けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

新日鉄住金の徴用工問題が国際司法裁判所マターであるという論理武装

2013-08-31 23:44:29 | 政治
産経新聞読者は少数派だと思うが、私は産経新聞を購読しているので、昨日の朝刊1面には釘付けになった。ご存知の人も多いと思うが下記のニュースである。

産経ニュース2013年8月30日「韓国の戦時徴用で賠償命令確定なら政府、国際司法裁への提訴検討

このブログでも何度か取り上げた話題だが、「韓国高裁の新日鉄住金に対する判決は日本にとって朗報である!」
http://blog.goo.ne.jp/keroppy_2011/e/69d0f148bf7e4ed3e0605c04ab23ecaf
にも示した通り、日本はこの韓国の暴挙を世界にアピールするチャンスなのである。ただ、私はこのニュースを読むと同時に、お隣の韓国でのこのニュースの扱いが如何なるものであるかに興味を抱いていたので、さっそく、1日遅れでその報道の状況を調べてみた。

まず、中央日報の記事は下記の通りである。

中央日報2013年8月31日「韓国最高裁が徴用賠償確定なら…日本政府、国際司法裁提訴を検討

概ね、産経新聞の記事を忠実に紹介している感じで、ご丁寧に下記の様な解説まで加わっている。

中央日報「日本のICJ提訴検討はもう一つの側面もある。賠償に応じようとする一部の日本企業に対し、『政府がICJ提訴に動こうとしているところに単独プレーはするな』という警告のメッセージを投じたのだ。」

これは、産経新聞の下記の件の焼き直しである。

産経ニュース「政府は国際司法裁への提訴で日本企業を全面支援する姿勢を示し、企業側にも一致した対応を求めたい考えだ。」

この様に、韓国人受けするように微妙に表現を変えてはいるが、次のような指摘もなされている。

中央日報「ただ、強制徴用被害者賠償問題は独島問題とは違い、韓国内でも両論が存在する。」
中央日報「一方、03年8月に外交通商部(現外交部)は『1965年の請求権協定合意議事録に強制徴用者の部分が含まれ、政府は新聞公告を通じて75-77年に補償を実施した』と宣言した。07年には『太平洋戦争戦後国外強制動員犠牲者支援法』を作り、2次補償を行った。最高裁が今後、『賠償確定』を確定判決すれば、韓国は政府-司法府間の食い違いを解決しなければならない難題を抱えることになる。」

この様に、韓国として非常に痛いところを突かれていることを、(正面切っては言わないが)それとなく明らかにしているところは韓国の報道にしては珍しくフェアな所である。

ところで、他の新聞はどうだろうか?朝鮮日報には下記の様に記されている。

朝鮮日報2013年8月31日「強制徴用:日本政府、新日鉄住金敗訴ならICJに提訴も

こちらは文章量も少なく、余計なことは書かないという意思が透けて見える。しかし、それでもまだ記事を掲載しているのはましな方である。

韓国内では親北派と言われる反体制色の強いハンギョレ新聞では何の記載もない。内乱陰謀罪捜査で逮捕された統合進歩党イ・ソクキ議員の事件に関しては、ニューヨークタイムズの記事を引用し、「朴正熙元大統領の時代、反体制人士は現在のイ・ソクキ議員と同種の疑惑で適切な裁判も受けずに拷問され、時には処刑された。」として、朴槿恵大統領の父親が如何に非民主的な残虐な指導者かをアピールすると共に、今回、娘の朴槿恵大統領も同じ道を歩んでいると非難している。この意味では、韓国政府の立場と司法の立場の矛盾は反体制的には好都合な話題だが、反日という視点で敵に塩を送るのは好ましくないから、報道自体を黙殺するに至っている。

聯合ニュースについても確認したが、ことらにも記載がない。もっとも、韓国外交部が日本に対して慰安婦問題をめぐる協議を要請したというニュースはご丁寧にトップで大々的に扱っている。ここでは、「外交部は論評で『政府は韓日請求権協定に基づき、協議に応じるよう日本側に要求してきた。日本政府がこれに応じていないことに深い遺憾を表明する』とした」としている。つまり、これは日韓請求権協定の対象案件であり、両者の解釈の間にギャップがあるから、その第3条に従い外交的に解決を図ることを要求しているのである。

この様に色々と報道を見てきたのだが、実はこれらの中にヒントが隠されていることに気が付いた。

私も産経新聞が報道したのと同様に、国際司法裁判所に提訴するのが戦略上、有効な方法だと考えている。しかし、多分、これに対する韓国側の反論は「日韓請求権協定の第3条に『外交的な解決』を謳っているのだから、その努力をせずにいきなり国際司法裁判所に提訴するのは条約違反だ!」との主張だろう。慰安婦問題解決の訴えかけなどは、そのためのアリバイ工作の様にも取ることが出来る。もちろん、国際司法裁判所に提訴しても韓国政府はこれを拒否するだろうが、この問題が世界に知らしめられることで、韓国の法治国家といえない無茶ぶりをアピールするのは有益である。しかし、韓国から「条約に記された努力を日本がしないのは不誠実だ!」と言われると、場合によってはそれを真に受ける人も出て来るかも知れない。だから、日本政府はこの反論に対するカウンター攻撃を考えておく必要がある。

そこで、頭を冷やして考え直してみる。まず、新日鉄住金などの徴用工の賠償問題は、慰安婦問題と同様に通常考えれば日韓請求権協定の対象案件であるのは明らかであるから、韓国司法が条約を無視すると共に、韓国政府が「日本からの補償を受け取った韓国政府が、個人請求に応じる義務を負う」という立場を示している徴用工の問題に「No!」を突きつけるのは論理的な一貫性の欠如を感じる。しかし、流石に韓国の最高裁も馬鹿ではないので、これに対する論理武装を実は行っていたのである。それは中央日報の下記の部分に明記されている。

中央日報「判決の核心は、韓日請求権協定は植民支配の賠償を請求するための交渉でなく、サンフランシスコ条約(61年)に基づき両国間の財政・民事的債権・債務関係を政治的合意で解決したもので、個人請求権の消滅を認めたものではないということだ。」

もうご理解いただけただろうか?韓国最高裁は、この徴用工の問題を「韓日請求権協定の扱うべき問題であったが、その際の交渉時点で表面化していなかったから、この件に関しては請求権が消滅していない」と解釈したのではないという点がポイントなのである。つまり、慰安婦問題も徴用工問題も、そもそも「韓日請求権協定の対象ですらない」と韓国最高裁は認定したのである。だから、この請求権をあたかも消滅したかの様に扱う韓国政府に「喝」を入れたのである。

であれば、日韓請求権協定の第3条に従う必要はないから、純粋に問題があれば国際司法裁判所に提訴すれば良いのである。韓国政府が「日韓請求権協定マター」だと思うのであれば、それは韓国政府が韓国司法界になすべき説明責任が不十分であることを意味する。「日韓請求権協定マターではない」のであれば、「外交努力」を主張する韓国政府の言い分は通らない。そして、一旦、この問題が国際司法裁判所で扱われることになれば、その他の議論である慰安婦問題や竹島問題も、国際司法裁判所に任せるのが良いのではないかという流れが出来るようになる。そのためにも、日本政府には様々な論理武装を準備してもらいたい。

先日のブログに書いた「悪魔の代弁人」のアプローチは非常に重要である。言われなくてもやっているのであろうが、このための英知は広く、多くの分野の人を交えて「無敵の悪魔の代弁人」チームを作り、来たるべき日のために備えて欲しい。

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