<この記事は敬称略で書かれています>
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ジルベールとは竹宮惠子の代表作の一つである「風と木の詩」の主人公の名前です。
この本を読むと、その頃夢中になって読んでいたいろいろな漫画たちへの愛情と想い出が同時に蘇ってきました。
同時にその当時にはかなりのセンセーショナルだった「風と木の詩」が生み出されるまでの、作者の葛藤と戦いの背景が分かり感慨の深いものがありました。
リアルで読んでいたので、この物語が生み出されたいった過程の話などは少々知っていました。と言うのも、竹宮惠子が掲載紙の中の近況のような所で、夢に見た話を友人に朝まで話したと言うことを語っていたからです。その夢の中の少年を主人公にした短編も予告編のように書いていましたしね。
でもその頃の世の常識では、かなりの問題作で編集部が首を縦に簡単には振らなかったのも無理はないのかなと思いました。
それと同時にちょうど同じ頃山岸凉子が描いていた「グリーンカーネーション」はどうだったんだろうかとも想いを馳せてしまいました。またプラトニックの秘められた想いであっても、サスペンスに繋がっていく大島弓子の「つぐみの森」に対しては編集さんはどのような反応をしたのだろうかと思いました。
道開く者は大変なんだなと思います。そしてあの頃の私たちは、新しい道が拓いていく目撃者でもあったのですよね。
とにかくその頃から、少女漫画は少年愛のオンパレードで描かなかった人はいないんじゃないかなと思うほどでしたよね。
長い時代のスランプと、「風と木の詩」を世に送り出そうとする努力、読みごたえがありました。
だけども読んでいて、私が竹宮惠子を知り、私の漫画との付き合いに対して大きな意味を持っていた「空が好き」のその続編を描いていた時、あまり満足のいくものが描けなかったと言うような記述があって、そう言えばあの続編にはがっかりしたなと言うような事まで思い出してしまったのでした。
だけどそれはそんな気持ちの中で描かれていた事なんだとか、あの漫画もこんな気持ちでの中で描かれていたものなんだとか、いろいろな場面が自分の気持ちと重なって非常に面白かったです。
あの頃、なんでだか萩尾望都はちゃんちゃんこを着ているようなイメージがあったのだけれど(たぶん自画像の影響)、竹宮惠子はドレスを着ているようなイメージ。それも雑誌の記事の影響です。顔をさらす機会も多く、ご自分の容姿に自信があるんだなと高校生の私は思っていました。だけどそれはサイン会などでドレスで参加せよと言ったプロデューサー的な立場の増山と言う友人の力が大きかったのだと分かりました。
現在、竹宮惠子は何をしているかと言うと・・・・
京都精華大学の学長・・・・・!
そうだったんだ !
しかし、大きな長いスランプに苦しんだ人であればこその今の立場ではないだろうかと私は思いました。力を認められてそのポジションに着いたのだとは思いますが、大きな負の経験こそが教育の現場では役に立つのですから。
そしてこの本の見どころと言うか読みどころと言う一つの点は、萩尾望都との交流と別れかも知れません。
「24年組」「大泉サロン」、意外かもしれませんが、そんな言葉を私はつい最近知りました。
あの頃、私には全く関係がなかったし興味もありませんでした。
ただ彼女たちの描く素晴らしい漫画にのめりこみ、その世界観に浸れることが幸せだったのです。
少年の名はジルベール | |
竹宮 惠子 | |
小学館 |
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newsポストセブン→『風と木の詩』の竹宮惠子 萩尾望都への嫉妬に苦しんだ日々