古森病院@福岡市博多区 病院管理者のブログ

ベイサイドプレイス近隣にある長期滞在型病院です。投稿記事は管理者の独自見解であり、医療法人の見解ではありません。

院内感染対策(感染患者さんの受け入れについて)

2015-07-26 18:15:27 | 日記
古森病院@福岡市博多区です。

少し前のことですが、福岡市の某HIV拠点病院から
「HIV感染症罹患患者の受け入れ態勢について」という
書類のアンケート調査が来ました。

HIV罹患患者さんの高齢者施設受け入れを巡る動き

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=112470
http://www.haart-support.jp/workshop/pdf/h26koreishakaigo_hiv.pdf


要は昔は難病で死の病だったHIV感染症が、
薬の進歩で患者さんが長生きできるようになったことは
喜ばしいのですが、薬さえ内服していれば 通常の感染対策でよい状態の
HIV患者さんが他の病気で要介護状態になった時に、HIV感染が理由となり
介護施設側の受け入れが悪いようです。

当院は今のところ、そう言ったオファー自体が有りませんが
差別とか何とかいう以前の問題として

「療養病床は検査代、薬代を含め入院費に含まれているので
抗ガン剤や麻薬、輸血以外はお薬代を頂けないのですが
HIVの治療薬のような高価な薬(しかも、この薬はHIV治療以外に他の使い道が少なく、
他の人に使えないので、購入するならその方のためだけに
わざわざ買わないといけなくて、もし余っても何処にも転嫁できない薬)を
毎日ずっと使い続けることが難しいのですが、、、」と書いて返送いたしました。

HIV治療の薬代
http://www.hiv100aids100.net/治療編/hiv感染症の治療費は?.html

薬代だけで月に6万。受け入れたらすべて病院の持ち出しです。
ジェネリックとしてもかなりのお値段でしょう。公的補助は患者さんの自己負担を
軽減するだけで、病院の支出額は軽減されません。


これは結核患者さんの受け入れ時と同じ構図です。
時々、排菌はしてないけど(他人へは感染しない)治療はしないといけない方の入院があります。
結核治療は6ヶ月は最低、どうかすると1年くらいしないといけない事があるのですが
抗結核薬もまた結核以外に他に使い道の少ない薬で
(もっともHIVほどは高くありません)
しかも結核は公衆衛生上、公費負担の対象疾患なのにも拘らず
(つまり薬代を含め、診療治療費は公の負担)
療養病床に入院したとたん、薬代は1円もでないなんて
(結核は治療を途中で止めたら、耐性菌にはなるわ、院内感染になるわと厄介な病気です。)
本当にひどい話です。

初めて結核治療中の患者さんを受け入れた時
当然薬代は出ると思って入院を受けた管理人は、
当初 保健所にも結核ならお金は出ますから申請して下さいと言われたのに、
その後「すみません、療養病床では治療費が出ませんでした」と今度は福岡市から言われ、
驚いて 支払機関である国保連にまで 確認の電話をしてしまいましたが、その通りでした。。。

結核公費負担制度
http://www.pref.toyama.jp/branches/1273/kansen/tb-iryouhi.htm

先般、某機関に行きました折、抗結核薬のことについてぶつぶつ
申し上げたところ、国会議員か厚労省に意見を投書するサイトがあるので、
療養病床で薬を飲み続けないと院内感染になり得る感染症の治療費負担について上申してみてはと
言われました。声を上げないと、何事も始まらないのでHIVの事も併せ、やってみようと思います。
結核にしろ、HIVにしろ、そんなによくある事でも有りませんし、公共の利益のため、
公衆衛生に関わる薬代くらい出してほしいと運営側として切実に思っています。

病院ホームページ http://komori-hp.cloud-line.com/

追記(平成29年7月24日)

療養病床に平成28年から HIV感染者療養環境特別加算 という点数がつき
HIVの薬代をねん出できるようになりました。  ので受け入れは可能です。



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再生医療

2015-07-25 17:00:11 | 日記
古森病院@福岡市博多区です。

今日は再生医療のお話です。

再生医療と言うのは
①ノーベル生理学、医学賞を受賞された京都大学の山中伸弥教授のiPS細胞
受精卵由来のES細胞、昨今存在が曖昧になったSTAP細胞などの万能細胞と言われる細胞
(簡単に言うと 色々な臓器の細胞に変身できる細胞)を
利用し 文字通り障害された臓器を再生させる方法

②ヒトの細胞を取り出したあとに遺伝子加工して 再び患者さんの体内に
戻し、損傷の修復に必要な物質を分泌させ、組織の機能の正常化を図る方法

上記の何かの手段で、患者さんの生活レベルを上げるという
画期的な医療で、まだ実験段階ですが非常に注目されている分野の学問(今のところ部分的にしか
臨床応用されていないので学問のカテゴリーですが)です。

万能細胞とは
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/万能細胞


再生医療の対象疾患ですが、
細胞の機能障害や臓器の欠損により発生する疾患は
すべて可能性があると思われます。
臨床応用が始まろうとしている網膜色素変性症(失明に繋がる)、
パーキンソン病(運動機能障害)、慢性関節リウマチ(運動機能障害)、
脳卒中(運動機能障害)、アルツハイマー病をはじめとする認知症(認知障害)を始め、
ALS(運動機能障害)、血液疾患、悪性腫瘍、先天性あるいは
後天性の臓器欠損の補填などなど、、、、

以前は大学やメーカーの研究室で、
文科省の補助金や研究費などで細々と行われていた研究も
産学連携(メーカーなどが大学に寄付をして時限付きの研究部門を作って
(寄付講座と言います)、研究者を募る)によって研究資金を集めたり、
研究者が自分達でベンチャー企業を立ち上げ、
上場して株式を発行して研究資金を集めたり、
製薬メーカーではないベンチャー企業が目星をつけた研究者に
資金アプローチしたりと様変わりして来ました。

山中教授がノーベル賞を受賞された時、会見で
「まだ一人の患者も救っていない」と言われていたのが
先生のお人柄を反映して 印象的でしたが

臨床応用が始まった再生医療の一つの試みの記事をご紹介します。

日本人の医師(岡野栄之慶応大生理学教授)が参加している
ベンチャー企業などの紹介 (②の手段による再生医療)
http://webreprint.nikkei.co.jp/r/LinkView.aspx?c=331D402E452D4A9DA98ADE8EFD8F9243

御紹介記事の出典が一般新聞の医学分野でなく、経済分野の新聞というのが
個人的に面白いと思いました。


ホームページ http://komori-hp.cloud-line.com/






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最近読んだ本

2015-07-21 09:00:00 | 
古森病院@福岡市博多区です。

最近は成人は流行り病もなく、一年で比較的落ち着いている時期です。今年は例年になく
伝染性紅斑(リンゴ病)が子供に流行中で、大人でも一部伝播するケースがあるようです。
血液疾患や自己免疫性疾患の方、妊婦さん以外はあまり重症化することはありません。
妊婦さんが罹患したら妊婦さんのみならず、
赤ん坊にも影響するのですが、流行してもマスコミは静かですね。
ワクチンは有りません。

伝染性紅斑
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k04/k04_23/k04_23.html

福岡市での感染情報
http://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/hokenyobo/life/kansenjyoho/teiten/teitenhoukoku.html



さて、今日は本のご紹介です。
最近読む本が、ビジネス本に偏っている管理人ですが
少し前に発売されたAKB48の?指原莉乃さんの「逆転力」を何気なく買いました。
これは新書です。アイドルが(この言い方が中年ですが。。笑)新書本を出すなんて
珍しいと思いませんか?

福岡市出身の管理人ですが、テレビを見ないことも有り、AKB48は勿論、HKT48も
よく知りません。ただ、小泉元首相の元秘書である飯島勲さんが
AKB48のコンサートに政治の勉強のために行かれたと何かの
インタビュー記事に書いてあり、何でも勉強のネタになるんだなと
思っていたのが、今回のアイドル本を買ってみようと思った
最大の理由です。

まあ、それはともかく

驚きました。

この若さで(若いから出来るのかもしれませんが)、
よく此処まで柔軟性を持ってやっているなあと思いました。
処世術もすごいです。

「(偉い方への)接し方としては、すっごい立場が上の人には友達感覚で話して、ちょっと
偉い人には下から行く。」
(大物と言われる人は寛容なので、軽口を叩いてお話ししても大丈夫だが
中途半端に偉い人はちょっとの無礼がムカつくので
凄く下から行かないとダメ(要約です))

この年齢だから出し惜しみしないで
書けるんだなと思う箇所も結構ありました。

女性はだいたい二面性を持っているものですが
やはり売れてる子は普通のコとは、あらゆる意味で違う(しかもアイドルなので
その辺をあまりガツガツ出せないでしょう)と思った一冊でした。

病院ホームページ http://komori-hp.cloud-line.com/



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アルコール依存症

2015-07-19 06:44:54 | 日記
古森病院@福岡市博多区です。

今日はアルコール依存症についてのお話です。

お酒さえ飲まなければ、内科外来に来なくて良い方は
結構おられますが、お酒そのものは勿論、お酒のおつまみも塩分の多いものだったり、脂が
乗っている物が多く(お酒が進み易いため)勢い体重、中性脂肪やコレステロール、血圧、血糖、
肝機能値、膵酵素値が上昇しやすいです。お酒をやめれば済むことなのですが、(お酒代も浮きますし)
それがなかなか難しい方が多いのが現状です。もっとも病院に来ている方につきましては 比較的
健康について 意識の高い方々と言えます。

管理人はお酒をどれくらい飲んでいるのかお伺いする時は、
アルコール依存症かどうかの質問を混ぜます。
アルコール依存症は、精神科の介入が必要な場合が多いためですが、そうであっても精神科には
なかなか行って頂けません。理由はシンプルで、お酒とお別れするのが怖いからです。
お酒を飲めない管理人にはよく分からないのですが、アルコール依存症の方は
現実逃避でお酒を飲んでおられる方が多く、お酒を飲まずに現実と立ち向かうことが
色々な理由で出来ないようです。

まず、休みの日は朝から(朝は寝ているので、昼からということも有り)飲んでいるという方は、
普通ではありません。
若い人で、「嫌なことを忘れるため飲む」「毎晩お酒を飲まないと寝れない」の二つの質問に
イエスと答える方も普通ではありません。
典型的な方は「毎日 お酒だけしか飲まない(おつまみ無し)」これはかなりの依存度です。
「警察に捕まっても 飲酒運転を繰り返す」これも依存症で間違いないです。

こういう方は大酒家とは異なります。
アルコール依存症の最大の問題は、
身体的、精神的、社会的生命の全てを失いかねないと言うことにあります。
特に身内の方は大変な御苦労を背負いこみます。
覚醒剤や麻薬は違法ですが、アルコールは合法である事も問題解決を困難に
しています。

断酒継続には、専門機関への定期通院、患者会定期参加、嫌酒薬を初めとする内服治療が
三本柱です。
アルコール依存症の方の根本的な問題解決は非常に困難ですが、アルコール治療専門家や
断酒成功者の方々の本が指針を教えて下さいますので、本を数冊ご紹介します。

医師(治療者)の本
薬物、アルコール依存症からの回復支援ワークブック
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4772411801?psc=1&redirect=true&ref_=oh_aui_detailpage_o00_s00

当事者家族、当事者の本
家族が幸せを取り戻すとっておきの方法
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4901030051?psc=1&redirect=true&ref_=oh_aui_detailpage_o00_s00

実録!あるこーる白書
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4198635862?psc=1&redirect=true&ref_=oh_aui_detailpage_o01_s00


以上、古森病院でした。

ホームページ http://komori-hp.cloud-line.com/


令和2年10月2日追記

だらしない夫じゃなくて 依存症でした。
https://www.amazon.co.jp/%E3%81%A0%E3%82%89%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%84%E5%A4%AB%E3%81%98%E3%82%83%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%A6%E4%BE%9D%E5%AD%98%E7%97%87%E3%81%A7%E3%81%97%E3%81%9F-%E4%B8%89%E6%A3%AE-%E3%81%BF%E3%81%95/dp/4788716836/ref=tmm_pap_swatch_0?_encoding=UTF8&qid=&sr=

時事通信社も大変お勧めです!!漫画でよくわかりやすいですよ!


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院内感染対策(療養病床編)

2015-07-10 08:49:52 | 日記
古森病院@福岡市博多区です。

今日は院内感染の話です。

当院は慢性期型の病院ですが、慢性期の病院には
病状の関係で、急性期病院で抗生物質をたくさん使用された患者様方が紹介されてくることがあります。

抗生物質をたくさん使用する ということは
耐性菌(抗生物質が効かない菌)が発生しやすい環境ということです。

よって入院の打診の際に「耐性菌を持った患者様ですが・・」という情報が
該当される方については 当院にもたらされます。

病院ですので、耐性菌を持った方が入院されるときは
院内に情報を周知し、他の患者様に感染させないように、手洗い消毒、手袋、
必要に応じて隔離、ガウンの使用を行っております。

しかし、慢性期の病院にとってこわいのは
多剤耐性菌よりもむしろ、インフルエンザやノロウイルス、結核や疥癬といった
どちらかといえば、地味な?感染症疾患です。

�インフルエンザは周知のとおり、高齢者の方がかかると呼吸不全などを引き起こし
死亡されることがあります。

�ノロウイルスもウイルス感染による脱水や嘔吐による誤嚥性肺炎により
高齢の方は死亡される方が多く、インフルエンザにも言えますが、感染力が強いので、職員を含め
あっという間に感染が広がります。

�結核については、今の世代の高齢者の方々(戦後を経験しておられる方)は
一度結核に暴露された方が多く、病院を含め、慢性期施設で長期療養中に
時々再発症される方がおられます。
慢性期施設には痰の多い方が結構居られるので、知らない間に発症した
結核菌が院内に散布されると 他の患者様、ご家族、医療従事者を含め多大な感染につながることになり
公衆衛生上 大問題となります。時々、高齢者施設や学校などで結核が集団発生し、しばしば
ニュースになっております。

消毒薬などの卸業者さんのホームページの医療コラムにまとまって載っていた情報
http://pro.saraya.com/fukushi/column/dr-yokoyama/backnumber/121.html

�疥癬は皮膚感染症ですが、ヒゼンダニというダニによって柔らかいところ(陰部や脇の下、指の間など)を
中心に皮下トンネルが形成され、卵を産み、知らない間に増殖します。命にはかかわりませんが、激烈なかゆみと
職員を介し、院内感染となることが多く また治療法が日本では有効な薬が発売されていないことから
感染が長期化し、対応に非常に苦慮いたします。

当院では私が管理者になってからは 幸い、初期でブロックできたケースが大半です。

�今年のインフルエンザは大流行したため、何人か病棟で感染されました。持ち込みルートは
正月面会のご家族由来あるいは年末年始患者様外出後の感染でした。
最初に何人か高熱を出されましたので、その時点で患者様のご家族に説明して該当病棟の入院患者様は
全例タミフル予防内服とし
職員も何人か罹患しましたが、出勤停止として、事なきを得ました。インフルワクチンは患者様はほぼ
全例接種済みでした。保健所には逐一 報告しておりました。

�ノロウイルスはノロウイルスシーズンの外来患者さんの受診後はトイレの次亜塩素酸消毒、
スタッフの入念な手洗いを行い、誰も感染しませんでした。
病棟での患者様の発症がお一人おられましたが、直ちに個室隔離とし、次亜塩素酸による部屋消毒を徹底し
事なきを得ました。病棟患者様のウイルス持ち込みルートは未だ不明です。

�結核については、患者様の喀痰検査の時に全例 必ず結核菌の検査を出すことにしており、
今のところ問題ありません。

�疥癬ですが、数年前に一度院外からの持ち込みがあり、院内感染となったことがあります。
その際は、日本で認められている薬を使用しましたが、効果が乏しく3か月くらい長期化しましたので
感染患者様の御家族様の同意を頂いて、海外で使用されている疥癬の薬を個人輸入して対応いたしました。
効果は目覚ましく、その後はピタッと収まりました。
現在、日本でも保険適用となるように審議されていますが、早く使えるようになってもらいたく
切望しております。

ペルメトリンクリームの厚生労働省への認可要望書(日本皮膚科学会)
http://www.mhlw.go.jp/topics/2012/03/dl/youbousyo-266.pdf#search='%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%83%A1%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%B3+%E7%96%A5%E7%99%AC'

実際の使用例の発表(高齢者施設)
http://www.kyujinkai-mc.or.jp/pdf/yakuzai/h13_iryouyakugaku.pdf#search='%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%83%A1%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%B3+%E7%96%A5%E7%99%AC'




以上、当院での院内感染対策の試みを披露いたしました。

古森病院ホームページ http://komori-hp.cloud-line.com/

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