to Heart

~その時がくるまでのひとりごと

レイルウェイ 運命の旅路

2014-05-11 21:04:05 | the cinema (ラ・ワ行)

原題 The Railway Man
製作年度 2013年
製作国・地域 オーストラリア/イギリス
上映時間 116分
原作 エリック・ローマクス
監督 ジョナサン・テプリツキー
出演 コリン・ファース/ニコール・キッドマン/ジェレミー・アーヴァイン/ステラン・スカルスガルド/石田淡朗/真田広之

エリック・ローマクスの自叙伝を映画化したドラマ。
第2次世界大戦中に日本軍の捕虜となったエリック(コリン・ファース)は、タイとビルマ間を走る泰緬鉄道建設のための強制労働に就かされる。彼は過酷な戦争体験に苦しみながらも、妻パトリシア(ニコール・キッドマン)と一緒に穏やかな日々を送ろうとしていた。そんなある日、エリックは当時施設にいた日本人通訳の永瀬(真田広之)が生存していると知る。

人は、憎しみを
断ち切れる。

このキャッチコピーが、鑑賞後そんなに響いてこなかった。むしろ復讐の執念が残った―…
ただ、戦争終結後何十年も痛ましい記憶に苦しんだ主人公が、
自分を拷問したかつての日本兵と対峙してから、自分を乗り越える様子に
一方側の主観で語られる物語の、「事実」がどうだったかよりも
PTSDを乗り越える為の終戦後の個人的対処に、驚きの方が個人的には強く残った物語。

ローマクスが作ったラジオの受信機が日本の憲兵にスパイ行為と誤解される辺りや、
そこからの流れは戦争時、当然の流れであったように思う。
その辺りは事実であったと思う。やるかやられるかの「戦争」なのだ。
しかし、
こういう(恐らく事実の)過去の記憶に混ぜられる現在の人物たちの演出に、やはり
意図的な制作側の底にある憎悪というか、悪意を感じてしまう。

特にフィンレイの顛末と、
直後に再会するローマクスと永瀬の下り......


この舞台となったシンガポール陥落後の泰麺鉄道に駆り出された20万人のうち、
戦争捕虜となった英国軍とオーストラリア軍は4万人以上。
なのでオーストラリアとイギリスのスタッフで制作されたのだろうが
実際にはそれ以上に多くのアジア人の捕虜が過酷な労働の犠牲になっている。

ローマクス個人の視点で描かれ、
ローマクスが(上から)赦しを与えるという描写に、
戦争捕虜の残酷な実態があったとしても、その心理描写が一方的であり、
作品全体に反日感情が満ちていると感じたのは私だけだろうか?
そもそも世界のいろんな国を植民地化してきたイギリスが!
と、この語り口(赦しを与える)にもの凄く違和感を覚えた。

日本兵の日本語が聞き取れないほどの違和感がここでも。なんちゃって日本人が登用。
なので、長瀬役の2人には心底安堵するとともに、
この役を意義をもって演じた真田さんと石田さんにはそういう意味でも感謝したい。
特に、セリフでその心情を封じられている流れでの真田さんの演技はやはり素晴らしい。
まるで日本軍の罪を一身に負っているというか、、、。

しかしそれでも、
「英国史上最悪の災難」と位置づけられるこの戦争の失敗が、今なお多くのイギリス人に根深く残っていると感じさせて
戦争による軍人としての傷を抱えて生きる長瀬を、一方的に「赦して」終わるこの編集が
日本人の知る美談としては終わらせない、執念のようなものを感じさせるといったら言い過ぎか。


最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
同感です (rose_chocolat)
2014-05-12 07:10:53
>作品全体に反日感情が満ちている
一見綺麗にさくっとまとめてはいるんですが、ちくりちくりと見えますね。
まあしょうがないのか・・・ と思いながら観てました。
そう簡単に払拭できるもんじゃありませんからね。
逆に相手国から見た日本の戦争映画も同様かもしれません。
返信する
rose_chocolatさん♪ (kira)
2014-05-12 20:42:25
まあ、これは個人の自叙伝の映画化と思えば
ああいう脚色もアリなのか?でしたが、
なんだか戦争によるPTSD以外の部分では、原作のテーマから創り出したドラマが
ちょっと違和感ありすぎでした。
再会から、和解の大事な部分で。
そこに「反日ドラマ」を喜ぶ中国人、みたいな演出を感じました。
返信する
Unknown (ボー)
2014-05-16 09:12:09
ラストの再訪で、長瀬だけが悔いるように泣いているのには、少し違和感がありましたね。
もう和解したんじゃないのかよ、って。いまだに懺悔させるのか、とも思えますね。
後日、友人にもなれた、単なる通訳さんを、あんなに憎んでいる違和感も、原作を変にアレンジしたのか?と考えれば分かりますが。
返信する
Unknown (オリーブリー)
2014-05-16 16:11:48
ジャスミンとハシゴしようかと思ったんだけど、18時に1回だけの上映で諦めた。
主婦には難しい時間帯、、、。
kiraたんの感想、チラッとななめ読みして、私には合わないかもーと思ったわ(笑)
WOWOWOでいいやっ!
って、またこの時期、寒暖アレルギーが始まって、昨日も朝からくしゃみが止まらず、映画行けなかったよぉー。(グシュ、グシュです、、、)
返信する
ボーさん♪ (kira)
2014-05-20 12:27:42
過去の戦時中のエピソードは、たぶん原作に沿って描かれていたんでしょうが、
ローマクスと長瀬が再会するのは、手紙をやり取りした後という事実を
あのように変えてしまったので、おかしな復讐モノになりましたね。
映画のラストの絵から感動が感じられなかったのはそのへんからくるムリがあったと思います。
キャストの演技が勿体ない映画と感じてしまいました。
返信する
オリーブリーたん♪ (kira)
2014-05-20 12:45:35
そうよね、早朝1回とか、夕方1回ってヒドイよね~
これはね~。過去(戦争)パートは事実だし、別にいいのよ。
現在パートがね、
「こんなに心を傷つけられたんだ。だからその恨みを・・」となるの?戦後50年経ってから?
みたいな、脚色部分がヘン。
期待したけど、このキャストでなければ救われなかった、残念感
返信する
自分の (sakurai)
2014-07-17 10:40:06
感想が奥歯に物が挟まったような感じになってしまってるのが情けないです。
kiraさん、しゅごい!スバッと言ってる。
映画通して、何ともいえない違和感を感じたのですが、それは事実だからしようがない。
まあ、あれだけ精神的に苦痛を受けた人の記憶ですから、かなりゆがめられ、一方的な面を差し引いたとしても、どうも釈然としませんでしたよね。
その辺を、役者の力量で乗り切った~といった風に感じました。
伝えるべきことですが、公平ではない。けど、それが戦争なんでしょうかね。
返信する
sakuraiさん♪ (kira)
2014-07-20 06:45:12
日本人として居心地が悪い作品かも知れないってことは織り込み済みで臨んだんですが、
戦争そのものの描写、よりも
半世紀を経て対峙するに至るふたりの描き方があまりに事実と違う、
それを事実といってしまい、その逆襲ともとれる現代パートに
制作陣の国民感情というか、怨念というか、、をひしひしと感じましたです。

英国人は頑固だと聞きますが、戦争を体験していない世代にもこの感情を植え付けるような印象がありましたです。
返信する

コメントを投稿