鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

18 冬籠り夜話

2018-01-21 06:59:45 | 日記
---煌めいてもう動く物何も無き 聖属性の氷の社---

炬燵から外を眺めつつ思索に耽るって楽で良い。
元々鎌倉は避寒の地で比較的に温暖だが、病明けで皮下脂肪が薄く寒さに弱くなった。
生来の出不精に加え画業文筆業とも家に籠る仕事だから、冬に限らず年中引き籠りだ。
「引き籠り」より「冬籠り」と言えば何となく風流で、出不精の言い訳にはなる気がする。
寒くとも元気に寺社を巡る若い恋人達は見ていて微笑ましい。
同じ観光客でも、道いっぱい広がる団体の傍若無人さは………。
最近では鎌倉に雪が降るのは年に一度あるか無いかなので、降るとカメラと手帳を持って気合で家を出る。
雪の写真には明け方か夕暮が良いけれど、寒くて小一時間で根が尽きる。
画業としてはスケッチをしたいが、手が悴んで無理なのだ。

---年一度雪の夜にだけ現れる 我が少年の頃の街の灯---
こんな私でも純粋だった少年時代の記憶くらいある。
晩年になるほど尚更そんな暖かな思い出が無いと冬は越せない。
今の子供達にも詩嚢に残るような体験をして欲しいね。
「かくれんぼ三つ数へて冬となる」寺山修司
その時は分からなくても、大人になった時に詩的体験だったと思えるような。
大人になってしまうと感度がどうしても鈍る。

で、その少年が隠者にまで落ちぶれて詠んだ句がこれ。
---古き世の美人画掛けて冬籠り---

草紙洗い小町 冷泉為恭 江戸時代 探神院蔵
引き籠りには美少女フィギュア、冬籠りには美人画である。

©️甲士三郎