古森病院@福岡市博多区 病院管理者のブログ

ベイサイドプレイス近隣にある長期滞在型病院です。投稿記事は管理者の独自見解であり、医療法人の見解ではありません。

アニサキス

2020-02-10 13:21:56 | 日記
古森病院@福岡市博多区です。

内視鏡をしている施設で時々みかける寄生虫のなかでは
一番多いと思われるアニサキス。
管理人は「アニー」と呼んでいます。

アニサキスはアジやサバ、サンマ、カツオなどの青魚やイカなどの腸
(マスやサケは筋肉内にもいるらしい)に生息し、
当該の魚が釣られた後、流通ルートに乗って
店頭に並ぶ頃にはかなりの時間が経過するため 
魚の腸から魚の身のほうに這い出てきて 刺身などで
生食した場合はそのまま人体に入り、胃や腸に頭を突っ込むことで 
アレルギー反応を起こし
かなりの腹痛(や嘔吐)が発生しますが、
たまに無症状の人もいます。
(管理人はドックやスクリーニング内視鏡でみたことが
何回かあります。)
無症状の人の治療をどうするかは悩ましいところですが(数日後には死にます)、
見つけたら 一応摘出していました。
20匹くらい胃の中にいたのを見たこともありましたが、その地域では
ざらでしたので、学会発表にもなりませんでした。

また管理人くらいの世代の医者は医学部生時代 
寄生虫講座の実習で
その辺のスーパーでしめサバを買ってきて 
サバを粉々にしてアニーを探すということを大抵
やっています。結構な割合でいるんですよね・・・。
最近は締める段階で
アニーを殺すために冷凍したりするみたいなので、
減ってはきていると思います。

アニサキスは魚に寄生して成虫になる虫であり 
人体はたまたま迷入してきたところなので
成虫にはなれず卵も産めず、2~3日で死んでしまい、
体外に排出されます。

厚労省 食中毒の頁
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html

管理人のかつての消化器内科の上司は ある日 腹痛を自覚し
「そういえば昨日アジ刺食べたな・・。アニサキスに違いない」と自己診断し
部下に内視鏡をされるのが嫌だったのと、アニサキスは2~3日で死んでしまうことから
我慢したところ、数日で腹痛が軽快したと言っておられました(笑)。

最近はアニサキスと思ったら 必ずしも内視鏡をしなくても
痛みだけは取れるような治療法があります。当時わかっていたら
管理人の上司も無駄に苦しまなくてすんだかもしれません。

アニサキスによる腹痛は以前はアニサキスが
胃や腸に頭を突っ込んでいるから痛いのだと言われておりましたが
(アニサキスが胃腸に食いついていると思われていた。
→内視鏡でアニサキスを除去したら腹痛が軽快する。)
痛みはアレルギー反応によるものということがわかってまいりましたので
蕁麻疹の治療に使用するような抗アレルギー治療を行い、
アニサキスによる腹痛であれば
腹痛が軽快することが判明しつつあります。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/manms/8/2/8_179/_pdf
(日医大医学会雑誌)

この論文を見ると、初めてのアニサキス感染は無症状で 複数回感染すると
腹痛が発症するとのことですので、まさにアレルギー反応だなあと思います。

しかしながら腹痛がアニサキスによるものかどうかは
内視鏡その他の検査をしないと
わからないので、抗アレルギー治療で軽快しなければ 速やかに
内視鏡やその他の検査をしたほうがよいと思います。
しかし、深夜や休日などで
内視鏡が気軽に行えず、刺身の生食のあとの腹痛なら
抗アレルギー治療を先に考慮してもいいかもしれません。

ご参考まで。

https://komori-hp.cloud-line.com/


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