金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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金色の涙(白拍子)169

2009-10-07 21:38:28 | Weblog
 表に騎馬の一行が止まるのに合せてヤマト達も外に出た。
若菜がヤマトを胸に抱き、白拍子が後に続いた。
 騎馬の者達の視線が若菜とヤマトを通り越して白拍子に向かう。
その大きさ、美しさに驚いているようだ。
誰も何も発しない。
 ヤマトは若菜と顔を見合わせて苦笑い。
「鼻の下を伸ばしてるよ」
「本当、男って馬鹿よね」
 関所から案内してきた者が得意そうにみんなを見回した。
自分達の白拍子にみんなが見とれている事を確認すると、満足そうに頷いた。
そして余裕の表情で、誰にともなく、「それでは」と元来た道を引き返した。
 暫くして最初に動いたのは小柄な侍。下馬するや笠を取った。
若侍に扮した豪姫だ。白拍子から目を離さず、ヤマトに問う。
「これが白拍子なのね」
「そうだよ、名前は於雪」
 後ろから白拍子がヤマトに問う。
「すると、その女が豪姫かい」
「そう、我が儘な豪姫だよ」
 間に若菜とヤマトを挟んで二人は対峙した。睨み合う。
 宇喜多秀家も遅れじと下馬をした。
笠を取りながら、豪姫の傍に急ぐ。
新免無二斎と吉岡藤次が秀家の後に続いた。
秀家は豪姫の脇に立ち、白拍子を見上げた。
無二斎と藤次は二人の背後で白拍子に睨みを利かせた。
 真田幸村と肩を並べてこちらに歩いて来る武士は、どうやら父親の真田昌幸。
顔も背格好もよく似ていた。
 前田慶次郎が前に出て来た。
「ヤマト、これはどういう事だ」
「ごらんの通りだよ。これで豪姫も満足してくれるだろう」
「しかし、ずいぶん様変わりしたな。翼はどうした」
「飛ばない時は消えるそうだよ」
 慶次郎はマジマジと白拍子を見詰めた。
「便利だな。それにしても、・・・雰囲気が別人だ」
「忘れたのかい、あの時の事。
白拍子は三つの魔物を吸収して実体化したんだよ。
人で言えば赤ん坊として生れたばかり。
で、今は小娘かな」
 白拍子が不満を漏らした。
「今は立派な女よ。魔物だけど」
 ヤマトは、「だそうだ」と苦笑い。
 慶次郎がフフンとばかりに頷いた。
「となると、お豪の旅もここまでだな」
 聞えた筈なのに豪姫は何も言わない。
ただ、ジッと白拍子を見詰め続けていた。
 秀家が代わって答えた。
「そうですね。ここで終わりです。それもこれもヤマト殿のお陰」
 ヤマトは秀家に頷き、豪姫に問う。
「豪姫、どうする」
 豪姫は、「どうしたものか・・・」と曖昧な言葉。
 幸村が割って入り、白拍子をキッと睨む。
「それがしの家来が虫けらの如く斬り殺されているのだが」
 それに白拍子が敏感に反応した。
「その方は、あの時の騎馬武者の主人なのね」
「如何にも」
 白拍子は表情を引き締めた。
「それではどうするの」
 幸村はすぐに刀を抜けるように、鯉口を切る。
「家来の無念を晴らす」
 脇の昌幸が驚いて、片手で制す。
「待て、血迷うな」
 ヤマトが言葉を重ねた。
「お主の仕事は豪姫を無事に連れ戻す事だよ」
 幸村はいつもの温厚さをかなぐり捨てた。
「目の前に家来を斬り殺した者がいるというのに、
このまま黙って引き下がれるか」
 幸村の言葉を聞いた供の家臣十一人が駆け付けた。
いずれも鞍馬の麓で白拍子と遭遇した面々だ。
憎々しげに白拍子を睨め付けた。
 その先頭に立っているのが中山才蔵。
いつでも斬り込めるように身構えながら、白拍子に問う。
「それがしの屋敷に行ったのか」
 白拍子の表情が緩む。
「行ってきたわよ。みんな良い人ばかり。とりわけお幸は可愛いわね」
 才蔵は疑惑の目。
「お前は一体何者なのだ」
「ごらんの通り、魔物よ」
 豪姫が幸村の正面に向き直った。
「気持は分かるけど、今はお止めなさい」
 おもわず幸村は一歩下がった。
不満げな表情で口を開いた。
「姫様、そこをお退き下さい」
「なりません」
 昌幸が豪姫の側に立つ。
豪姫の右に秀家。左に昌幸。
三人が横一線に並んで幸村の前進を阻む。
 ヤマトが白拍子に言う。
「於雪、お前は代官の客人なんだから、勝手に喧嘩沙汰はいけないよ。
何かあれば代官が責任を取って腹を切る事になる。分かるかい」
 その言葉に、白拍子よりも幸村が激しく反応した。
「代官、・・・すると、八王子の代官の客人なのか」
「そうだよ」
 幸村は刀に添えた手を離した。
徳川の代官の客人に刃を向けるわけにはいかない。
グッと奥歯を噛み締めた。




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