徳川屋敷の庭の手入れをしていた小者は、目の前を横切る白い塊に驚かされた。
よく見れば白猫・カエデではないか。
不意に現れると、その大きさに目を見張らされる。
カエデのもとを黒猫が訪れるようになってから、大きくなってきたのだ。
今では、あの黒猫と大差ない体躯をしていた。
並みの猫の倍近い大きさだ。
皆の噂では黒猫の正体は魔猫だとか・・・。
カエデが動きを止めた。
上を向き、耳をそばだてた。
風に乗って遠くから山猫の咆哮が届く。
彼女は声の主を聞き分けた。
いつもの歌い方とは違うが、黒猫・ヤマトに違いない。
カエデは周囲を見回し、近くの茶室の屋根に目をやる。
高いが躊躇いもなく跳んだ。
大きくなった分だけ体重も増えた筈だが、苦にしない。
軽やかに瓦屋根に着地すると、声の聞こえる方向を確かめた。
京北だ。
カエデは逆風を物ともせずに跳んだ。
茶室の屋根から隣家の屋根に。
屋根から屋根へ次々に跳び移り、京北を目指した。
囲まれた五右衛門達四人を助けようと、ヤマトは屋根から跳び下りた。
待っていたかのように手裏剣が飛来した。続けざまに三本。
着地の瞬間を狙っていたらしい。
狙いは一本も逸れてはいない。
ヤマトは寸前、宙で捻りを入れて躱した。
少し離れた場所に、ドッと背中から着地。痛みが走った。
素早く起き上がり、手裏剣の飛来した方向を睨みつけた。
姿を現したのは見覚えのある男。
「柘植の喜蔵」と呼ばれる老忍者だ。
高齢ではあるが、技は侮れない。
これまで幾度も技と経験で、ヤマトや五右衛門を窮地に陥れてきた。
彼が養っている忍犬も姿を現した。
二匹。左右から牽制するかのように、威嚇してくる。
彼等の脇を捕り手達が駆け抜けて行く。
五右衛門を捕らえようと躍起になっていた。
ヤマトも五右衛門の方へ向かおうとするが、喜蔵と二匹の忍犬が邪魔をした。
行く手を塞ぐように先回りした。
どうやら彼等はヤマトのみが狙いらしい。
しかし、無理して攻めてはこない。
こちらに隙が生じるのを待っているのか、慎重だ。
ヤマトは彼等に合わせている暇はない。
五右衛門達を助けなくては・・・。
そこで猫又は、戦い好きの龍と交替しようと、一声かけた。
ところが返事が返ってこない。
何度目かでようやく、「嫌だ」と。
気が向かないらしい。
となればここは猫又が戦うしかない。
ヤマトは踵を返した。家の方へ引き返した。
床下に潜り込み、土間に出た。
それを忍犬が追って来た。
低い床下にも関わらず、二匹は連携を守っていた。
一定の間合いを置いて、ヤマトを追尾して来る。
忍者と忍犬の切り離しは成功した。
さらに両者が再び連携せぬように運ばねばならない。
喜蔵は忍犬を呼び止めようとしたが遅かった。
忍犬に育てても所詮は犬。
深読みができないのだ。
喜蔵は臍を噛みながら、忍犬を追って走った。
床下には飛び込まず、。黒猫の気配を感じ取りながら、家を廻り込んだ。
黒猫の先回りするつもりでいた。
五右衛門達が飛び出してきた縁側を見つけた。
そこから屋内に駆け込んだ。
ヤマトは気配を消し、土間の片隅で身構えていた。
一匹目の頭が視界に入るや、跳んだ。
猫拳を相手の後頭部に叩き込む。
一撃で勝負を決めた。
頭蓋の割れる音。そして甲高い断末魔の悲鳴。
槍でも突き刺さったかのように、猫拳が後頭部に深々と喰い込んでいた。
これで忍犬同士の連携をも撃ち破った。
残った一匹が床下から抜け出るや、ヤマトに体当たりしてきた。
大きく弾き飛ばされた。
続けて、噛み殺そうというのか、口を大きく開けて突進して来た。
仲間の死に猛り立っているのが分かる。
部屋の板壁に弾き飛ばされたヤマトは、痛みを堪え、立ち上がっていた。
突進して来る相手をジッと見据え、待ち構えた。
相手の口が触れる寸前、攻撃に転じた。
再び猫拳。下から上に突き上げるようにして繰り出した。
顎の骨の折れる音。
自分の倍以上の大きさの忍犬を、悲鳴すら許さぬ打撃で仕留めた。
猫又はヤマトの身体の動きの変化を感じ取った。
鬼達との戦いを経て、家猫から完全な獣と化していた。
喜蔵が部屋の入り口まで足音は無論、気配まで消して接近していた。
いつでも投げられるように片手には手裏剣が握られていた。
犬の悲鳴を聞いて、思わず手裏剣を強く握り締めた。
刃先に指が触れた。切れ味が良い。赤い血が流れた。
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人員整理と部署再編、そして仕事量の激減・・・。
ただ、一人頭の仕事量としては増えています。
残業にならぬように必死で片付けていますが・・・。
お蔭でこのところ、少々ですが「お疲れ気味」です。
よく見れば白猫・カエデではないか。
不意に現れると、その大きさに目を見張らされる。
カエデのもとを黒猫が訪れるようになってから、大きくなってきたのだ。
今では、あの黒猫と大差ない体躯をしていた。
並みの猫の倍近い大きさだ。
皆の噂では黒猫の正体は魔猫だとか・・・。
カエデが動きを止めた。
上を向き、耳をそばだてた。
風に乗って遠くから山猫の咆哮が届く。
彼女は声の主を聞き分けた。
いつもの歌い方とは違うが、黒猫・ヤマトに違いない。
カエデは周囲を見回し、近くの茶室の屋根に目をやる。
高いが躊躇いもなく跳んだ。
大きくなった分だけ体重も増えた筈だが、苦にしない。
軽やかに瓦屋根に着地すると、声の聞こえる方向を確かめた。
京北だ。
カエデは逆風を物ともせずに跳んだ。
茶室の屋根から隣家の屋根に。
屋根から屋根へ次々に跳び移り、京北を目指した。
囲まれた五右衛門達四人を助けようと、ヤマトは屋根から跳び下りた。
待っていたかのように手裏剣が飛来した。続けざまに三本。
着地の瞬間を狙っていたらしい。
狙いは一本も逸れてはいない。
ヤマトは寸前、宙で捻りを入れて躱した。
少し離れた場所に、ドッと背中から着地。痛みが走った。
素早く起き上がり、手裏剣の飛来した方向を睨みつけた。
姿を現したのは見覚えのある男。
「柘植の喜蔵」と呼ばれる老忍者だ。
高齢ではあるが、技は侮れない。
これまで幾度も技と経験で、ヤマトや五右衛門を窮地に陥れてきた。
彼が養っている忍犬も姿を現した。
二匹。左右から牽制するかのように、威嚇してくる。
彼等の脇を捕り手達が駆け抜けて行く。
五右衛門を捕らえようと躍起になっていた。
ヤマトも五右衛門の方へ向かおうとするが、喜蔵と二匹の忍犬が邪魔をした。
行く手を塞ぐように先回りした。
どうやら彼等はヤマトのみが狙いらしい。
しかし、無理して攻めてはこない。
こちらに隙が生じるのを待っているのか、慎重だ。
ヤマトは彼等に合わせている暇はない。
五右衛門達を助けなくては・・・。
そこで猫又は、戦い好きの龍と交替しようと、一声かけた。
ところが返事が返ってこない。
何度目かでようやく、「嫌だ」と。
気が向かないらしい。
となればここは猫又が戦うしかない。
ヤマトは踵を返した。家の方へ引き返した。
床下に潜り込み、土間に出た。
それを忍犬が追って来た。
低い床下にも関わらず、二匹は連携を守っていた。
一定の間合いを置いて、ヤマトを追尾して来る。
忍者と忍犬の切り離しは成功した。
さらに両者が再び連携せぬように運ばねばならない。
喜蔵は忍犬を呼び止めようとしたが遅かった。
忍犬に育てても所詮は犬。
深読みができないのだ。
喜蔵は臍を噛みながら、忍犬を追って走った。
床下には飛び込まず、。黒猫の気配を感じ取りながら、家を廻り込んだ。
黒猫の先回りするつもりでいた。
五右衛門達が飛び出してきた縁側を見つけた。
そこから屋内に駆け込んだ。
ヤマトは気配を消し、土間の片隅で身構えていた。
一匹目の頭が視界に入るや、跳んだ。
猫拳を相手の後頭部に叩き込む。
一撃で勝負を決めた。
頭蓋の割れる音。そして甲高い断末魔の悲鳴。
槍でも突き刺さったかのように、猫拳が後頭部に深々と喰い込んでいた。
これで忍犬同士の連携をも撃ち破った。
残った一匹が床下から抜け出るや、ヤマトに体当たりしてきた。
大きく弾き飛ばされた。
続けて、噛み殺そうというのか、口を大きく開けて突進して来た。
仲間の死に猛り立っているのが分かる。
部屋の板壁に弾き飛ばされたヤマトは、痛みを堪え、立ち上がっていた。
突進して来る相手をジッと見据え、待ち構えた。
相手の口が触れる寸前、攻撃に転じた。
再び猫拳。下から上に突き上げるようにして繰り出した。
顎の骨の折れる音。
自分の倍以上の大きさの忍犬を、悲鳴すら許さぬ打撃で仕留めた。
猫又はヤマトの身体の動きの変化を感じ取った。
鬼達との戦いを経て、家猫から完全な獣と化していた。
喜蔵が部屋の入り口まで足音は無論、気配まで消して接近していた。
いつでも投げられるように片手には手裏剣が握られていた。
犬の悲鳴を聞いて、思わず手裏剣を強く握り締めた。
刃先に指が触れた。切れ味が良い。赤い血が流れた。
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ただ、一人頭の仕事量としては増えています。
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お蔭でこのところ、少々ですが「お疲れ気味」です。
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