょっと無責任。ちょっとずに乗りすぎでは?

 こじつけではなくとも人々の心のうちや歌詞の独善的解釈の繰り返しで「君が代」批判をする大先生の真意は?これが大作家としての傲りゆえの独善なのか・・・。私はそうは思わないな。いや、かりにそうでも、君が代のしかも「君が代」がいかんってのは、事実上の「反天皇論」。

不倶戴天、こういう輩とはともに天を戴かず。








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