古森病院@福岡市博多区 病院管理者のブログ

ベイサイドプレイス近隣にある長期滞在型病院です。投稿記事は管理者の独自見解であり、医療法人の見解ではありません。

ヒトパピローマウイルスワクチンについて

2013-04-17 15:43:15 | 日記
こんにちは。古森病院@博多区対馬小路です。

感染症の流れでブログを書いていますので、
今日は俗にいう「子宮頸がんワクチン」についてお話します。

子宮頸がんのワクチンと言うと、癌ワクチンのように
思われる方がおられるのではと思います。

癌ワクチンは、ワクチンを打つことで自分の免疫力で癌細胞そのものを攻撃するようにする
治療ワクチンと言われるもので、既に癌に罹患しておられる方に使います。
www1.nhk.or.jp/asaichi/2012/02/06/01.html

子宮頸がんワクチンはインフルエンザなどと同じく予防ワクチンであり、子宮頸がんに
罹患した人に高率にパピローマウイルスが存在していることから、パピローマウイルスに
対する抗体をワクチンでつけることが出来れば、子宮頸がんに罹患しないのではないかと
いう発想から生まれたものです。

ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/


子宮頸がんは妊娠可能な女性の子宮を切除しないといけなくなる羽目に陥るケースが時にあるということが
国にとって最大の問題であり、ワクチンを定期接種化した背景には少子化という背景もあるものと思われます。

若年層の場合、自分が子宮癌になっているなどとはまったく思いませんし、不正出血があっても月経不順と思いますし、
婦人科受診の敷居が高いこともあって、発見が遅れがちです。

性交渉デビューの前にワクチンを打って、なんとか発癌を防ぎたいということですが、
ワクチンだけでは完全阻止は難しく、結局検診と併用となります。

今発売されているのはサーバリックス(2価 ウイルスが2種類)とガーダシル(4価 4種類)です。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%88%E3%83%91%E3%83%94%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3

今度の定期予防接種の見直しで ヒトパピローマウイルスワクチンも公費負担で打てるようになりました。
以下厚労省ホームページより引用

予防接種法に基づいて、A類疾病(ジフテリア、百日せき、急性灰白髄炎(ポリオ)、麻しん・風しん、日本脳炎、破傷風、結核、Hib感染症、小児の肺炎球菌感染症、ヒトパピローマウイルス感染症(子宮頸がん))、B類疾病(インフルエンザ)のワクチンの定期接種を行っています。
これらの予防接種は、各市町村が実施主体となっています。
(※お住まいの市町村での実施方法など、詳細については、市町村の予防接種担当課にお問い合わせください。)

なお、平成25年4月より予防接種法の一部が改正され、

Hib感染症、小児の肺炎球菌感染症、ヒトパピローマウイルス感染症の定期接種への追加
予防接種施策の適正な実施のための副反応報告の法定化(医療機関からの報告の義務化)
などが行われましたので、お知らせ致します。                                   

引用終わり

最近ヒトパピローマウイルスの予防接種で失神者が続出したため、パピローマウイルス予防接種の
妥当性について、いろいろ言われています。
www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002x5rx-att/2r9852000002x65r.pdf


ちなみに私はもう40代なのですが、性交渉済みの方から、
「自分は打っても効果がないのか」とよく聞かれます。
打ってもよいと思いますが、婦人科検診には行ってください。と申し上げております。


蛇足ですが、子宮頸がんはいまだに「不特定多数の性交渉歴を持った人がかかる病気」と婦人科医にすら言われることがありますが
感染するかどうかは性交渉をもった相手が病原体を持っているか否かにかかっていますので、性交渉を持った人数は関係ありません。
これは性交渉関連感染症すべてにいえることでもあります。

参考までに

カレシの元カノの元カレを知っていますか?(公共広告機構 AC AIDS)
www.youtube.com/watch?v=o1sjR1TtmA8



追記
現在 ヒトパピローマウイルスワクチンは、副作用報告が多すぎるとのことで
積極的接種勧奨の対象から外されています。過去、日本脳炎ワクチンで同様の措置が取られました。
(平成25年10月10日)
http://www.city.hachioji.tokyo.jp/hoken_iryo/1077/039350.html











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風疹について

2013-04-12 08:53:52 | 日記
おはようございます。

古森病院@博多区対馬小路です。

現在関東地方を中心に風疹が流行しており、ワクチン未接種世代を直撃しているとのことです。
厚労省
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/

風疹および風疹ワクチンの歴史は 横浜衛生研究所のほうに詳しく書かれています。
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/rubella1.html

管理人は中学生の頃、風疹ワクチンを打ったかどうか記憶にありません。

医学部に入ったとき、何かの授業で「医学生たるもの、妊娠可能な時期に入っているのだから
風疹の予防接種を打つのが当然である」ということを言われ、その夏に自分の意志で
予防接種を受けに行きました。

風疹ワクチンは1977-1994年度において女性は接種していた人がいたものの、男子は対象外であったため、当時その年代であった
現在30~40代の男性を中心とした流行とのことです。

乳幼児においては麻疹風疹ワクチンがすでに定期接種化されており、乳幼児期に2回接種となっています。
成人の場合は、まずは抗体価を調べて、十分ある人は打たなくてよいでしょうし、ない方は接種を検討していただくと
いうことになるのが王道ですが、最近は仮に風疹の抗体価があっても予防接種を打ってよいという医師もおられ
受診したら即、接種という医療機関も存在するようです。
(私は、個々の事情に応じて抗体は測っても測らなくてもと思いますが、仮に抗体が十分あるなら 打たなくてよいものは
打たないほうがいいのでは?とも思います・・・)

麻疹風疹ワクチンが主流ですが、(乳幼児の定期接種化に伴い)風疹単体ワクチンがありますので
そちらを接種することになります。

当院でもご希望がありましたら承っておりますので、お気軽にご連絡ください。


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鳥インフルエンザについて 3

2013-04-11 08:38:37 | 日記
おはようございます。古森病院@博多区対馬小路 です。


今日は昨日に引き続き、鳥インフルエンザの話題です。

鳥インフルエンザ(豚でもなんでもいいのですが)が 種を超えて人間へ感染するようになり、
人から人へ感染する能力を獲得したら、新型インフルエンザと呼ばれるようになるということは
前回 ご説明しました。

その後 新型インフルエンザはどうなるのか?

新型インフルエンザは大流行の後に、季節性インフルエンザと呼ばれる
いわゆる冬季に(時々夏にも流行っていますが)流行するインフルエンザに格下げ?になるというか
行政の扱いが下がっていきます。

いわゆる「普通の?」インフルエンザは、昔大流行した新型インフルエンザの子孫というか
少し変化したもので、年齢を重ねるほど冬を経験する機会が多いため、感染の機会が多くなることもあり
インフルエンザの抗体を持つ人が増えてきます。

実際、先般流行した2009年の豚フルからの新型インフルエンザウイルスについて、80歳以上の高齢者はほかの年齢層に比して
すでに抗体を持っていた人が多いことがわかっています。http://idsc.nih.go.jp/yosoku/Flu/2009Flu/Flu09_3.html#3
つまり老年層は「新型」とされる今回のウイルスと似たようなウイルスに過去に感染したことがあったということです。

老年層は抗体を持っている率は高いのですが、免疫能や体力は低下していることもあり
一般的には肺炎を引き起こすと命取りになることがあるため、用心をするにこしたことはありません。
http://idsc.nih.go.jp/idwr/douko/2010d/10douko.html
感染研のデータでは新型インフルエンザによる高齢者の死亡は、ほかの年齢層に比して少ないわけではなかったようです。


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鳥インフルエンザについて 2

2013-04-10 08:41:02 | 日記

古森病院@博多区対馬小路です。

福岡市は今日は肌寒いです。
冬物を仕舞ったり出したりする日が続いています。

今日の話題は昨日に引き続き、鳥インフルエンザの話題です。

新型インフルエンザと鳥インフルエンザって何が違うの?という疑問があることと思います。

昨日触れましたように、同じ種の動物の間で流行っているA型インフルエンザウイルスの間は
その流行している動物の種類から、豚インフルとか鳥インフルなどの呼称がつけられます。

しかし、その後人間に感染し、ウイルスが人間の体内で効率よく増殖できるよう変身して
人間から人間に容易に感染するようになった時に「新型」インフルエンザと報道されるようになります。
よく報道で「ヒトーヒト感染はない」などと報道されているのはこのためです。
「ヒトーヒト感染獲得」となると、大流行を起こすことが予想されるからです。

2009年の豚由来のインフルエンザは、人ー人感染を獲得し、国内で大流行となりましたので
(大騒ぎにもなりました)「新型」インフルエンザと名付けられました。

ちなみに2009年まで自治体が「新型」インフルエンザに備え、タミフルやリレンザを備蓄していたのは
H5N1というタイプの強毒性の鳥インフルエンザウイルスが 人ー人感染型に変異することを想定していました。
これは「感染列島」という映画にもなりました。
http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id331288/

しかし、2009年に実際に大流行したのは 毒性の弱い豚インフルエンザウイルスの変異によるものでした。
当初、強毒性の鳥インフルエンザ由来の新型インフルエンザと思われていたため、空港や港での検疫が厳しく行われ、国内第一号の患者さんが出た
神戸、大阪では保育園休園、学校閉鎖や集会の禁止などが実際に施行されました。
保育園や学校が閉鎖されたために、子供たちが家に待機状態となり、そのために出勤できなくなる大人が続出。
結果的には壮大な社会実験となった感がありました。(仕方のないことですが)

2009 H1N1パンデミック総括
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/pdf/kouen-kensyuukai_03.pdf#search='2009+H1N1%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E7%B7%8F%E6%8B%AC'

今のところ、中国の鳥インフルエンザは感染ルートがはっきりしないため、引き続き、警戒が必要なようです。

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鳥インフルエンザについて 1

2013-04-09 13:02:10 | 日記
ご無沙汰しています。

古森病院@博多区対馬小路です。


最近の医療系の話題の一つは 中国で発生している鳥インフルエンザです。
死者も結構 出ているようですね。

http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/world/bird_flu/
鳥インフル、7人目の死者=感染者24人に―中国
 【北京時事】中国上海市政府は8日、H7N9型鳥インフルエンザに感染した64歳の男性が新たに死亡したと発表した。江蘇省政府も85歳男性と25歳女性の2人の感染が新たに確認され、2人は重症と発表した。これで感染者は上海と江蘇、安徽、浙江3省で計24人、うち死者は7人になった。 (時事通信)



厚生労働省も通達を出して、警戒を呼び掛けています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002z1vl.html

以前2009年に問題になった新型インフルエンザですが、それはH1N1亜型というタイプの
豚インフルエンザウイルスが人型に変異したものでしたが、今回はH7N9というタイプの
鳥インフルエンザとのことです。

インフルエンザのA型はもともと同じ動物同士で流行するウイルスですが、同じ動物の間で流行している時に
たまたま種の壁を越えて人に感染すると 時に重症の肺炎を引き起こしたり 中には死亡に至るケースもあります。

動物⇔人 で感染しているうちは散発的な発症にとどまりますが、そのうちに 人⇔人 感染と言って
人間の間で容易に感染できるウイルスに変身すると、大流行を引き起こします。動物のウイルスに感染することは通常
ないので、誰も免疫を持っていないためです。

今のうちはタミフルが効いているようです。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130405/erp13040510440004-n1.htm

【鳥インフル】
WHO、H7N9型に「タミフルが治療に有効」
2013.4.5 10:43
 世界保健機関(WHO)は4日、中国で感染者が増加している鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)について、治療薬のタミフルとリレンザが治療に有効とみられるとの暫定結果を得られたと発表した。WHOと協力関係にある中国の研究機関が分析した。
WHOは引き続き中国の関係当局と協力し、情報提供を続ける。H7N9型インフルエンザの感染者増加に伴う渡航制限などは勧告していない。
2009年の新型(H1N1型)インフルエンザ大流行の際にはタミフルなどの治療薬が使われたが、耐性のあるウイルスが新たに感染力を持つこともある。(共同)

中国はラピアクタを緊急で認可したようですね。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130407-00000001-scn-cn


中国が鳥インフルエンザ治療の新薬を緊急認可

サーチナ 4月7日(日)8時52分配信
中国国家食品薬品監督管理総局は6日、H7N9型鳥インフルエンザの治療に向け、新薬ペラミビル注射液の生産と使用を緊急認可したことを明らかにした。中国国際放送局が報じた。

インフルエンザの治療効果が検証されているという新薬ペラミビル注射液は、重症患者や薬を吸入、服用できない患者に新たな治療の選択肢を与えるもので、現在のところ、ペラミビルの販売は米国や日本、韓国などごく少数の国でしか認められていない。
なお、4月5日17時の時点で、H7N9型鳥インフルエンザ感染者は16人、死者は6人が確認されている。(編集担当:村山健二)


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