ヘルマン・ホイヴェルス「ホイヴェルス随想選集――人生の秋に」「春秋社」より
最上のわざ
この世の最上のわざは何?
楽しい心で年をとり、
働きたいけれども休み、
しゃべりたいけれども黙り、
失望しそうなときに希望し、
従順に、平静に、おのれの十字架をになう――――。
若者が元気いっぱいで神の道を歩むのを見ても、ねたまず、
人のために働くよりも、謙虚に人の世話になり、
弱って、もはや人のために役立たずとも、親切で柔和であること―――。
老いの重荷は神の賜物。
古びた心に、これで最期の磨きをかける。まことの故郷へ行くために―――。
おのれをこの世につなぐ鎖を少しずつ外していくのは、真にえらい仕事―――。
こうして何も出来なくなれば、それを謙遜に承諾するのだ。
神は最後に一番よい仕事を残して下さる。それは祈りだ。
手は何も出来ない。けれども最期まで合掌できる。
愛する全ての人の上に、神の恵みを求めるために。
全てをなし終えたら、臨終の床に神の声を聞くだろう。
「来よ、わが友よ、われ汝を見捨てじ」と。