サーカスな日々

サーカスが好きだ。舞台もそうだが、楽屋裏の真剣な喧騒が好きだ。日常もまたサーカスでありその楽屋裏もまことに興味深い。

mini review 11539「アウェイク」★★★★★★☆☆☆☆

2011年09月24日 | 座布団シネマ:あ行

実際の医療現場でも起きることのあるアネセシア・アウェアネス(術中覚醒)をモチーフに、全身麻酔の手術中に意識を取り戻してしまった青年の恐怖を描くサスペンス・スリラー。意識はあるが麻酔で体の自由が利かず、激痛の中で衝撃の事実を知る主人公を、『スター・ウォーズ』シリーズのヘイデン・クリステンセンが熱演。彼の恋人に『アイズ』のジェシカ・アルバがふんするほか、『アイアンマン』のテレンス・ハワード、『愛を読むひと』のレナ・オリンら実力派が共演する。[もっと詳しく]

術中覚醒=リアル金縛りだと。なーるほど。

一度、腸にポリープが出来て、その摘出の時に部分麻酔をかけたことがある。
けれど、歯医者での抜歯以外には、部分麻酔もかけたことがなく、まして全身麻酔のことはよくわからない。
『アウェイク』という作品は、「術中覚醒」と呼ばれるらしいが、およそ700人にひとりの割合で、麻酔がかかりにくいらしく、そのことから着想されたアイデアで脚本化されている。
そういえば、酒・タバコが止められない僕は、数少ない部分麻酔の時でさえ、「あなたは麻酔がなかなか効きにくいですよ」と医者に脅かされたものだ。
昔のさまざまな拷問や処刑方法では、こういう「覚醒」させながら痛みや恐怖を与えるということが基本になっていたはずだ。
想像するだに、恐ろしいことなのだが。



ただこの「術中覚醒」という状態を、ちょっと違う角度から、僕にはとてもよく類推することができる。
それはこのblogにも何度か書いたことがあるのだが、僕は小学校半ばからおよそ10年ぐらいにわたって、毎晩のように金縛り現象につきあってきたことによる。
そのなかでも、昼間に現象する「金縛り」は、ちょうどこの映画の主人公が、麻酔されたにもかかわらず「意識」が残っていて、手術中の会話が聞こえてしまうばかりではなく、目を開けているわけではないのに、周囲の動きが見え、また幽体離脱のように手術室の全体が見え、さらにいうなら主人公が時間や空間を自在にフラッシュバックしながら、転移することができるということだ。
もちろん、術中覚醒ということは実際に珍しいことではないにしても、ここまで意識が転移するということは、滅多にあることではないのだろうが。



僕の場合の昼間の「金縛り」もある意味で似たような現象がおこる。
授業中でも、食事が終わってテレビを見ながら寝転んでいる時でも、公園のベンチに腰掛けている時でもそれは起こるのだが、あれっという間に入眠現象が生じて、しかし脳は半覚醒状態になっている。
周囲にいるものには、たんに居眠りしているようにしか見えないだろうし、そのことさえも気づかれていないかもしれない。
目は閉じているのだが、本人には周囲が明晰に了解されており、周囲の会話や行動やあるいは無機質なテレビ画面そのものでもいいのだが、ちゃんと受容しているのだ。



ただしそれらが本当に自分の周囲で起こっていることなのか、脳内で場面を類推して受容しているのか、本当は白昼夢に類した現象なのか、そのことはいまでもよくわからない。
『アウェイク』の主人公のように、「俺はここにいるぞ!」「助けてくれ!」と叫んだりするのだが、もちろん体はピクリとも動かず、実際に発語はされない。
手を差し伸べれば触れそうな距離に誰かがいても、手をどうやっても動かすことが出来ない。
そして、ときどきは「幽体離脱」のように、ふわっと浮かびあがり、その部屋や違う場所に移動したりもする。
それもおそらくは記憶のどこかを刺激しているのであろうが、「覚醒」しているこちら側からは、とてもリアルに「存在している」もうひとつの世界なのだ。



この「術中覚醒」に対して、catsnratsさんが「術中覚醒:リアル金縛り」と題して、とても
興味深いblogを書いておられる。
彼によれば、「麻酔薬以前の問題として、そもそも通常の睡眠・覚醒についてすら、仕組みがよくわかっていない。アルコールで酔っ払う機序も」とあるが、僕も同意見だ。
そして彼も引用しているが、ある
麻酔科医のレポートでとても怖ろしい例も紹介している。
「病院」という「白い巨塔」では、手術の際にも、「麻酔科医」の存在は、執刀医から較べると格段に下に見られていると聞くことがあるが、逆に手術のほとんどは危険性がないものであったとしても、「麻酔」だけはつねに一定のリスクが伴うもの、なのだということを聞いたこともある。



ヘイデン・クリステンセンとジェシカ・アルパという、美男美女を配置しながら、医療サスペンス+密室心理劇としてみた場合も、この作品はなかなか良く出来ている。
ジョビー・パルド監督の初監督作品らしいが、監督になりたかった彼はまず脚本作りを修行したようだ。
そして今回のシナリオを書き上げ、文句なくオファーが来たのを確認して、自分で監督をすることを条件にしたらしい。
テレンス・ハワードやレナ・オリンといった助演陣も、上手に観客をミスリードしている。
そして、主人公の意識下の世界はなかなか映像化するのは難しい代物だが、撮影監督は『タイタニック』でアカデミー賞を獲ったラッセル・カーペンターであり、これまた観客をうまくフェイクしている。
それにしても・・・。
やっぱり「術中覚醒」など絶対に経験したくもないし、「金縛り」も(いまでも年に1,2度は経験するが)、あんまり歓迎したくはない。

 





 

 

 


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