古森病院@福岡市博多区 病院管理者のブログ

ベイサイドプレイス近隣にある長期滞在型病院です。投稿記事は管理者の独自見解であり、医療法人の見解ではありません。

胃瘻 再び

2013-12-24 22:21:31 | 日記
こんにちは。 ロマンティックなクリスマスをお過ごしでしょうか?
クリスマスもお正月も平日も大差なくなって久しい管理人@古森病院です。

本日は先般12月11日付で報道された中医協(中央社会保険医療協議会総会審議会 厚労省の諮問会議)の
胃瘻に関する審議内容についてのお話しです。

私たち保険医療機関は、診療報酬点数表という厚労省が作った
点数表(値段表)に基づき、行った診療行為に対する
お金を頂きつつ病院運営を行っています。
点数は中医協という厚労省の諮問会議で決められ、厚労省が推進したい政策には高点数が付き(今なら
在宅医療でしょうか)そうでもない政策には(例えば当院のようなロングステイ入院医療機関を維持すること)
点数を低めにつけて、全体の医療政策の方向性をつけ、あらかた普及したところで手厚くしていた点数を
下げるというのが最近のパターンとなっています。

さて、胃瘻作成時に新しく点数を作るという話を今回厚労省が発表しました。
資料はこちらの31ページから43ページです。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000031923.pdf

嚥下機能検査(造影剤や内視鏡による飲み込み検査)を行っていない胃瘻作成の点数を減らす、
嚥下訓練を行って、胃瘻を物理的に(手術で)閉鎖することに成功した施設には点数を増やすという
方向です。

要するに、国としては今後胃瘻は呑み込みの悪い方に作成すること、呑み込みの悪い方は胃瘻作成後 
嚥下訓練を行って経口摂取できたら胃瘻を物理的に閉鎖すること。ということが政策の趣旨のようです。
(そして在宅へということでしょうか)

胃瘻栄養を減らし、経口摂取の可能性がある方を救い上げるということは理解できますが
どうもやっていることがお門違いに思えてなりません。
胃瘻は、飲み込みが悪い人だけに作るわけではありません。
飲み込みは何とか出来るけど食欲が加齢により(老衰により)極端に低下した方に作ることも
ままあります。当院ではご家族にどうします?とお伺いしたら、結果的に生きていてほしいから
お願いしますと言われるケースが大半です。
また意識状態の悪い人に嚥下テストを行うこと自体が窒息の可能性、肺炎を引き起こす可能性が
高くきわめて危険です。胃瘻を作った後に事態が好転して、再び飲み込めるようになったり、
食欲が回復する方も稀におられますが、そんな時はせっかく作った胃瘻は残しておき、
口からご飯を食べていただいていつの日か再び食べれなくなった時に(ご希望があれば)
備えるのが一般的です。厚労省は嚥下リハビリさえ行えば一生 
口からご飯が食べられるとでも思っているのでしょうか?

このような政策誘導を行うと、嚥下テストを行わないで作った胃瘻の値段がどれくらい下がるのかにも
よるでしょうが、胃瘻栄養は減っても、経鼻チューブによる栄養(鼻からチューブを通す)が
増えるだけと思われます。そうすると患者さんが不愉快なのでチューブを引き抜こうとすることが増え、
胃瘻チューブの時より不要な抑制(手などをベット柵などに固定、縛ること)が増える傾向となると思われます。
結果、患者さんが苦しむことになるケースも現在より増えるでしょう。
また胃瘻を手術で閉じて、食べれなくなった時にまた医療費をかけ、
患者さんの危険を犯して再び胃瘻を作るくらいなら、胃瘻を物理的に塞ぐことでなく、
食事提供を始めたということに点数をつければいいのにと思ってしまいます。

厚労省はメタボリック対策の政策発表時も、
メタボリックの定義もおかしければ、効果も乏しいだろうと現場で言われていたのに強行し
(成人の生活習慣を変えるのは 容易なことではないということがわかっておられないのであろうと思いますが)、
その結果、医療費削減の効果(脳卒中や心疾患の減少効果)はなかったという論文が以前からちらほら出ています。
この政策もさしたる医療費減少の効果がないことが行われる前からミエミエで、効果がないのは
まだしも、巻き添えを食う患者さんはたまったものではありません 。
政策をぶち上げるのはかっこいいのかもしれませんが、患者さんの終末期の負担軽減も
考えていただきたいものです。


以上 古森病院でした。
病院ホームページ  http://komori-hp.cloudl-line.com




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジェネリック医薬品について

2013-12-18 12:44:22 | 日記

寒い日が続きます。古森病院@博多区対馬小路です。


今日はジェネリック医薬品(いわゆる後発品)についてのお話です。

ジェネリック医薬品とは(よくまとまっています)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%8C%E7%99%BA%E5%8C%BB%E8%96%AC%E5%93%81

医薬品はメーカーが長い期間と少なくない投資を行って、薬の成分が何の病気に効果があるのか
研究した結果、製品化を行い、その後 動物実験を経て、
治験(同意をとって人間に投与すること)を行った後に ようやく発売されることになります。
これをジェネリック医薬品(後発品)に対して 先発品(先に発売された薬)
(ブランド品というところもあります)と業界では言います。
治験は少人数で行われるために、発売後に予期せぬ副作用が起こって、
販売に漕ぎつけても、発売中止に追い込まれることも皆無ではありません。
医薬品メーカーは自社で発見した薬品で特許を取り、販売代金で研究費を回収し、次期の
医薬品開発に備えることになります。

医薬品の特許は一般的に20年で切れ(5年延長可能)、その後主要成分を他社でそのまま模倣することが可能になるので
後発品メーカーあるいは、先発品メーカーが後発品部門を作り、同様の作用をもつ医薬品を発売します。
これがジェネリック医薬品(後発品)です。
研究投資をしておらず、また発売までの要件が先発品に比べて緩いので、
先発品に比して安価に発売することができます。

当院でもジェネリック医薬品を積極的に使用していますが、中にはジェネリック医薬品に変えたら
効果が乏しくなったといわれる方が時に居られます。(頭痛の薬や抗不安薬など)

ジェネリック医薬品は薬の成分は同じなのですが、添加物が異なることがあり、
完全に同等の作用があるかと言われると、その通りですと断言できない面があります。
先発品の2-7掛けくらいの値段なのだから、効果もそれくらいでしょうという
考え方もあるいはあるかもしれません。
また以前内科学会雑誌に、後発品にしたら皮膚アレルギーが出た方がおられ、
先発品に戻したら消失した。後発品に含まれた添加物によるものが原因であったという症例報告がありました。
(これはたまたま後発品の添加物が合わなかっただけで、先発品の添加物が合わず、
後発品に変えたら良くなったという人も存在するものと思われます。)
反面、ジェネリック医薬品は値段以外に良くなった面もあり、
飲みやすい剤型(形)になったり、味付けが豊富になったり(小児の薬はいいでしょうね)
規格(一剤に含まれる薬の量)のバリエーションが増えたりといったこともあります。
また医療インフラの整っていない発展途上国では
ジェネリック医薬品が命綱となっている国も少なくありません。

先般 週刊誌に近畿大学薬学部の論文が紹介されて、少し話題になっているようですので、ご紹介します。

大鳥 徹、長井 紀章,橋本 佳幸、金 裕生、ウィリアム フィゴーニ、松野 純男、松山 賢治、
調剤薬局アンケートから見えてくる後発医薬品の使用状況.薬局薬学、5(2) 107-115 (2013)

調剤薬局アンケートによるとジェネリックを処方された割合が最も多かったのは、共済組合を除いた被用者保険に加入している人で、
次いで国民健康保険の加入者、次に高齢者医療制度の適用者で、
最も低かったのが公務員たちが加入している共済組合だったというのが趣旨の論文のようです。

厚労省でも同様の結果が出ているとのことでした。

平成23年10月の保険局調査課による後発医薬品使用状況調査
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/dl/cyouzai_doukou_topics_h23_10.pdf

なぜ、共済組合での処方が少ないのかは不明ですが、
厚労省の調査を見ると、医師、患者さん、薬剤師ともに後発品の品質に疑問を感じている方は
まだまだ多いのだなというのが実感するところです。
私自身の感想を言えば、当院処方分で後発品では効果不十分として、
ブランド品に変えている人は居られますが、そう多くはないというのが実感です。
もっとも、抗癌剤とか免疫抑制剤など重要な薬を処方していないので、いち町医者としての
感想であります。
また外用薬などは結構 効果に差があるという話もあり(成分が一緒でも添加剤が異なるため、
吸収効率の問題で)科によって(湿布処方の多い整形とか外用薬の多い皮膚科とか)
見解が分かれるところかもしれません。

以上、古森病院でした。

古森病院ホームページ   http://komori-hp.cloudl-line.com







  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

黄熱病のワクチンについて 広報

2013-12-14 14:56:42 | 日記
今日は大変寒いです。
古森病院@福岡市博多区です。

厚労省から黄熱病ワクチン接種のお知らせが出ています。
管理人は興味ゼロですが、来年6月に始まるワールドカップサッカー観戦のため、ブラジルに
渡航する方へのご連絡です。

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kaigai-kansenshou/dl/131202-leaflet.pdf

http://www.forth.go.jp/news/2013/12101510.html


黄熱病とはhttp://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k02_g1/k02_23/k02_23.html


野口英世は黄熱病にかかって亡くなったと 昔聞きましたが、デマだったと近年判明しています。

黄熱病ワクチンは生ワクチンで一回ですみ、費用は一万円前後、福岡市では
福岡空港検疫所か福岡検疫所で行っているそうです。

黄熱病ワクチン 添付文書 http://database.japic.or.jp/pdf/newPINS/00054328.pdf

福岡検疫所 https://www.forth.go.jp/keneki/fukuoka/
福岡空港検疫所支所 http://www.forth.go.jp/keneki/fukuoka/access-kuko.html

しっかりした旅行会社なら、ツアー出発前にワクチン接種について
フォローされることと思いますが、旅行会社によってはそこまで行き届かない可能性、旅行会社に頼らず
飛行機や宿泊先をご自分で手配される方の中には接種そのものの知識のない方もおられるでしょう。
開催直前の渡航申し込みの場合、接種が間に合わない可能性もあります。
発症した場合、治療法はなく、致死率は20%という恐ろしい病気です。

現地に赴かれる方は、早めに接種された方が宜しいです。
因みに日本では、黄熱病は感染症法上、第4類、届け出感染症です。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-04-05.html
蚊による媒介感染症なので、ヒトーヒト感染ではありません。

以上 古森病院でした。

古森病院ホームページ http://komori-hp.cloudl-line.com


追記 感染症診療の原則(感染症では有名なブログです)のブログには先週にもう黄熱病の記事がアップされていました。
そこに記載されていたリンクの一つが面白かったので、張っておきます。
http://yellowfeverbrazil.com/     

Football fever is one thing. Yellow fever is another.というコピーが面白いと思った管理人でした。







  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フルミスト

2013-12-06 10:14:11 | 日記
こんにちは。古森病院@福岡市博多区 です。

今日はインフルエンザ経鼻ワクチンのお話です。

このブログでも最初の記事で 経鼻ワクチンのお話を記載しました。


今日は具体的な話をいたします。
商品名はフルミスト 日本ではまだ承認されていません。

http://www.youtube.com/watch?v=tw_qbYqx2jY (使用法)
https://www.flumistquadrivalent.com/consumer/index.html (会社)
http://www.medimmune.com/docs/default-source/default-document-library/product-and-patient-information-for-flumist-quadrivalent.pdf?sfvrsn=0 (添付文書)

6か月児の成績が書いてありますが、推奨年齢は2-48歳。
乳幼児の不活化ワクチン(従来型の日本のワクチン)の成績は良くないので(3割未満)、8割近くの阻止率は
驚異的な数字だと思います。

生ワクチンで、インフルエンザ接種歴や罹患歴、年齢によりますが、
初回なら2回受ける人がいます。

2013年度版は4価ワクチンであり、A型とB型が二種類ずつ入っています。従来型は3価です。

問題は認可されていないために 何かあった時の損害賠償が日本のシステムから外れるために基本的に
支払われないこと(自己責任)、呼吸器疾患がある人やアスピリン製剤を飲んでいる人は禁忌であることです。

九州では導入しているところは少ないようで、来年当院も導入を考えてみたいと思います。
無認可でもこだわらない方はいかがでしょうか。

古森病院ホームページ http://komori-hp.cloudl-line.com







  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする