木のつぶやき

主に手話やろう重複の仲間たちのこと、それと新聞記事や本から感じたことを書き込んでいきます。皆様よろしくお願いします。

books21「ぼくたちの言葉を奪わないで!~ろう児の人権宣言」

2005年04月18日 22時28分08秒 | books
2005年4月15日(金)の朝日新聞夕刊に「ろう学校、手話で教えて」という記事が掲載された。
日弁連が「手話教育の充実に関する意見書」を文部科学省に送ったことについての記事だ。

■会話優先 生徒ら負担 日弁連、改善を要請

 国は手話を法的に言語と認め、手話による授業をろう学校の生徒が受けられるよう、選択の自由を保障すべきだ-。日本弁護士連合会は手話教育に関してこんな意見書をまとめ、文科省に送った。現在、ろう学校は手話での教育をほとんどしておらず、わずかに残った聴力を頼りに聞き取りや発声をさせる「聴覚□話法」が一般的。ろう児や親たちが「母語である手話で教育を受ける権利が侵されている」と03年に日弁連に人権救済を申し立てていた。
 意見書で日弁連は、これまでのろう教育について「健聴者のように話すことを最優先し、手話は日本語の習得を阻害するものとされてきた」と指摘。親子に多大な負担を強いてきたと述べた。
 そのうえで国に対し、言語として手話を使う権利を憲法で保障しているフィンランドなどのように法的に手話を言語と認めるよう提言。ろう学校には手話のできない教員が少なくなく、生徒との意思疎通に不安を抱える教員もいるため、ろう者を教員として積極的に採用することも求めた。
 また、文科省が検討している盲・ろう・養護学校の統合には「手話の伝承には手話を使う集団が不可欠」と配慮を求めた。文科省の特別支援教育課は「ろう学校では手話を禁止しているわけではないが、現状がベストだとも思っていない。意見書を受け、ろう教育の専門性をはかっていきたい]と説明している。
 一方、人権救済を申し立てた「全国ろう児をもつ親の会」の岡本みどり代表(47)は「手を動かすだけで怒られるろう学校はまだある。意見書は、申し立て内容をほぼ反映しており、ろう教育の改善に生かしていきたい」と語った。


この意見書の元となった人権救済申し立ての時に書かれたのが、この「ぼくたちの言葉を奪わないで!~ろう児の人権宣言」だ。

今回の意見書をきっかけに読み直したけれども、現在のろう教育を考える上での基礎知識として大変勉強になった。一人でも大勢の方に読んでいただきたい。
より詳しい内容については、昨年9月に発行された「ろう教育と言語権-ろう児の人権救済申し立ての全容」(全国ろう児をもつ親の会 (編集), 小嶋 勇 単行本 (2004/09) 明石書店 5,040円)を読まれたい。


<目次>
1 ろう児の人権宣言
 私たちの望むろう教育(全国ろう児をもつ親の会代表 岡本みどり)

2 ろうとは?
 1.聞こえないことって可哀そう? (龍の子学園スタッフ ろう学校教諭 榧陽子)
 2.手話とは (国立身体障害者リハビリテーションセンター学院手話通訳学教官 市田泰弘)

3 ろう教育の現状-ほんとうのところは?
 1.手話との出会い (全国ろう児をもつ親の会 鈴木英子)
 2.ろう児を育てる喜び(全国ろう児をもつ親の会 板垣岳人)
 3.ぼくはもう補聴器いらない(全国ろう児をもつ親の会 玉田さとみ)
 4.母親法の指導を受けて (全国ろう児をもつ親の会 中村成子)
 5.聴覚口話法は誰のため? (龍の子学園スタッフ 小野広祐)
 6.わが家はデフ・ファミリー -ろうとしての自覚と誇りー (全国ろう児をもつ親の会 羽柴志保)

4 今後の方向性
 1.川から大海原へ -龍の子学園の四年間- (龍の子学園代表 竹内かおり)
 2.声の否定 -カナダの学校教育におけるろう児の言語の抑圧-
    (トロント大学教育大学院教授・言語学 ジム・ カミンズ)
    (名古屋外国語大学教授・バイリンガル教育 中島和子訳)
 3.きこえない子の心の発達と人権-臨床心理学の立場から-
    (佛教大学教育学部助教授・臨床心理学,臨床心理士 河原佳子)
 4.日本のろう児にはJSL(日本手話)を (龍の子学園アドバイザー ダーレン・ エワン /中村成子訳)

5 申立趣旨
 1.ろう学校には手話がない!? (龍の子学園スタッフ 元ろう学校教諭 長谷部倫子)
 2.なぜ申立を引き受けたか (弁護士 東京弁護士会子どもの人権救済センター相談員 小嶋勇)

あとがき  (〔財〕全日本ろうあ連盟理事長 安藤豊喜)

その他
 ・もっと詳しく知っていただくために<参考文献>
 ・人権救済申立書要約
 ・全国ろう児をもつ親の会

ぼくたちの言葉を奪わないで!―ろう児の人権宣言

明石書店

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books20「中国はなぜ「反日」になったか」清水美和著(文春新書)

2005年04月18日 21時47分45秒 | books
以前「日本が知らない北朝鮮の素顔」を読んだ。(books16参照)
そして、今日「中国はなぜ「反日」になったか」を読み終わった。実はこの本は2004年8月に一度読んだ。その時はコメントを書けなかった。

2003年5月に発行されたこの本は、同年1月、「突如行われた小泉首相による3年連続の靖国神社参拝に中国は激しく反発した」ことをきっかけに書かれたようだ。
筆者は、「(1989年の第二次)天安門事件で共産主義の理想が色あせ、党の威信が大きく揺らいだことで、共産党は支配の正当性を強調するために抗日戦争の記憶を呼び起こすことが必要になったのである。「抗日戦争勝利50周年」の95年を中心に、愛国主義を鼓舞する激しいキャンペーンが行われた。」とその背景を分析している。

95年が30周年ということは2005年の今年は「抗日戦争勝利60周年」だ。

■ 、教育の失敗を強調
 天安門事件の硝煙がさめやらぬ89年9月、小平は事件を振り返って痛恨の思いを込めて語った。
 「われわれの最も大きな失敗と誤りは教育にあった。若い子供たち、青年、学生の教育が不足していた」(「小平文選』第三巻)
 二度と「暴乱」を起こさないためには、何をもって青年たちを教育するのか。ソ連・東欧の社会主義圈が崩壊し、中国も大胆に市場経済の導入を進めなければ、国際競争に勝てないばかりか体制の危機を招きかねない情勢の中で、マルクス主義はすでに輝きを失っていた。
 「私は一人の中国人として外国が中国を侵略した歴史を知っている。西側の7カ国が首脳会議で(天安門事件への)制裁を決定したというニュースを聞いた時、1900年に8カ国連合軍が中国を侵略した歴史を連想した。
 7カ国からカナダを除き、ロシアとオーストリアを加えれば当時の8カ国になる。中国の歴史を知らなくてはならない。それが中国を発展させた精神的な動力だ」(同書)
 天安門事件が小平に残した教訓こそ、90年代を通じて中国の歴史と愛国主義の教育が飛躍的に強化される出発点になる。

■ 愛国主義教育の徹底
 の後継者たるべく総書記に抜擢された江沢民にとっても、ソ連・東欧の社会主義圏が崩壊する中で、愛国主義の鼓舞は共産党政権の生き残りをかけた戦略だった。
(本書155~6頁)

 そして、
党中央の指示は、「現代の中国では愛国主義と社会主義は本質的には一致する」と宣言し、共産党の指導指針が事実上、愛国主義となったことが明確にされる。(本書158頁)

さらには、
中国指導部には89年4月、胡耀邦元総書記への追悼デモを「暴乱」と決めつけて学生の反発を買い、天安門事件を招いた苦い経験がある。(本書184頁)

本書では、終章「歴史問題はどこへ行く」で、
「反日論」に対して「嫌中感」
が広がっているとしている。
「年1回の靖国参拝」を公言するのは、構造改革の公約が実現せず内閣支持率が下降する中で、日本社会に広がった中国の圧力に対する反発をも利用し、政権の求心力を高める狙いがあるようだ。
として、
「嫌中感を利用した人気取りを続けていくのは、あまりに不毛である」と指摘している。

私の大学時代に第一次教科書問題が起きた(1982年、文部省(当時)が検定で歴史教科書の記述を「侵略」から「進出」に書き換えさせた)。2002年に亡くなられた家永三郎さんの起こした教科書裁判の支援集会や勉強会などにも参加した。

そして、いま、連日テレビで放映される中国の反日デモの様子を見て、しばし判断力を失っている自分に気付いた。自分ではそれなりに分かったつもりになっていたけれども、現実の反日デモや日本料理店への「暴動」を目の当たりにして「いったいどう受け止めたら良いのか分からない」という気持ちだ。

すくなくとも考えているのは、「嫌中感を利用した人気取り」に乗せられてしまわないようにしたいということだ。

中国はなぜ「反日」になったか

文芸春秋

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