サーカスな日々

サーカスが好きだ。舞台もそうだが、楽屋裏の真剣な喧騒が好きだ。日常もまたサーカスでありその楽屋裏もまことに興味深い。

386日目「大野麥風展(東京ステーションギャラリー)」丸の内

2013年08月30日 | 姪っ子メグとお出かけ

姪っ子メグ おじさん、東京ステーションホテルもずいぶん変わったのね。
キミオン叔父 ホテル側の赤レンガの建物はもちろん辰野金吾の名建築だから、東京駅全体もそうだけど、なんとかうまく残しながらのリニューアルではあるけど。
宿泊してみたいけど、すごく高いじゃん。
一番高いロイヤルスイートは1泊80万ぐらいかな。安くて3万、だいたい数万ぐらいがメインかな。
ヒエー!おじさん、泊まったことあるの?
大昔に1回だけね。シングルの部屋があってさ、そんなに高くなかったような記憶があるけどねぇ。地方の人で東京来るのに、2回予約を入れてあげたことがあった。
レストランとかは?
それはしょっちゅう待ち合わせにも打ち合わせにも使ってたよ。バーやカフェにしてもとても気さくな感じだったけどね。1985年だったかな。中央公論から江藤淳と蓮実重彦の対談集が出たの。『オールドファッションー普通の会話』というタイトルだったかな。これがさ、東京ステーションホテルで対話してたと思うな。このホテルのこともいろいろ触れられていたと記憶している。
西武銀座ホテルもなくなっちゃったしな。東京では山の上ホテルぐらいかな、泊まりたいのは。だーれも誘ってくれないけど(笑)


ステーションギャラリーでは大野麥風展。この人は知る人ぞ知るという感じなんでしょ。
うん、オジサンも名前だけは知ってたけど、作品見るのは初めて。姫路市立美術館がコレクションしてたみたいだな。立派!
この人の仕事で特筆すべきなのは『大日本魚類画集』を手がけたことね。500部限定の木版画集、昭和12年から19年まで6期に分けて72点を刊行、その原画が大野麥風。
「原色木版二百度手摺」とあるけど、二百回重ねて摺るんだからな。浮世絵だって十版ぐらいでしょ。気が遠くなる仕事。大野麥風もすごいけど、この時代まだ優秀な彫師や摺師がいたってことだよね。今回の展示では、大野麥風の摺校正の指定紙なんかも展示されていて、プロの熱の入れ方が伝わってくる。
単純な魚図鑑じゃない。動きをすごく観察している。最初は水族館に通い詰めたらしいけど、それでは飽き足らずに潜水艇に乗り込んで海の中の生態を観察したらしいよ。「飛魚」なんていう作品でも、波の図柄が琳派風だし、全体は緻密だけどどこか垢抜けしたモダンデザインを感じさせる。
感動するのはさ、こういう仕事がひそかに戦時中になされたということ。どこか非国民みたく思われちゃうじゃない。この木版画をコレクションしていた人たちも、戦争に熱狂していた人たちとは思えないね。今回は大野麥風に先駆けて江戸期から本草学を学んで博物学的視点で描く栗本丹洲や高木春山のような先達にも感嘆したけど、もうひとつ杉浦千里の作品が何点か展示されていたのがオジサンにとってはサプライズ。
ああ、超精密というか、スーパーリアリズムの走りのような甲殻類を描く若い人ね。
この人は海外からも絶賛されているの。細密画のスーパーマンみたいな人で、円谷プロでキャラクターデザインもやっておられた。美学校で学んだけど、とくにエビとかカニの細密描写がすごい。独学で学んだけど、惜しいことに01年に39歳で急逝している。亡くなられたあと、その原画を元に図鑑集が出版されたけど、この人健在であれば、世界でもっともっと活躍した人だろう。惜しいよ。


 


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