けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

今夜、安倍総理が首相公邸に宿泊する訳は・・・?

2013-08-30 23:30:51 | 政治
エジプトを含めて、中東周辺諸国というのは何とも扱いが難しく、新聞を読んでいる側も良く分からない。イギリスでは、シリアの化学兵器の使用に対する制裁への参加を議会が拒否し、現在のところでは制裁はアメリカ単独、ないしはフランスとのアメリカの2か国の共同作戦という状況である。当然の如く、過去のイラク制裁時との比較で「熱物に懲りて、なますを吹く」状態なのだが、素人ながら少し整理しながら比較をしてみた。以下は、私が考えた相違点である。

(1)イラクの際には大量破壊兵器の存在を誰も確認していなかったが、今回は化学兵器の使用は少なくとも確実である(不確定な点は、使用したのが政府軍であるという証拠がないだけ)
(2)イラクの時には、フセインの排除がイラクの民主化に繋がるという確信をアメリカは抱いていたが、イラクの失敗に加えてアラブの春にしても、好ましからざる指導者ではあっても地域の不安定化を阻む重石として機能している現政権指導者を排除すると地域が不安定化して事態が結果的に悪化するという経験を踏んでいる(指導者の排除ではなく、指導者の勢力をある程度削ぎ、反体制派との妥協を促すことで言わば「不安定平衡点」という微妙なバランスを志向せざるを得ない現実がある)
(3)イラクの際にはBoots on the groundとして地上戦を覚悟していたが、今回は確実に地上戦は想定されず、アメリカ側の人的被害が最小化できる短期の空爆のみに限定される
(4)空爆限定が確定的だから、シリア政府軍側が攻撃対象に「人間の盾」を配置して対抗することが可能となっている
(5)イラクよりも遥かにイスラエルに近い(戦闘がイスラエルに飛び火するリスクが相対的に高い)
(6)イラク戦争では、不完全ではあるがイラクによる国連決議違反があったため、国連中心主義的な立場からでも攻撃の正当性がある程度伴っていたが、今回は国連決議も伴わず、現時点では国連側は「シリア政府軍が化学兵器を使用した」根拠を認めていないので、その正当性が怪しいものとなっている。
(7)イラク戦争で大量破壊兵器を見いだせなかった明らかな失敗の経験から、今回は世論を味方につけるには極めてハードルが高くなる傾向にある。
(8)経済情勢的にも相対的には好ましい状況にはなっていない。

とまあ、こんなところであろうか?(1)に関しては、これだけ証拠があれば、あとは状況証拠で「反政府軍が政府軍に化けて化学兵器を使用する可能性は限りなくゼロに近い」という極めて単純な命題であり、(3)の人的被害のリスク最小化というプラスの要因を加味すれば、常識的には「裁にGo!」となりそうなことが、実際には真逆の結果となっている。最も大きな要因は当然ながら(7)であり、この経験がハードルを上げることになり、10年前ならば迷わずに判断できたことを判断できなくする事態に至っている。さらに、(2)は問題が単純な1次方程式ではないことを世界に痛感させることに繋がり、明快な落としどころ、出口戦略がシナリオとして誰一人として描けないことに繋がる。(5)のリスクもあるから、「取りあえず、行ってまえ!」的な短絡的な判断は許されず、仮に失敗して裏目に出ることになったとしても、論理的な正当性(つまり「言い訳」)がせめてちゃんとできるぐらいの論理武装を各国の国民が求めるに至っている。しかし、(6)の国連決議はその言い訳の最大の錦の御旗になり得るものであるが、ロシア、中国が石油がらみの利権などを意識して国連が機能できず、とても尤もらしい言い訳をすることは半ば不可能な状態である。(8)の欧州の経済状況も争いごとを嫌う理由の一つになっている。シリアを経由する石油のパイプラインもリスクだらけで、一方でホルムズ海峡経由の石油もイランがらみでリスクは無視できず、結果的に何か悪い方に転べば景気に水を差す事態になるのは目に見えており、参戦に対するネガティブ要因に働くのは当然である。

イギリスのキャメロン首相は(1)(3)を過大評価し、(2)(6)(7)を過少評価した。日本は上述の(1)~(8)に加えて、2020年オリンピック招致問題が9月7日に控えているから、それまでの間はあまり敵を作りたくない状況にある。できればシリア空爆を先延ばしして欲しいところであるが、時間とともに(6)の正当性の欠如は益々深刻度を増しそうな気配があるし、G20で意見の対立が表ざたになると益々ハードルが高くなる。

しかし、化学兵器を使用しても制裁無しという実績は、北朝鮮も含めて誤ったメッセージを世界に発信することになるから、アメリカには「制裁しない」という選択肢は存在しない。結果、選択肢はG20前のアメリカ単独での空爆か、シリア政府が化学兵器を使った証拠を徹底的に探し出し、見つかった瞬間に間髪入れずに攻撃という選択肢だろう。

私が安倍総理ならば、アメリカのメンツを立てるためのリップサービスをする代わりに、政府軍側の使用の明白な証拠をもう少し探すことを求め、結果的には攻撃が9月7日以降となるように諭すだろう。しかし、日本以外であれば誰の目にも「オリンピック招致よりもシリア問題の方が重要だろ!」と映るので、こんな下心をオバマ大統領には伝えられそうもない。ただ、オバマ大統領も(ある程度良い意味で)ビジネスマン的な大統領だから、(2)(6)(7)を過少評価せずにもう少しリスクに備えることも期待できる。イギリス議会の判断が示されてしまった以上、「絶対に政府軍が化学兵器を使用したという証拠を見つけて、それから空爆してやる!」と世界に訴えて時間を稼ぐ(この間に、『人間の盾』情報も併せて収集して(4)にも備えることができる)というのも現実的な選択肢になりそうなのだが、実際のところはどうなるだろうか・・・。

余談であるが、安倍総理は今夜は首相公邸に宿泊するという。実は、オバマ大統領は一番信頼できるリーダの一人として安倍総理と電話で長話をしたいのではないだろうか。公邸での宿泊は、それが背景にあるのではないかと勘繰ってしまった。

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