カイロじじいのまゃみゅむゅめも

カイロプラクティック施療で出くわす患者さんとのやり取りのあれこれ。

恋愛幻論

2010-03-19 20:27:25 | 本日の抜粋

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林  それで、非常に適正価格かという場合、着る側の立場で見たときに、あたしいろんな女の人の話を聞いて、まあ、あたしもちょっと売り場をのぞいたりすると信じられない高さですよね、コム・デ・ギャルソンというのは。たとえば、ペラペラのブラウスでも二,三万しますし、はっきりいって素材が悪いというのはスタイリストとかファッションの編集者も指摘している。まあ、それは主観の問題かもしれないけど、適正価格じゃない。何かあたしは、高いイメージ代があの中に入っていると思ってしまうんですね。
栗本 高いからいけないとか、イメージ代が入っているからいけないということは言えないし、そういうことを言いたいんじゃないんでしょ?
林  うん、じゃないんですよ。一見すごく孤高を守るような厳しさを見せながら、実は非常にマスコミと手を取り合っている。
栗本 (指を一本立て、力をこめて)こびている。
林  マスコミの扱い方も知っているという。このごろ出てくる人がみんなそうなんじゃないかと。それから例えば、それに必ず知識人が‥‥‥。
栗本 最後に使われるんだよね。(中略)やっぱりモノがよければいいんじゃないかという論理もあるけれども、その売られ方とか、イメージのつくりだし方というのは、きわめて現代的であると同時に、現代の権力的なやり方をコム・デ・ギャルソンもしているということなんです。

林 真理子 * 吉本 隆明 * 栗本 慎一郎 『恋愛幻論』より 角川書店

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およそ四半世紀前の古い本である。
ブックオフで105円にて購入。
105円で質の良い本が並べられていると、痛ましくてつい買ってしまう事がある。

ブックオフの成功の秘訣は、少し美装して当分の期間を半額に、それで売れない本は105円にと単純化し、賃金の安いアルバイト雇用で利益を図るというものだ。

本の世界と言い、音楽の世界と言い、創作者には辛いご時世といえる。

さて、この本。
25年後の林真理子はすっかりおばさんになっているのだろうが、この時は若い。
日本思想界の御大に、己の心情、本音を最初は遠慮がちに、後半は大胆にぶつけている。
ちょっと、すがすがしい。

これは、作家の人格と彼から生み出された作品の関係論でもある。

徳さんも時々想像する。
身近に、ドストエフスキーや太宰治や三島由紀夫や大江健三郎がいたら、さぞかしうんざりするだろうな、って。