古森病院@福岡市博多区 病院管理者のブログ

ベイサイドプレイス近隣にある長期滞在型病院です。投稿記事は管理者の独自見解であり、医療法人の見解ではありません。

百日咳について(全数報告)

2017-06-26 11:01:55 | 日記
古森病院@福岡市博多区です。

管理人は研修を九大呼吸器科で行い、その流れもあって
当院には呼吸器科からの医師が非常勤で勤務しています。

そのせいか、

「長引く咳」を主訴として 当院受診される方が最近
増えてまいりました。

長引く咳の裏には様々な疾患があり、
咳の理由はケースバイケースですので、問診しながら治療方針を
決定していきます。

長引く咳の原因疾患の1つに百日咳があります。

百日咳とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ha/pertussis/392-encyclopedia/477-pertussis.html

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/sannkou10.pdf

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上記2つめの資料より 引用

臨床症状 百日咳の潜伏期間は 6〜20 日(通常 7〜10 日)である。発症から回復までに数週間以 上を必要とし、病期によりカタル期(感冒症状、1〜2 週間) 、痙咳期(乾性咳嗽と発作 性の咳、3〜6 週間)、回復期(6 週間以降)に分けられる。なお、排菌はカタル期に多 い。 ワクチン未接種の乳幼児では、2 週間以上の咳以外に連続性の咳(staccato:スタッカ ート)や特徴的な吸気性笛声(whoop:ウープ) 、これら咳嗽発作の繰り返し(レプリ ーゼ)、咳込みによる嘔吐(vomiting) 、相対的リンパ球増多が特徴的である。発熱はな いかあっても微熱である。咳嗽は夜間に多く、何らかの刺激で咳嗽発作が誘発される。 息を詰めて咳込むことから顔面浮腫や眼球結膜出血、点状出血がみられることもある。 0 歳早期では、無呼吸発作やチアノーゼ、けいれん、呼吸停止から突然死に至る場合も ある。合併症として肺炎や脳症が報告されている。 一方、青年・成人の臨床症状は非典型的であり、主に 2 週間以上の長引く咳と発作性 の咳だけのことが多い(表1)。厚生労働省研究班(研究代表者 岡部信彦、研究分担者 蒲地一成)の調査では、成人患者の 1〜5 割に吸気性笛声、約 5 割に周囲の者に咳(家族歴など)が認められている 28,29)。

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名前の通り「百日くらい続く咳(まさに長引く咳)」ということで
この病名がついているわけですが
百日咳は乳児がかかると命にかかわることがあるため
百日咳と診断した場合、小児科定点報告(指定された病院で診断された場合のみ
保健所に報告する)の対象疾患(感染症法 5類感染症)でしたが 
この度、内科(成人)も含め 確定診断となった場合
全数報告の対象となる方向で、話が進んでいます。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/shiryou3.pdf

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日経メディカルオンラインより

成人含む百日咳患者の発生動向を正確に把握
百日咳、定点から全数把握へ変更、来年1月から
2017/6/21

厚生労働省の厚生科学審議会感染症部会(部会長・倉根一郎・国立感染症研究所長)は6月19日、百日咳の届出基準などの改正案を了承した。5類感染症の定点把握疾患から全数把握疾患に変更するもので、厚労省は今年秋をめどに感染症法等施行規則の改正を行い、2018年1月の施行を目指す。改正により、成人を含む百日咳患者の発生動向が正確に把握できるもと期待されている。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201706/551745.html

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現在 百日咳は 定期予防接種(母子手帳についたタダ券)の対象となっており
DTaP-IPV(四種混合)ワクチンを3か月から打てるようになっています。
ワクチンスケジュールでは0歳代で3回打ち、1歳3か月になったら追加で1回DTaP-IPVを打つことになっており
計4回打つことで、無料で行う分は終了します。

しかし百日咳は不活化ワクチンのため、予防接種の効果が長続きせず、小学生くらいになると
自然に感染するケースが増えてきます。この年代になると死亡することはほぼないのですが
産まれて半年以内の乳児に接触すると、乳児が感染する可能性が出てきます。
百日咳の死亡率が高いのは 0歳児です。
(乳児は3か月たったらワクチンを打ちますが、ワクチン効果が現れ、感染をブロックするには 
2回は打たないといけません)
また、臨床現場の感覚から言えば、百日咳をきちんと診断することは少なく
臨床症状だけで抗生物質投与を行ったり、咳喘息として治療していく中で
時期が過ぎて、何となく治っていく例が大半を占めており
百日咳が小児科のみの定点報告ということもあって、百日咳患者さんの全貌は明らかになっておりません。

こういうこともあって、内科も含め百日咳は全数報告とし、全貌に少し近づこうというのが
今回の審議の趣旨のようです。

過去に行われた厚労省研究班の報告では、成人遷延性咳嗽(長引く咳症状の)患者さんの
約3割に百日咳菌の保有が見られたとのことでした。

平成 20 年度厚生労働科学研究費補助金 新興再興感染症研究事業「予防接種で予防可能疾患の今後の感染症対策に必要な予防接種に関する研究」:わが国の咳嗽成人患者を対象とした百日咳保菌率調査(研究代表者 岡部信彦、研究分担者 蒲地一 成). 2009. 29


百日咳の治療は百日咳と同じく咳が主症状のマイコプラズマ肺炎などと同様
マクロライド系と言われる種類の抗生剤投与が主流の治療法です。

今回 仮に全数報告が決定したとして
前述しましたように、長引く咳を主訴として来院される方は多く、
確定診断のために手間暇かからないが、検査代がお高い遺伝子検査を
いちいち行うのは明らかに非効率的であり、百日咳患者さんの全貌に
どこまで迫れるかが 今後の臨床的な課題だと思います。 

ちなみに・・・
2016年から今まで青年や成人は薬機法上 対象になっていなかった
DTaPワクチン(三種混合 ジフテリア、破傷風、百日咳)の効能が追加承認されて、
現在は青年や成人の追加接種が可能になっています。

トリビック(阪大微研)
【用法・用量】 初回免疫:通常、1 回 0.5mL ずつを 3 回、いずれも 3~8 週間の間隔で皮下に注射する。
追加免疫:第 1 回の追加免疫には、通常、初回免疫後 6 か月以上の間隔を置いて、 0.5mL を 1 回皮下に注射する。以後の追加免疫には、通常、0.5mL を 1 回皮下に注射する。

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ストレスチェック制度

2017-06-14 08:49:24 | 日記
古森病院@福岡市博多区です。

今回は 2015年12月に厚労省の政策でいきなり導入された
ストレスチェック制度についてお話します。

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ストレスチェック制度(ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/


ストレスチェック制度 (上記ホームページより)
平成27年12月より施行のストレスチェック制度は、定期的に労働者のストレスの状況に
ついて検査を行い、本人にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、
個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させるとともに、検査結果を集団的に分析し、
職場環境の改善につなげる取組です。

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管理人は産業医でもあり、2016年3月まで実際に産業医活動をしておりました。
過去に産業医をしていた企業で驚いたことは
精神疾患で休職になった対象者のほとんどが 
もともと精神疾患(発達障害を含む)を患っており、
それに付随して 職務が十分果たせず、(職務が果たせないことで
二次的に周囲との軋轢が産まれることもあります)
症状をこじらせて 休職に至っているということでした。

本人の資質に関係のない、職場起因の過重労働、パワハラ、セクハラなどのハラスメントによる
精神不調による休職を防ぐということが ストレスチェックの最大の目的と思われますが
そのような理由での休職者はまったくおられないわけではありませんが、少数派であるようで
管理人が産業医の講習会などでどの講師に聞いても、「もともと精神疾患を持っていた人の
精神不調による休職の占める割合の方が確かに多い」というご意見を多々戴きます。
職場起因の過重労働、パワハラ、セクハラなどをうけた方々は 休職ではなく
退職(あるいは労働訴訟)や自殺の転帰を辿られている可能性もあり
個人的な経験だけで物は言えないのですが、、、。

このことに関しては
精神疾患による休職者に どれくらいの割合で精神基礎疾患があるのか
調査すれば、正確なところが出ると思うのですが、なぜか調査は行われていないようで、
論文を検索しても出てきません。

管理人を含め、現場で産業医をしている医師はストレスチェックに懐疑的な意見が多いです。
前述したように、精神疾患による休職は企業起因性でない私傷病によるケースが少なくないという実感があるのに 
対象企業にストレスチェック制度を整える体制を義務付け、
高ストレス者には 本人が希望すれば産業医面談という流れになっています。
一方で、ストレスチェックはもともと精神疾患を抱えている
職員(こういう職員は企業側に自分の病気について告知していないケースも多いです)の
あぶり出しにつながることから、強制とはなっていません。
しかし趣旨を十分に理解していない企業、仕事を獲得するべく社会保険労務士その他職場の解析を行う
業界の人たちにあおられて(実施義務対象企業には 職員に対し半強制的に有無を言わさず
テストを行っているところが多いようです。当院は職員の希望制としています。)、現行のストレスチェック制度は
本来趣旨(二次予防 すなわち職場起因による精神不調の早期発見)と別の方向に走っていっている
印象がぬぐえません。

企業によるでしょうが、ハラスメントによる精神不調であれば 産業医面談より、
本人が企業の相談窓口に相談するか、さっさと精神科を受診して精神科医の診断書を会社に提出するか、
労働基準監督署あるいは弁護士事務所に駆け込んだ方が 解決が早く効果が高い可能性がありますし
過重労働については 企業側に少子化の中 効率化のための設備投資を行うか 
雇用を増やさないといけないという経営的な難問が突き付けられるものの、
そうしない限り解決しないので
産業医に面談させとけばいいという発想は 根本的に間違っているように思います。

このあたりが ストレスチェック制度について 
管理人がもやもやする理由であると 産業医の一員として考えておりますが、
制度が始まったばかりですので 模様眺めということで 記事を終了いたします。

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アンケート&調査 その2(療養病床編)

2017-06-05 08:44:52 | 日記
古森病院@福岡市博多区です。

前回 アンケート&調査地獄 その1という記事をアップしたところ
そこそこ反応がありましたので、予告通り「その2」を掲載いたします。


平成28年度
3月  平成27年度身体拘束に関するアンケート調査について(依頼)             福岡県 
    同内容アンケートもう一部(上記とアンケート内容異なるもの)            福岡市
    平成27年度退院調整に係る調査票                         福岡県看護協会
    平成27年度看護職員需要施設調査票                        同上
    平成27年度看護職員施設退職者調査票                       同上
4月  認知症患者受信状況報告書・認知症医療連携に関するアンケート            福岡市医師会
    災害により被災された要介護高齢者等の受け入れ、介護職員等の応援派遣等について   福岡県
   (照会)
5月  平成28年度介護事業実態調査(介護事業経営概況調査)へのご協力のお願い       厚労省
7月  外国人の医療環境整備に関するアンケート(病院用)                 福岡県&福岡市
    平成28年度 福岡県医師会臨床検査制度管理調査申込書(アンケートを兼ねる)     福岡県医師会
    企業を対象とした反社会勢力との関係遮断に関するアンケート            全国暴力追放運動推進
                                            センター&日弁連&警察庁
8月  チーム医療が病院の組織変革に与える影響に関するアンケート調査ご協力のお願い    岡山大学大学院
9月  新人看護職員研修の実施状況の把握について(照会)                 福岡県
    高齢者福祉施設と地域との関係に関するアンケート調査                福岡市社会福祉協議会
                                             &旭商会共同事業体
    認知症ハンドブックに関するアンケート調査                     福岡市医師会?
    医師以外の資格を有し、院内で医療安全管理者としてご活動されている方へ       厚労省 科研費研究
    在宅医療・介護連携のための社会資源調査                      福岡市医師会
    地域包括ケアを支える中核医療機関の役割・機能の在り方に関する研究事業       全日本病院協会
      アンケート調査へのご協力のお願い
10月  平成29年度における福岡県地域職業訓練実施計画策定に向けた職業訓練ニーズにかかる  福岡労働局
    アンケート調査について(依頼)                   
    病院の耐震改修状況の調査について(依頼)                      福岡県
    病院経営管理指標に関するアンケート調査ご協力のお願い        厚労省委託事業
    病院・診療所等が行う中重症者の医療ニーズに関する調査研究事業 への         日本病院会&全日本
    ご協力のお願い (平成28年度介護報酬改定検証・研究調査)             病院協会&日本慢性期
                                             医療協会
11月  医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査(依頼)               厚労省
    平成28年度介護事業実態調査(介護従事者処遇状況等調査)              厚労省
    介護サービス施設、事業所調査 施設票                       厚労省
12月  地域包括ケアを支える中核医療機関の役割・機能の在り方に関する研究事業       全日本病院協会
       (9月に来たものに回答した内容を踏まえ、さらに内容を細かく聞いてくるもの)
1月   定期健康診断結果データ提供の要請について                     福岡労働局
     看護職員確保等に関する意識調査                          厚労省委託事業
     平成28年病床機能報告                               厚労省
2月   平成28年度身体拘束に関するアンケート                       福岡市
     医療機関における臨床指導・質指標に関する現状調査                 厚労省科研費研究
     後発医薬品の採用および使用の課題に関する調査 へのご協力のお願い         日本ジェネリック製薬                                              協会
    がん対策推進基本計画の評価へ向けた地域連携(がん医療における医療機関間の連携等)  厚労省
    に関する情報提供に関するお願い(依頼)
    女性医師の勤務環境の現況に関する調査 ご協力のお願い                日本医師会
    看護部門における研修と費用 に関するアンケート調査ご協力のお願い          産労総合研究所
3月   看護師の特定行為に係る研修制度に関する調査                     福岡県
    産業医活動並びにストレスチェック制度に関するアンケート調査の協力依頼について    日本医師会
    表題不明 (医療機器の安全管理についてのもの)                   日本臨床工学技師会                         

現在の療養病床および病院の抱える課題が浮かび上がって 
他人事なら面白いんですけど・・・・


こうして書きだすと「とっても」多いです。
似たような調査も「とっても」多いんです。
調査だけして 結果を教えてくれない調査も多いし、、
似たような調査は、クラウドなどで、情報共有して数を減らしてほしいです。
そしたら回答率も少しは上がるんじゃないでしょうか?
今の回答率って1~2割くらいらしいですけど
そりゃあ そうでしょう・・・。
現場は忙しいわけで、これだけくるアンケートに どれだけ時間割けると思いますか・・・・・?

しかもこのアンケート調査 回答しても「無償」です。
有償にすればいいのか という問題とも少し 外れますが・・・。

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