かんじゃまのつぶやき(海の見えるチベットより)

日本一細長い四国佐田岬半島での慣れない田舎暮らしの日常や風景、
  そして感じたこと、思い出などをひとコマひとコマ

おんばふところの謎

2011-06-30 14:24:19 | 風景
この集落のはずれに、地元民が「おんばふところ」と呼ぶ場所がある。



長いことその地名のことを忘れていたが、先日地区住民がその地名を口にしたので、とても懐かしくなった。
 なにやらいわくありそうな、ミステリアスな地名である。

この場所は、半島方向に延びる尾根に当たるところで、
瀬戸内海側には谷筋が延び(最初の写真左側)、宇和海側(最初の写真右側)は急斜面である。



そんな地形の場所であるため、とても風の強い場所なのだ。
今は道路が通っているが、私が子供の頃は細い道しかなく、ここの細道を薪などを背負って通ろうものなら、強風に吹き飛ばされそうになる、という怖い思いをした記憶のある人は少なくないはずである。
だから、風が止むタイミングを見計らって一気にこの場所を通り抜けるわけである。


カーブミラーの背後が元の細道だが、
こんな風に、今は藪になっている。



【反対側から見る。電柱の右が元の細道】

そんなわけで、この奇妙な地名の由来、意味するところは何だろうか?と知りたくなった。
そこで、ネット検索してみると、類似の地名のついた場所がいくつかあることがわかった。
奈良県生駒市には、「おんばのふところ」と呼ばれる絶壁があるそうだ。
また、大阪府の飯盛山には「おんばのふところ」という洞窟があるらしい。
そして、姫路市的形町には、「おんばがふところ(媼が懐)」という石造りの古墳(梅山古墳)があるとのこと。
村人の伝承によると、6世紀初めころ、「火の雨が降る」とのうわさが流れ、その時に古墳が作られたのだとか。

大阪府池田市にも「おんばのほところ」という場所があるそうで、
ここを紹介している森栗さんという方が面白いことを書いている。
そこは竹や樹木がうっそうと生い茂った場所だそうで、
かつては、その場所を通った地元民は、ホーホーという恐ろしい声やザアーというざわめきを耳にし、狐や狸に騙された場所として語り合われたとのこと。
言わば恐怖スポットであったと。
「ほところ」とは「懐」のことで、地形的には谷の奥まった場所という意味があるそうだ。
つまり、地形的にいうと傾斜変換点になる。
「おんば」は、乳母や産婆のことだが、「おんばのふところ」を「乳母の懐」と解してはいけないようだ。
なぜなら、日本語や地名は漢字で考えてはいけないからだと。
漢字は後から連想で解釈した当て字なのだそうだ。
では、「おんば」とはどういう意味か。
その方いわく、ウブというのはブクブクと水が湧き出る音のことだそうで、
ウブ・ウバ⇒御ウバ⇒オンバなのだと。
ちなみに、幼児語で水をブブというのは、ブクブクという日本語の擬音なのだそうだ。
なるほど! 

ということで、これらの話を参考に我が地区の“おんばふところ”を整理してみる。
地形的には、谷奥の尾根部に位置しており「ふところ」に該当し、片側は急傾斜である。
つまり、地形変換点についた地名のようだ。
そして、風の強い場所であることから、ビュービューと唸りを上げるような一種の恐怖スポットであろう。
しかしながら、水が湧き出ていたかどうかが定かでない。
これに関しては今後聞き取り調査などしてみる価値がありそうだ。

ところで、この場所には一体の地蔵が安置されている。


道路ができる前は、今ある場所より10m余り離れた場所にあったそうだ。
地蔵には、「右 大久 左 二名津」とあり、道しるべのようだ。
確かにこの場所から右(今では直進方向)へ進めば大久地区、
左へ進めば二名津地区へ行くことができる。


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