和井弘希の蘇生

桂信子先生に師事。昭和45年「草苑」同人参加。現在「里」同人「迅雷句会」参加

若芽37/小説「新・人間革命」   

2013年12月03日 04時39分20秒 | 新・人間革命


      小説「新・人間革命」

【「聖教新聞」 2013年 (平成25年)12月3日(火)より転載】


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若芽37(12/3)


 一九七七年(昭和五十二年)の十一月の下旬、新一年生の入学選考が行われた。

 有竹富美枝は、事前に正義には、「あいさつだけは、しっかりしなさいね。あとは、わからないことは、わからないと言えばいいのよ」と、言い聞かせておいた。

 富美枝は、子どもの正義と一緒に、会場の創価中学・高校へ向かった。

 開校をめざして建設が進む、東京創価小学校を目の当たりにすると、“なんとしても、わが子をこの学校に入れたい”という、強い思いが湧き起こった。

 彼女は思った。

 “うちは経済的には、決して楽ではない。しかし、子どもは、この創価小学校で学ばせ、立派に育てたい”

 でも、“入学はできないのではないか”という気がしていた。小学生の子をもつ近隣の母親たちから、“私立の小学校は、どこも、家柄のよい、富裕層の子弟しか入学させない”という噂話を、耳にしていたからだ。

 “それが理由で入学できなかったら……”と思うと、面接の順番を待っている間も、目に熱いものがあふれて仕方がなかった。部屋の片隅で、何度も涙を拭った。

 選考の結果、正義は合格となった。富美枝は、小躍りしたい気持ちであった。貯金をはたいて、入学金や制服代などに充てた。

 大いなる希望と、“本当に生活していけるのだろうか”という不安をかかえながら、正義の入学式に出席した。

 制服に身を包んだ、体の小さなわが子を見た時、彼女は、“これからが私の戦いだ。頑張り抜いてみせる!”と強く心に誓った。

 わが子を思う母親の深き愛は、母親自身の精神の強靱さを培っていく。

 正義が入学してほどなく、知人から、「会計事務所が、事務の人を探している。そこで働いてみないか」という話があった。

 条件もよさそうなので、転職することにした。勤めてみると、仕事量は多いが、給料はそれまでの三倍近くになった。


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