サーカスな日々

サーカスが好きだ。舞台もそうだが、楽屋裏の真剣な喧騒が好きだ。日常もまたサーカスでありその楽屋裏もまことに興味深い。

mini review 11532「SR サイタマノラッパー2」★★★★★★★★☆☆

2011年07月25日 | 座布団シネマ:あ行

『SR サイタマノラッパー』をロングランヒットさせた入江悠監督が再びメガホンを取った、待望の青春音楽映画第2弾。今回は群馬県を舞台に、かつてヒップホップ音楽に青春をささげた女子ラップグループ再編の熱いドラマをつづる。出演者も新星の山田真歩をはじめ、『クヒオ大佐』の安藤サクラなどが集結。若者が夢を追う姿と現実のギャップをストレートに描き、観る側のボルテージも一気に高まっていく。[もっと詳しく]

シュ シュ シュ♪ のご機嫌な音楽とリズムが、耳について離れない!

テーマソングである「ワック♪ ワック♪ B-hack」のB-hackという群馬の女子5人組ラッパーのチーム名を、この作品を見ている間、ずっと「美白(びはく)」だとばっかり思っていた。
まあ、それでもいいさ。

シュ シュ シュ♪ めくられたカード

シュ シュ シュ♪ 夢が飛び出す

シュ シュ シュ♪ さあ!チェンジなんかしないわ!

うちら ハートのロイヤルストレート

フラッシュ! フラッシュ! フラッシュ!

B-hackの歌声が耳について離れない。



シュ シュ シュ♪
コンニャク屋の娘のアユム役の山田真歩がとてもいい。
埼玉から遠征してきたIKKUとTOMに出会い、伝説の群馬出身のDJであるT.K.D.=タケダ先輩に憧れラップを始めた高校生時代を思い出し、なんだかマジな顔してコンニャク配達のスクーターをぶっ飛ばす。
そして、昔の仲間に、十年ぶりにもう一度再結成しようと持ちかける。
シュ シュ シュ♪
借金だらけの旅館に縛り付けられているミッツー役の安藤サクラがいい。
正直言うと、『長い散歩』(06年)で映画デューした頃は、この作品の監督である奥田瑛二や母親のエッセイスト安藤和津の顔がちらついてあんまり好きになれなかった子だが、このところなかなかいい自然体の演技をしている。
美人じゃないが、うまくいくと、寺島しのぶのような独特の存在感を持った女優に育つかもしれない。



シュ シュ シュ♪
ヒモにまとわりつかれながらソープ嬢をやっているマミー役の桜井ふみがいい。
第一作ではS1級のAV女優であったミヒロが登場して喜ばしてくれたが、第二作では桜井ふみが天然の明るいお色気を感じさせる。
五人が踊るシーンでも、一番楽しそうに体をくねらせているのがこの娘だ。
シュ シュ シュ♪
この3人より年齢ではふたつ下の設定で、突っ込み担当走り屋クドー役の加藤真弓や、議員の箱入り娘であるビヨンセ役の増田久美子もいい。
この5人の女子ラッパーたちはそれぞれも夢を高校時代に結成したB-hackで、ご機嫌に快活に歌っている。
シュ シュ シュ♪ のリズムに乗って。

どうもどうも 未来に輝く三ツ星シェフ 目指すわたし(アユム)

まず東京に上陸し勉強 目指すホテルの女王!(ミッツー)

夢はアパレルショップの店員 それかカフェマスター または賢い奥様(マミー)

ハンパないアタシの素材は なってみせるのF1ドライバー(クドー)

外車 ダイヤ 旦那は医者 海にクルーザー 華麗に乗るんさ(ビヨンセ)

と、お気軽にはち切れんばかりに「夢」を歌っていた十代の女子ラッパーたち。
しかし十年後の現実は、ライブハウスなし!彼氏なし!金なし!未来の展望なし!の、ださい日常である。



シュ シュ シュ♪
駒木根隆介演じるIKKU。水澤伸吾演じるTOM。
前作ラストでは食堂でのふたりの掛け合いラップでおお泣きさせられたが、今回もやじさん、きたさんのように絶妙のコンビで群馬をふらついている。
河原で、女子ラッパーたちと即興バトル合戦。ケンミンショー的、目くそが鼻くそを笑うようなお下品な言葉のマシンガン。楽しくてしょうがない。地元のオッサンたちに「どこから来たんだ、オメエラは」と脅され、「さサイタマです・・・」と消え入りそうな声で逃げだすふたり。
でも法事で傷心のアユムに対して、ラップで応援を送るこいつらニートラッパーときたら・・・。



シュ シュ シュ♪
前作『SRサイタマノラッパー』で、低予算のインディペンダント映画をたちまち口コミで観客動員を果たし、数々の観客賞と共に、日本監督協会新人賞を受けた入江悠監督は、「北関東から世界へ」の宣言どおり、各国の映画祭に殴り込みをかけ(招待され)、絶賛された。
そして予告編通り、第二作は埼玉のお隣の群馬県の田舎で冴えない日常を送る女子ラッパーを登場させた。
見事である。
非モテ女子と非モテ男子の交流が、ヒップホップに乗って、ゆるーく突き刺さってくる。
東京のおしゃれで小金もちの男女たちにはせせら笑われそうな田舎モノの男女だが、当たり前のようにこの子達の正直さの方が、何倍も何倍も好感が持てる。
1シーン、1カットの手法を今回も多用しながら、前作同様、今回もラストで上手に観客を泣かす。
見事である。



シュ シュ シュ♪
次は栃木か?(そんな文字が一瞬映った)。
47都道府県シリーズと冗談めかして言っているが、本当にそうしてもらいたい。
別に、県単位のご当地にこだわる必要はない。
僕は映画を思い出しながら、ひとりで酒を飲んで酩酊していたら、次々とシリーズ企画が浮かんできた。
ひとりでニヤニヤ笑って、隣の客は気味悪かっただろう(笑)。



東日本震災のご当地で、ショーグンがライブ開催に走り回るのは、どうだろう。
彼らもニートだが、引きこもりラッパーや身障者ラッパーもいい。
元気なジーサンたちと共演もさせたいし、認知症のホームで働くのもいいかも。
体育会系ラッパーや、吃音ラッパーや、出稼ぎ外人ラッパーとの掛け合いも見てみたい。
みうらじゅんと安齋肇が、「勝手に観光協会」と称して現地に乗り込み、ご当地ソングを勝手に作ってしまうノリでもOKだ。
大阪ではぜひとも新世界で演じて欲しいし、三重では顰蹙を買うだろうが伊勢神宮に乗り込んでもらいたい。
北海道で知床湿原に迷い込んだり、沖縄でノロに占ってもらうのもどうだ。
寅さんやトラック野郎や浜ちゃんたちのシリーズが無くなって、こちとらうんざりしているところだからな。
『SRサイタマのラッパー』の武者修行は続いて欲しい。
シュ シュ シュ♪

 



 

 




 

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2 コメント

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オカピーさん (kimion20002000)
2012-06-01 00:34:31
こんにちは。
そうですね。何ヶ月も更新してないですね。

なんかリズムなんですよ。
きっかけがあればね。

DVDは毎日見ています。
あ、これちょっと書いてみたいなって、瞬間は思うんですけどね(苦笑)
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弊記事までTB&コメント有難うございました。 (オカピー)
2012-05-31 21:13:48
「寅さん」みたいな全国を回るシリーズ化というアイデアは面白そうですね。
ただ、舞台となった群馬にさえ撮影に来ていない(そうです)彼らにどの程度資金があるのかなあ(笑)。

ところで、暫く更新されていないので、ちょっと心配しておりましたが、ちょっとお疲れですか?(笑)
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