天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

天皇陛下はきまじめさの象徴

2016-08-09 17:28:13 | 世相


きのう天皇陛下がビデオメッセージで語った内容は、ほぼ生前退位のお願いであった。
生前退位という言葉を憲法上お使いになれないことを知っていて配慮なさったのであるが、その主張ははっきりしていた。
「象徴の務めを果たしていくことが難しくなるのではないか」というのが国民に告げたかった心根と思われる。

終戦時の玉音放送ほどの政治性はなかったもののやはり天皇がかような発言をなさるのはそうとう政治に影響するだろう。
やはり天皇の発言はいかなる時代でも政治である、と感じた。

ぼくの住む町に丼物を商う食堂がある。
ここの旦那が真面目を絵に描いたような方でいまどき流行らない出前を雨の日でも合羽を着てやっている。本人も年を取ったが伴侶の50CCのバイクもそうとうくたびれた。けれど毎日バイクの出前をしている。
きちんと朝はやく起きて働くという日本人の典型的生き方を彼に見てぼくも手本にしている。崩れかける生真面目さを確認している。
ぼくの父も働き物であった。
働き者が当然のようにあちこちにいてこの日本を支えてきた。

天皇も市井に住む彼のような心性をお持ちになっていて、さすがに国民の象徴であられると痛感したのである。
けれど天皇の立場であるとその生真面目に職務に当ろうとするご気性がどうしても政治問題化してしまう。
置かれているお立場上。

できれば天皇はもっといい加減な、自堕落なご性格であって、私がそんな僻地の島に出向かなくてもどうということがないじゃないか、寝転がっていたい。暑いからビール飲んで涼んでいたい。
代りに皇太子か秋篠宮かに行ってもらってよ、彼らはアワビを食したいといっていたし。
などとお考えになるような性格の方であったなら事はこう面倒にならなかったのではないか。
偉い人は(天皇はそのような言われ方が好きでないかもしれぬが)下々のように几帳面で真面目でなくていいのではないだろうか。下々のような倫理観を発揮されることは親しみがありありがたいのだが面倒さを惹起してしまう。
お立場上。

私が動けなくなったら私の全行為を代行させればよろしい。私はただ寝ている。
それが今の法律にかなうことである。
そういう身の振り方もおありになるのではないか。
はっきりいうと陛下は食堂や百姓のおやじのように勤勉がすぎるのではないだろうか。
(こんなこと言ったら不敬罪に逮捕される時代がつい最近まであったな)

勤勉が過ぎると周囲が困ってしまう。
いま首相をはじめ政府がいちばん困惑しているだろう。法律ないし憲法を変更する話に発展しそうである。
けれど憲法問題はかの9条にしてもどんなに現実的でなくてもまだまだ多くの人が聖域化してしまって渋滞している。
加えて天皇の身分の問題が憲法改変事項になってしまうのは政権にとってかなり頭の痛いことだろう。

象徴の務めなんていつでも放り出していいんです、とは誰も陛下に上奏できない。
陛下自身が自堕落になってくださるのが一番いいのだが……ままならぬ。
陛下は誰よりも真面目な奇特なお方であられる。
国民の多くはそう真面目でないような気がするのだが。陛下には国民のそういうだらしないとところを象徴してくださってもいいのですが。
コメント
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