天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

モールトライと一物俳句と

2021-03-18 04:30:50 | スポーツ


上の写真はトップリーグ第4節、トヨタ自動車VSサニックスにて前者(緑のユニフォーム)がモールを組んで押し込んでトライを取ったシーンである。モールの最後尾の選手がボールを保持していて彼がゴールラインに達したときボールを地に着けてトライとなる。

強豪チームは強いフォワードを持つ。パナソニック、サントリー、神戸製鋼などトップレベルのチームはモールを押し込んでのトライを取るのが巧みである。
相手ゴール5mでスローインされたボールを空中でつかんだ瞬間、数人の選手がバインドして塊になる。この塊が多少左右へ蛇行しつつ相手の弱点を突いて前進するさまに、ぼくは一物俳句の醍醐味をいつも感じる。
以下の桜の句は、当ブログ「わが愛誦の桜7句+アルファ」(2018年3月30日)にも取り上げたが、これらの句にモールトライを思っている。

ちるさくら海あをければ海へちる 高屋窓秋
山又山山桜又山桜 阿波野青畝
まさをなる空よりしだれざくらかな 富安風生
ゆさゆさと大枝揺るる桜かな 村上鬼城


モールを組まれるとこれを阻止するのがたいへん。モールがこわれることもあるがたいていモールコラプシングを取られる。審判はモールが故意にモールを崩されたかよく見ていて反則の笛を吹く。
モールを押し返すのに相手は正面からぶつからなくてはならない。正面からそうしても動き出したモールに歯が立たない。それで横から揺さぶりをかけるようにぶつかるとそれは反則でありすぐ審判の笛が鳴る。
したがっていったん組まれたモールに対抗するのは至難である。モールを組まれたらどうにもならない、絶体絶命、というふうにぼくは見ている。逃れられない状況という緊迫感が言葉にできぬ快感をもたらす。

トライを取るために、一般的には、ボールを持って走り、相手のタックル等で止められるとボールを横にパスする。ボールを得た次の人が突進し止められるとまたパスする。縦への突進と横へのパスとの組合せで多くのトライは取られる。
これは季語に関係ない事物を取り合せて句を成す方法に似る。縦と横とというベクトルが発火点を成すのである。しかし取り合せには必ずハンドリングエラーが出来する。ノックオンなどのミスである。取り合せが決まらない感じにラグビーのノックオンなどを感じる。

けれどモールを押して取るトライには紛れが生じない。
上記4句は、季語が動くのではないかとか文言のどこかがゆるいのでないか、といった要素がまるでない逸品である。
モールトライのような句を書きたい。雪の降り積もる桜を見たいような願望である。
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