こんにちは。 ロマンティックなクリスマスをお過ごしでしょうか?
クリスマスもお正月も平日も大差なくなって久しい管理人@古森病院です。
本日は先般12月11日付で報道された中医協(中央社会保険医療協議会総会審議会 厚労省の諮問会議)の
胃瘻に関する審議内容についてのお話しです。
私たち保険医療機関は、診療報酬点数表という厚労省が作った
点数表(値段表)に基づき、行った診療行為に対する
お金を頂きつつ病院運営を行っています。
点数は中医協という厚労省の諮問会議で決められ、厚労省が推進したい政策には高点数が付き(今なら
在宅医療でしょうか)そうでもない政策には(例えば当院のようなロングステイ入院医療機関を維持すること)
点数を低めにつけて、全体の医療政策の方向性をつけ、あらかた普及したところで手厚くしていた点数を
下げるというのが最近のパターンとなっています。
さて、胃瘻作成時に新しく点数を作るという話を今回厚労省が発表しました。
資料はこちらの31ページから43ページです。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000031923.pdf
嚥下機能検査(造影剤や内視鏡による飲み込み検査)を行っていない胃瘻作成の点数を減らす、
嚥下訓練を行って、胃瘻を物理的に(手術で)閉鎖することに成功した施設には点数を増やすという
方向です。
要するに、国としては今後胃瘻は呑み込みの悪い方に作成すること、呑み込みの悪い方は胃瘻作成後
嚥下訓練を行って経口摂取できたら胃瘻を物理的に閉鎖すること。ということが政策の趣旨のようです。
(そして在宅へということでしょうか)
胃瘻栄養を減らし、経口摂取の可能性がある方を救い上げるということは理解できますが
どうもやっていることがお門違いに思えてなりません。
胃瘻は、飲み込みが悪い人だけに作るわけではありません。
飲み込みは何とか出来るけど食欲が加齢により(老衰により)極端に低下した方に作ることも
ままあります。当院ではご家族にどうします?とお伺いしたら、結果的に生きていてほしいから
お願いしますと言われるケースが大半です。
また意識状態の悪い人に嚥下テストを行うこと自体が窒息の可能性、肺炎を引き起こす可能性が
高くきわめて危険です。胃瘻を作った後に事態が好転して、再び飲み込めるようになったり、
食欲が回復する方も稀におられますが、そんな時はせっかく作った胃瘻は残しておき、
口からご飯を食べていただいていつの日か再び食べれなくなった時に(ご希望があれば)
備えるのが一般的です。厚労省は嚥下リハビリさえ行えば一生
口からご飯が食べられるとでも思っているのでしょうか?
このような政策誘導を行うと、嚥下テストを行わないで作った胃瘻の値段がどれくらい下がるのかにも
よるでしょうが、胃瘻栄養は減っても、経鼻チューブによる栄養(鼻からチューブを通す)が
増えるだけと思われます。そうすると患者さんが不愉快なのでチューブを引き抜こうとすることが増え、
胃瘻チューブの時より不要な抑制(手などをベット柵などに固定、縛ること)が増える傾向となると思われます。
結果、患者さんが苦しむことになるケースも現在より増えるでしょう。
また胃瘻を手術で閉じて、食べれなくなった時にまた医療費をかけ、
患者さんの危険を犯して再び胃瘻を作るくらいなら、胃瘻を物理的に塞ぐことでなく、
食事提供を始めたということに点数をつければいいのにと思ってしまいます。
厚労省はメタボリック対策の政策発表時も、
メタボリックの定義もおかしければ、効果も乏しいだろうと現場で言われていたのに強行し
(成人の生活習慣を変えるのは 容易なことではないということがわかっておられないのであろうと思いますが)、
その結果、医療費削減の効果(脳卒中や心疾患の減少効果)はなかったという論文が以前からちらほら出ています。
この政策もさしたる医療費減少の効果がないことが行われる前からミエミエで、効果がないのは
まだしも、巻き添えを食う患者さんはたまったものではありません 。
政策をぶち上げるのはかっこいいのかもしれませんが、患者さんの終末期の負担軽減も
考えていただきたいものです。
以上 古森病院でした。
病院ホームページ http://komori-hp.cloudl-line.com
クリスマスもお正月も平日も大差なくなって久しい管理人@古森病院です。
本日は先般12月11日付で報道された中医協(中央社会保険医療協議会総会審議会 厚労省の諮問会議)の
胃瘻に関する審議内容についてのお話しです。
私たち保険医療機関は、診療報酬点数表という厚労省が作った
点数表(値段表)に基づき、行った診療行為に対する
お金を頂きつつ病院運営を行っています。
点数は中医協という厚労省の諮問会議で決められ、厚労省が推進したい政策には高点数が付き(今なら
在宅医療でしょうか)そうでもない政策には(例えば当院のようなロングステイ入院医療機関を維持すること)
点数を低めにつけて、全体の医療政策の方向性をつけ、あらかた普及したところで手厚くしていた点数を
下げるというのが最近のパターンとなっています。
さて、胃瘻作成時に新しく点数を作るという話を今回厚労省が発表しました。
資料はこちらの31ページから43ページです。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000031923.pdf
嚥下機能検査(造影剤や内視鏡による飲み込み検査)を行っていない胃瘻作成の点数を減らす、
嚥下訓練を行って、胃瘻を物理的に(手術で)閉鎖することに成功した施設には点数を増やすという
方向です。
要するに、国としては今後胃瘻は呑み込みの悪い方に作成すること、呑み込みの悪い方は胃瘻作成後
嚥下訓練を行って経口摂取できたら胃瘻を物理的に閉鎖すること。ということが政策の趣旨のようです。
(そして在宅へということでしょうか)
胃瘻栄養を減らし、経口摂取の可能性がある方を救い上げるということは理解できますが
どうもやっていることがお門違いに思えてなりません。
胃瘻は、飲み込みが悪い人だけに作るわけではありません。
飲み込みは何とか出来るけど食欲が加齢により(老衰により)極端に低下した方に作ることも
ままあります。当院ではご家族にどうします?とお伺いしたら、結果的に生きていてほしいから
お願いしますと言われるケースが大半です。
また意識状態の悪い人に嚥下テストを行うこと自体が窒息の可能性、肺炎を引き起こす可能性が
高くきわめて危険です。胃瘻を作った後に事態が好転して、再び飲み込めるようになったり、
食欲が回復する方も稀におられますが、そんな時はせっかく作った胃瘻は残しておき、
口からご飯を食べていただいていつの日か再び食べれなくなった時に(ご希望があれば)
備えるのが一般的です。厚労省は嚥下リハビリさえ行えば一生
口からご飯が食べられるとでも思っているのでしょうか?
このような政策誘導を行うと、嚥下テストを行わないで作った胃瘻の値段がどれくらい下がるのかにも
よるでしょうが、胃瘻栄養は減っても、経鼻チューブによる栄養(鼻からチューブを通す)が
増えるだけと思われます。そうすると患者さんが不愉快なのでチューブを引き抜こうとすることが増え、
胃瘻チューブの時より不要な抑制(手などをベット柵などに固定、縛ること)が増える傾向となると思われます。
結果、患者さんが苦しむことになるケースも現在より増えるでしょう。
また胃瘻を手術で閉じて、食べれなくなった時にまた医療費をかけ、
患者さんの危険を犯して再び胃瘻を作るくらいなら、胃瘻を物理的に塞ぐことでなく、
食事提供を始めたということに点数をつければいいのにと思ってしまいます。
厚労省はメタボリック対策の政策発表時も、
メタボリックの定義もおかしければ、効果も乏しいだろうと現場で言われていたのに強行し
(成人の生活習慣を変えるのは 容易なことではないということがわかっておられないのであろうと思いますが)、
その結果、医療費削減の効果(脳卒中や心疾患の減少効果)はなかったという論文が以前からちらほら出ています。
この政策もさしたる医療費減少の効果がないことが行われる前からミエミエで、効果がないのは
まだしも、巻き添えを食う患者さんはたまったものではありません 。
政策をぶち上げるのはかっこいいのかもしれませんが、患者さんの終末期の負担軽減も
考えていただきたいものです。
以上 古森病院でした。
病院ホームページ http://komori-hp.cloudl-line.com