金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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金色の涙(江戸の攻防)292

2010-12-12 10:05:27 | Weblog
 猪突猛進の小松姫。
朱槍「赤蜻蛉」を構えて一揆勢の開けた道を、馬に鞭を入れて突き進む。
誰も邪魔しないと信じているらしい。
 幸いにも太田三右衛門の威令が行き届き、手出しする者はいない。
みんな成り行きを見守っていた。
 三右衛門は娘のような小松姫の動きを見定めていた。
槍を構えて駆ける騎乗姿に無理がない。
父である本多忠勝の薫陶を受けているのだろう。
女武者で終わらせるには惜しい逸材ではないか。
思わず惚れ惚れと見入ってしまう。
 小松姫は小細工はしない。
間合いに入るや喉元に向けた槍を素直に伸ばして突き入れた。
 それを三右衛門は弾き返そうとした。
思いの外、相手の槍が重い。
それだけ、「槍捌きに威力がある」ということなのだろう。
辛うじて逸らした。
 小松姫は攻める手を緩めない。
相手を馬から払い落とそうと槍を振り回した。
それをも受け止められると槍を一転させ、頭上から振り下ろした。
槍の穂先で相手の兜を両断しようとした。
 穂先の切れ味は刀に比べて劣るが、上から振り下ろす事でもって、
強引に叩き切ろうというのだ。
それに小松姫の「赤蜻蛉」の切り味は侮れない。
なにしろ武田信玄が本多忠勝の「蜻蛉切り」を手本にして造らせた逸品であった。
 三右衛門には「赤蜻蛉」の切れ味を見てみたい気はあった。
でも今ではない。
両腕に力を込めて、己の槍を振り回し、穂先に穂先をぶち当てた。
激しい衝撃と金属音。火花も散った。
相手の槍の軌道を変えたが、己の槍は穂先が折れ落ちてしまった。
 余裕を持って小松姫を迎え撃った筈が、予想だにせぬ展開となった。
思わず苦笑い。
 三右衛門は、この一揆が最後の戦いと思い定めていた。
すでに家族も、忠実な郎党の大半も、豊臣との戦いで失っていた。
これ以上、生き延びる意味が無い。
それに今さら他家に使える気も無い。
 なにしろ仕えた小田原の北条家は、「この上ない」と言ってもよい主であった。
血筋偏重の傲慢さがなく、実力優先の登用と下の者に手厚い領地経営。
大事な政策は衆議に諮って決定する家風。
隣接する武田家、今川家、上杉家等の旧家とは色合いが大いに違っていた。
ことに領民を第一に考えた税制、四公六民がその最たるものではなかろうか
 ここで女の手によって終えては自分のこれまでを否定されたも同然。
心の片隅の、「相手は女」と侮る気持を噛み砕き、グッと相手を睨み付けた
 穂先を失ったからといって諦めはしない。
残った長い柄を振り回して相手の胴を狙った。
こうなれば柄でもって殴り殺すのみ。
相手に受け止められても攻める手は緩めない。
ただの長い棒となった槍を馬上で左右に振り回し、叩き付けるようにして、
何度も何度も胴を、顔を、足を、狙い所を変えて巧みに打つ。
 驚く程の対応をみせた小松姫。
ことごとく受け止めてしまうではないか。
 それでも三右衛門は相手に反撃の機を与えない。
老練な無駄のない棒捌き。
低きに流れる水のように自然であった。
一切の力みはなく、回転する勢いのみを利用していた。
 小松姫は耐え凌ぎながらも反撃の機を窺っていた。
相手に老練の技があるのなら、彼女には若さがあった。
加えて天分のものがあった。
父、忠勝曰く、「筋もだが、勘も良い」と。
 相手が振り下ろす柄を巻くようにして払い除け、相手の体勢を崩した。
そこに付け込む。
小手を打ち、続けて相手の得物を払い落とした。
絶好の好機。
槍の回転を活かし、容赦なく相手の首を狙う。
右から首を打った。
 その早さに躱す暇がなかった。
ドッとばかりに落馬する三右衛門。
受け身も取れずに背中から落ちた。
それでも朱槍の誇りか、すぐに立ち上がろうとした。
 その瞬間に見守っていた敵味方が動いた。
まず、三右衛門手回りの騎馬隊が救出に駆け付けた。
他の一揆勢も動いた。
遅れじと真田軍が気勢を上げて前進を開始した。
血気に逸る十数騎が無謀とも思える突進。三右衛門の首を狙う。
 肝心の小松姫は蚊帳の外。
何時の間にか家臣達の分厚い隊列に前後を囲まれ、身動きが取れなくなっていた。
 重臣達が小松姫を無視し、それぞれの隊を率いて敵隊列に当る。
そして騎馬隊が断ち割った敵隊列に徒士の隊が斬り込む。
真田得意の敵を分断、攪乱する戦い。
最後には指揮系統を失った部隊から殲滅してゆく。

 幸いにも豪姫を担ぎ込んだ屋敷は落雷を受けずにすんだ。
 豪姫は敷き布団の上に寝かされていた。
周りには前田慶次郎、吉岡藤次、猿飛佐助、若菜。
ヤマトに伏見の狐ぴょん吉。
それに陰供を命ぜられていた伏見の狐ちん平、まん作。
いずれもが心配そうに豪姫の顔を覗き込んでいた。
 若菜がヤマトに問う。
「於雪はどうなるの」
「戦いが終わらないと分からないよ」
「鞍馬の頃に戻るのかしら」
「かも知れない」
「今まで通りというのは」
「それはないだろう」
「どうして」
「九郎と於福を失ったからね」
 断言するヤマトを若菜は見詰めた。
「二人とはどういう関係なの」
「はっきり聞いた事はないよ。ただの推測」
「でもヤマトの読みは当るものね。それでどうなの」
「悲しい話しだから知らないほうがいいよ」
 それ以上は問い詰められない若菜だが視線をヤマトから外さない。
何時の間にか周りの者達も耳を傾けていた。
誰も何も発しない。
 短い沈黙を破ったのは慶次郎。
「心当たりはある。だけど俺も、本人が口にしない以上は喋りたくない」
 それに、ぴょん吉が同意した。
「俺も。ヤマトや慶次郎が言いたくない気持は分かる」




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取り止めのない話し。
・・・。
話しを聞いて僕は驚きました。
これまでは海原の遙か向こう、水平線の彼方には、
大きな大きな滝があるとばかり思っていました。
滝から海水が流れ落ちて・・・たぶん、雨雲になると。
地理で用いる地図は長方形でした。
右にアメリカ大陸、左にヨーロッパ、アフリカ大陸。
そして中央には日本。
ところがこの大地は丸い球形であると言うではないですか。
そして日本の裏側にはブラジルがあると。
信じられませんでした。
そこで僕は裏庭に穴を掘りました。
穴を掘り続ければブラジルに抜け出られると思ったからです。
まるで刑務所からの大脱出大作戦です。
三十分も掘りました。
すると穴から水が湧いて出てくるではないですか。大量の濁り水が。
そうです。
アマゾンの水です。
「このままでは日本が水没してしまう」
「きっとワニが出て来る」「ピラニアも」と恐くなりました。
慌てた僕は必死で穴を埋め戻しました。
幸いにも埋め戻しには成功しました。(ホッと一息)
・・・。
「うちの裏庭がブラジルに通じている」というのは内緒です。


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