久しぶりの仏版フィルムノワール。ハリウッド・リメイクで水増しされませんように!
久しぶりに、フランス映画のフィルム・ノワールを堪能した。
ジャン・ギャバン、アラン・ドロン、リノ・ヴァンチェラ・・・雰囲気ありました。
それが、ゴッドファーザーに代表されるギャング映画や、エルロイの小説にあるようなハードボイルドなミステリーが次々とハリウッドで映画化され、一方で、香港ノワールがスタイリッシュになってきて。
近頃のフランス映画に出てくるフランス警視庁なんて、コミカルな映画の舞台装置に変わり果ててしまったといったら、言い過ぎか。
タクシーぶっ飛ばしたり、ヤマカシが跳躍したり、と。
ひとり、ジャン・レノは頑張っていたが、次第にオカルト色が強くなって・・・(笑)
もう、リュック・ベッソン一家にいいようにされるかしかないのか、なんてちょっと寂しく思っていたら、ふたりのおじさんが、見事なフランス版フィルム・ノワールを演じてくれた。個人的に嬉しい。
ふたりのおじさん。
ひとりは、パリ警視庁BRI(探索出動班)のレオ・ヴリンクス警視(ダニエル・オートゥイユ)。現場を大切にしてきて、仲間や部下の信望も厚く、次の長官候補に目されている。
もう一人は、同じくパリ警視庁のBRB(強盗鎮圧班)のドニ・クラン警視(ジェラルド・ドパルデュー)。権力欲が強く、誰も信じない。どんな卑劣な手段を費やしても目的に達すればいいと割り切っている。
ヴリンクスとクランは元々は友人であったが、二人が愛したカミーユ(ヴァレリア・ゴリノ)がヴリンクスと結婚したこともあり、BRIとBRBという常に対立する組織のトップ同士ということも重なって、宿敵関係となっている。
ダニエル・オートゥイユは、ルコント監督の「橋の上の娘」(99年)が印象的だが、最近ではカンヌ映画祭3冠授賞でも話題を呼んだ、ミヒャエル・ハネケ監督の「隠された記憶」(05年)のインテリ・キャスターが狂っていく演技も忘れがたい。
ジェラルド・ドパルデューはいまさら説明するまでもなく、現代フランスの最高の役者である。
で、本作では、権力志向の一匹狼であるクランが、卑劣な手段を駆使してヴリンクスを罠にはめ、獄中に7年間追いやるだけでなく、妻のカミーユも死に至らしめる。そして、自分は念願の長官の座を獲得する。
模範囚で出所してきたヴリンクスは真相をつかみ、復讐を誓うことになるのだが・・・。
この作品の驚くべきリアリティは、「実話」といっていいほど、実際にあった事件を下敷きにしていることである。
ドモニク・ロワゾーという人物が脚本参加している。このロワゾーはBRIの刑事であった。1985年パリ国立銀行を舞台にした強盗事件でギャング団が人質事件をおこしたが、この作品と同じく、BRBのボスが功をあせり独断介入、結果、刑事のひとりを死なしただけでなく、犯人には逃げられた。ボス以外の現場の警官は、懲戒免職となったが、問題のボスは出世した。
また、その頃、そのボスの下のBRBは警官汚職が相次いでいた。先の事件で殉職した刑事にも汚職刑事のいわれのない疑いがかかり、葬儀も公葬にならなかった。それだけではなく、休暇中のロワゾーにも呼び出しがかかり、聴聞に応じたところ、そのまま事情を説明されることもなく、12年の刑で投獄させられた。
BRIのNO2であった刑事が、人望も厚かったが、情報源を秘匿した罪で服役させられたという事件も下敷きとなっている。その刑事は、上品で謎に満ちた行動をとる人であったが、周囲からは尊敬を込めて「フィフィ・エレガント」と呼ばれていた。この刑事は、今回のヴリンクス警視のモデルとなっているようだ。
また、BRBの権力志向のボスが、この映画ではクラン警視のモデルとなっているといえる。
なにより、オリヴィエ・マルシャル監督自らが、もともと、警官の職業に就いていたのである。監督の元教官も、似たような事件に巻き込まれているそうだ。
「事実は小説より奇なり」というが、「あるいは裏切りという名の犬」は、何人かの元刑事・警官たちへの、怒りや鎮魂の想いが、深く刻まれているのであろう。
それにしても、この作品は、すでに、ロバート・デ・ニーロがプロデューサー役を買って出て、あのマーク・フォスター監督で、ハリウッドでリメイク版の製作が決定している。
なんか、「インファナルアフェア」のリメイク「ディパーテッド」を思い起こさなくもない。
シテ島オルフェーヴル河岸36番地が、有名なパリ警視庁の所在地であるが、ハリウッド版では、どのようになるのだろうか?
そして、オートゥイユやドパルデューの演技に漂った、フィルム・ノワールの男の色気が保たれるのだろうか。
付け加えて言えば、元娼婦のマヌー役を演じたミレーヌ・ドモンジョ(僕の記憶は少女の頃の「悲しみよこんにちは(57年)」のドモンジョだから、なんと半世紀ぶりに健在を見て歓喜!)は、誰によって、演じられるのだろうか?
デ・ニーロがドパルデューに成り代わって、憎まれ役をするのかもしれないし、アル・パチーノあたりに声をかけるのかもしれない。あるいは、ケビン・コスナーが裏切られた刑事を演じるのかもしれない。
それはそれとして、キャスティングを想像するのは、楽しみとはいえる。
同じ素材をハリウッドが料理したらどのようになるのか楽しみです。
日本の桜田門にも、こういう「実話」があるのかしら。新宿鮫は、いるかもしれないけど(笑)
本当、『ディパーテッド』を思い出します。
なんかざらついた空気感が、いいですね。
歩き方ひとつが、決まっています。
この作品、いいですよね~渋くて。
だからハリウッド映画はちょっと怖いです。
こうなったら、全く別な感じにしてもらった方がいいのかも・・・なんて。
役者はね、当然、ハリウッドの方が、揃っていますけどね。
どうなるんでしょうね(笑)
こちらの記事で、色々な情報を知れて、大変ためになりました♪
>BRIのNO2であった刑事が、人望も厚かったが、情報源を秘匿した罪で服役させられたという事件も下敷きとなっている。その刑事は、上品で謎に満ちた行動をとる人であったが、周囲からは尊敬を込めて「フィフィ・エレガント」と呼ばれていた。この刑事は、今回のヴリンクス警視のモデルと・・
そうだったんですねー!
僕も公式サイトからの受け売りですけどね。
日本では、あんまり、情報源=ディープ・スロートを刑事のトップが持っているということは、ないんじゃないでしょうか。情報調査部は別でしょうけどね。現場の中堅クラスはあるかもしれませんけど。お国柄でしょうかね。
映画館で観れなかったのが、正直悔しい。
「ディパーテッド」は
明らかにオリジナルの方がよかったので
せっかくのこの作品
リメイクにはちょっと不安が(笑
最近やたらとリメイクが目に付きますね。
たいていは面白くなくなってしまうので
よほどのことがない限り見ませんが…
日本警察もこんなことあったりするのかな~と
思うと、いろいろ警察官の関係した事件も多いし、
警察不信になりそうです (笑)