古森病院@福岡市博多区 病院管理者のブログ

ベイサイドプレイス近隣にある長期滞在型病院です。投稿記事は管理者の独自見解であり、医療法人の見解ではありません。

終末期医療について 2

2013-02-21 12:50:31 | 日記
こんにちは、古森病院@福岡市博多区 です。

終末期医療の話の続きです。

昔は口から食べられなくなったら、それは寿命である。という
考えが主でしたが、経腸栄養製剤の発達や、胃瘻が内視鏡で比較的簡単に
作れるようになったことから、食べられなくなった時の選択肢が増えたので
昔と様相が変わってきました。

不妊治療もそうですが、選択肢がある分、開始するかどうか、
また一旦開始した後に 差し控えるかどうかの判断が難しいことがあるでしょう。

経管栄養はとかく何かと(終末期医療の会議では)非難されることが多いわけですが
現実に 経口摂取が出来なくなった方の御家族に、私が「強制的な栄養摂取に切り替えますか?
私はご家族のご意向に従います。」と申し上げると、末期の癌の患者様か
超高齢の患者様以外は、経管栄養を選択される御家族が殆どです。
医療者が有無を言わさず、経管栄養に踏み切っているので経管栄養が
減らないなどとマスコミなどで言われることがありますが、当院ではそのようなことはありません。

経管栄養と言えば、経鼻チューブより胃瘻チューブが患者様が楽で、また医療者側の管理も
しやすいことから、後者が長期留置の必要のある方には選ばれやすい傾向があります。

鼻からの経鼻栄養をされている患者さんの御家族に
胃瘻作成を勧めると「合併症はないのですか?」と言われることがあります。
医療手技全般に言えることですが、手技は行う方が、行わないよりも
当然ながら、何か起こる可能性が出てきます。
胃瘻に関しては、頻度は低いものの
作成時の合併症はあります。詳しくは胃瘻を作成される施設で説明して頂いています。
正確に言えば経鼻チューブ挿入でも、誤挿入や食道潰瘍、消化管出血などの合併症の
可能性があります。

また胃瘻に限りませんが、経管栄養剤は、患者様の腸のリズムと
無関係に流れますので、嘔吐が時に見られます。中には誤嚥性肺炎を来たして
発熱、時には呼吸不全に陥り 亡くなる方もおられます。

色々ご説明すると、周りの方に迷いが出て来て、余程昔からご自分の行く末を
周囲の方にお話ししていないと
なかなか自然に亡くなるということが難しい時代になってきていますが
かと言って、まったく病院にかからず
自然な老衰を選択したいと思ってもこれもまた、一筋縄ではいきません。
在宅で高齢の方が医療に繋がらないまま
亡くなった方の場合には、警察が必ず介入してきます。独居でない場合は
状況によっては、保護責任者遺棄致死などと言われる可能性が
ゼロではありません。


自然死のアリバイ作りの為に 医療処置を希望しない方であっても
医療機関に一度は受診するか、あるいは予め医療にはかからないと言う意思を文書にしておくか
いずれかの手段を取らざるを得ないのが現状のようです。

以上 古森病院でした。

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終末期医療について 1

2013-02-15 09:15:31 | 日記
今日も雨が降っています。 古森病院@福岡市博多区 です。

最近、国の財政が悪化してきており、国の財政負担となる社会保障費(高齢者医療介護費用が多くを占める)をどうするのかという問題もあるのかもしれませんが、終末期医療について近年 学会などが色々とガイドラインを出しています。

日本救急医学会
 救急医療における終末期医療のあり方に関する特別委員会.救急医療における終末期医療に関する提言(ガイドライン)について.日救急医会誌(JJAAM).2007; 18: 781-786

厚生労働省
 「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」について.
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/s0521-11.html

全日本病院協会
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/12/dl/s1224-14f.pdf#search='%E7%B5%82%E6%9C%AB%E6%9C%9F%E5%8C%BB%E7%99%82+%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3'

日本医師会
 http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20070822_1.pdf#search='%E7%B5%82%E6%9C%AB%E6%9C%9F%E5%8C%BB%E7%99%82+%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3'

日本老年医学会
 http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/proposal/pdf/jgs_ahn_gl_2012.pdf

日本小児科学会
 http://www.jpeds.or.jp/saisin/saisin_120808.pdf#search='%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%B0%8F%E5%85%90%E7%A7%91%E5%AD%A6%E4%BC%9A+%E7%B5%82%E6%9C%AB%E6%9C%9F%E5%8C%BB%E7%99%82'

 悪性疾患ではないが、病状回復が見込めない超高齢の方の生命維持(経管栄養導入、透析などが現場では最たるものかもしれませんが)を開始するか否か、あるいは開始したらいつまで行うのか ということについては非常に難しい問題だと思っています。さあ、どうする?という時に ご本人の意志が確認できる状態が最良であることは言うまでもありませんが、そうできる方は非常に少ないのが現状です。たとえお元気な時にこうしておいてと意志を表明していても、土壇場で気が変わることもあります。生命維持に関わる決断を迫られる時に ご本人は意思表明できる状態ではなく、ご家族やご親族の方が難しい判断を迫られる場面は決して珍しくありません。療養病床に勤務しておりますと、さあ、どうする?の場面で「主治医の判断に
任せます」とご家族に言われることもまた決して珍しくありません。管理人はいつも「寿命に関わることなので、私どもでは判断できません。ご家族の意向に沿ってこちらは動きます。」と申し上げています。終末期の現場から見ると、医療者側が色々ガイドラインを出しても、その通りにはなかなか動かないだろうというのが実感するところです。

まだこの話は続きます。

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緩和ケア

2013-02-14 14:35:00 | 日記
少し暖かい日が続いています。

古森病院@福岡市博多区 です。

さて管理人は先日、厚労省が後援する緩和ケア研修会という研修会に行ってまいりました。
ここ数年の趨勢で、癌患者様に関わるすべての医師がこの研修会を受けることが
望ましいということになっています。

古森病院は抗癌剤治療はしておりませんし、緩和ケア病棟はないのですが、
入院ベットの施設基準が療養病床といって長期的に入院することが可能な病院ですので、
末期癌の患者様が時々こられ 入院されることがあります。

療養病床であっても癌患者様が入院され、麻薬処方や抗癌剤投与の際は薬剤の保険点数が
付くことになっておりますので、研修会を受講してまいりました。


管理人は昔 子を持つ前に抗癌剤や麻薬投与の経験はあり、受け持ち入院患者様の
9割以上が癌患者さんという時期もありましたが、研修会を受けてみて
最近の癌告知がステージや余命を含め、ご本人にとことん行われるのを見て驚きました。
管理人の住む地域だけかもしれませんし、認知症の人などはまた違うのでしょうけど。


主治医から言われるとショックだろうな・・と古い時代の
医者としては思います。
病状をきちんとご本人にご説明しないことで 信頼関係に亀裂が入ることもあり
(管理人も苦い経験が多々あります)、難しいところです。


ちなみに一般の方にわかりにくい当院療養病床での療養と
緩和ケア病棟での療養は何が違うのか?を申し上げます。
大きく以下の2つに分けられます。

1 入院費用。
2 当院では在宅の移行が必須でない(希望者は在宅移行)

(ちなみに当院では 放射線照射が必要な場合 あるいはその他何か処置を希望される場合は
当院のベットをあけて待ちベットを作ったうえで 転院していただいています。)

もちろん看護体制や施設環境などの違いもあり 緩和ケア病棟のほうが一般的に
よいと思われますが、それはイコール 1の違いとなります。

以上古森病院でした。

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インフルエンザ その3

2013-02-08 09:09:26 | 日記
古森病院@福岡市博多区 です。

今日の福岡市内は雪が降っています。
この前まで3月?という陽気だったのに・・

昨日に引き続き、インフルエンザのお話です。

いつまで仕事を休まないといけないんですか?とよく聞かれます。
仕事を休まないといけないのは、本人自身の体調のこともありますが
それ以上に密室空間で社会にウイルスをばらまくのを自主規制していただく
公衆衛生上の目的も大きいです。

幼稚園小中高学生は学校保健安全法という法律があり、その中に出席停止日数の目安が
書かれてあります。保育園 通園施設 大学もこれに準じます。
http://www.gakkohoken.jp/modules/special/index.php?content_id=121

しかし社会人は学生と違い、いろいろ事情がありますので
お仕事の事情をお伺いして できれば発症日(発熱した日)を含め
3日休めたら御の字、運良く週末にかかれば(週末が休みの方は)5日に
なります。難しい方は各々の事情に応じて。となるでしょう。

タミフルを飲めば A型の方は大抵次の日には解熱されます。
ウイルスはまだ体内で生きていますので、解熱しても一週間くらいは油断せずに
お大事になさってください。

以上 古森病院でした。




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インフルエンザ 治療薬のこと

2013-02-07 14:01:20 | 日記
古森病院@福岡市博多区 です。


昨日に引き続き、インフルエンザの話です。
インフルエンザには治療薬が現在4種類あります。以下 商品名です。

タミフル(中外製薬)  内服薬
薬価(薬代のみ 以下同じ)成人用法用量で 3091円 自己負担額は保険証通り(最大3割)
http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/GUI/450045_6250021M1027_1_24G.pdf

リレンザ(グラクソ スミスクライン) 吸入薬
成人(小児も一緒)用法用量で 3374円 自己負担額は保険証通りhttp://glaxosmithkline.co.jp/healthcare/medicine/relenza/

イナビル(第一三共製薬)吸入薬
成人用法用量で 4161円 自己負担額は 以下略
http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/GUI/430574_6250703G1022_1_06G.pdf

ラピアクタ(塩野義製薬)点滴
成人用法用量で 5634円 自己負担額は 以下略
http://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00060652

以前 アマンタジンというパーキンソン病に使われる薬を使用していた
ことがありました。(新型インフルエンザの時もタミフルが足りない時に
治療候補訳として考慮されていました)ただアマンタジンはA型インフルエンザにしか
効果がないことや、アマンタジンに耐性のウイルス(薬が効かないウイルスのこと)が
かなり出たこともあり、今ではほとんど使われないことが多いです。

どの薬を選んでも効果はあまり変わらないということですが、
筆者は個人的にはタミフルを処方しています。
内服なので確実に薬が体内に入る事、薬価が安いこともありますが
生き物相手の薬は(抗生物質もそうですが)いろいろな種類を使うと ウイルスや細菌は耐性といって薬がきかない方に変異していきます。子孫を残さないといけないのは生き物の
宿命なので当たり前なのですが、生き物にはそういう性質があるので、本当に必要なとき、
例えばタミフルが耐性がついて効果がなくなったインフルエンザの発生の際などに イナビルやラピアクタを使えばよいと思っているからです。
もっとも当院はラピアクタ以外の薬はありますので、イナビル希望される方には処方しています。あと、10代はタミフルを出しづらい環境なので(厚労省方針)
そういう時はリレンザやイナビルを処方することになりますが、患者さん側の
諸般の事情でご説明の上、タミフルを処方することもあります。

また解熱剤だけで 自力で治すという方も ご希望に沿っています。
基礎疾患のない、お元気な方の場合ですが。。。

海外では寝て治す病気です。飲んだ場合に比べ 1日治るのが遅れます。
(日本もかつてタミフルが発売されるまではそういう方針でした)

以上、古森病院でした。

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