サーカスな日々

サーカスが好きだ。舞台もそうだが、楽屋裏の真剣な喧騒が好きだ。日常もまたサーカスでありその楽屋裏もまことに興味深い。

メタボリズム/菊竹清訓(建築家)/83歳

2012年01月05日 | 毎日がメメント・モリ



菊竹清訓氏死去=メタボリズム提唱の建築家


時事通信 1月5日(木)14時5分配信


 建築運動「メタボリズム」の提唱者として知られる建築家の菊竹清訓(きくたけ・きよのり)氏が昨年12月26日午後4時57分、肺炎による心不全のため東京都中央区の病院で死去した。83歳だった。福岡県出身。葬儀は近親者で済ませた。後日、お別れの会を開く予定。
 早大建築学科卒。1960年、建築と都市の有機的な成長を目指す「メタボリズム」グループを黒川紀章さんらと結成し、海上都市や塔上都市などの構想を発表した。主な設計作品に沖縄海洋博のアクアポリス、江戸東京博物館、九州国立博物館など。愛知万博の総合プロデューサーも務めた。日本建築士会連合会名誉会長。国際建築アカデミー理事。

時あたかも、森美術館で「メタボリズム展」が開催されている。
1960年代、「代謝的建築論」を唱えた菊竹清訓や故人となった黒川紀章らによって、生成する未来都市の構想が次々と発表された。
それは、やはり日本では、未来都市論を正面から提起した丹下健三の流れにつながるものであったと思う。

都市はつねに膨張し、生成する。
そのことは日本の戦後復興から高度成長と軌をひとつにして、70年の大阪万博あたりまでは有効な思想であったかもしれない。
菊竹清訓の仕事としても、万博のエキスポタワーや、海洋博のアクアポリスなどの作品に結実されている。
しかし、その両方とも、現在は残されていない。
日本で、いったいそうした未来都市構想が実現可能か、といわれると、無秩序な都市計画とお役所の縄張り規制と土地私有制度の網の目とでがんじがらめになっている状況では、なかなか成立しがたいものがある。

だから、僕はメタボリズム論は、その「海洋都市論」でもなんでもいいのだが、構想ジオラマを見るのは大好きなのだが、それが個別の作品に(無理やりのように)盛り込まれている姿を見るのは、あまり好きではなかった。
菊竹清訓の仕事でも、銀座テアトルビルや江戸東京博物館やホテル・ソフィテル東京や昭和館など、個人的にはそれほど落ち着くことも出来ない。
メタボリズムグループの中では、穏健派であった槇文彦の代官山ヒルサイドテラスのように、たまたま旦那芸のような土地所有者との幸福な出会いの中で、長い時間をかけてその思想は表現されてきたのかな、と思うこともある。

「メタボリズム」に関しては、技術楽観論であったり、その修辞過剰であったり、官僚建築論と揶揄されたりもしたことがあるが、菊竹にしても黒川にしても、むしろ生命論であったり、エコテクノ思想を先取りしていたともいえる。
そういう意味では、やはりおおきな思想や宇宙論に基づいてはいる。
だから、中国やインドやブラジルのように、新しい都市をバンバンつくっていくようなところで、もう一度このメタボリズムが再評価されているのは分かるような気もするのだ。

まるで、近未来SF映画の中で、都市が自在に創造されている様に。
もちろん、今回の東北復興の新しい街づくりの設計などにも、たとえば菊竹清訓建築事務所の教え子である伊藤豊雄らによって、その思想が受け継がれるのかもしれないし、ある意味でそんな構想図も、鬱屈とした復興論議のなかで、机上論と言うことではなく、いったん白紙再構築と言う意味で(もちろん神戸震災後のプランなどとはほど遠いかたちで)見てみたいような気がする・・・合掌!

 


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2 コメント

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Unknown (夢幻亭)
2012-01-07 19:08:41
明けましておめでとうございます。
才気を感じさせる人がまた一人亡くなりましたね。
いよいよ「昭和は遠くなりにけり」という気がします。
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お久しぶりです。 (kimion20002000)
2012-01-07 20:12:09
半世紀ぶりに「メタボリズム」とはなんだったのか、という関心が浮上していますね。
東北復興のなかに、菊池さんの思想のある部分も、伝承されていくように思われます。
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