けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

「それみたことか!」と思った時は既に遅いのである

2012-03-26 23:24:08 | 政治
「それみたことか!」と思った人は多いと思う。北朝鮮のミサイル(北は人工衛星と主張)発射予告と、それに対応した田中防衛相の「国民の心配がないように近々準備命令を出したい。その後速やかに破壊措置命令を出すことを決断したい」との発言である。

以前から、自民党を中心に田中防衛相の任命に関する異論が国会でも注目を集めていた。色々と細かな質問に対し、一部のマスコミからお遊びでクイズごっこをやっている場合ではないとのお叱りも受けたが、あの一連のやり取りで少なくとも明らかになったのは、「今の北朝鮮を相手に、この人が防衛大臣で本当に大丈夫か?」という国民の90%以上(私の勝手な推測であるが)の人が感じるであろう不安である。

確かに、北朝鮮に対して断固とした態度を取る必要があるのは明らかであるが、問題はその決断のリスクとメリットの関係である。朝鮮日報による報道の中で、「韓国政府消息筋の話として、北朝鮮で年明けに公開処刑されたと伝えられた人民武力部の副部長は、迫撃砲の着弾地点に立たせるという残虐な方法で処刑が行われた」というものがあったそうだ。ことの真偽は明らかでないが、父親(キムジョンイル)の喪中に不適切な行動をとったというだけで、「髪の毛一本も残すな!」という常軌を逸した行動をとるのだから、強がりでどう暴発するかは全く読めない。

大統領選を控えたアメリカや韓国などでは、選挙に絡んだ思惑が対北朝鮮への適切な判断を鈍らせて、そこにしっかり北朝鮮は付け込んでいる。残念なことであるが、ここ数年の対北朝鮮に関する国際的な駆け引きの中では、北朝鮮の圧勝ともいうべき結果となっている。一時期、バンコデルタアジアとの取引停止を判断した時点では米国側がポイントを上げたが、結局、制裁が解除されてもとに戻ってしまった。何も手を打たないでいる訳には行かないという判断もあるが、先日の米朝協議の結果も、双方で微妙に解釈が異なっていたり、今回のミサイル発射であっさりと約束が反古にされたりと、完全に手玉に取られた感がある。多分、北朝鮮の幹部の中には、戦略にたけた人材がいるのであろう。素人でも分かることであるが、現在のアメリカは対イラン対応で、とてもではないが2正面作戦などできない状況にある。それも、アメリカ対イランではなく、イスラエルの存在が事態を更にややこしくしている。イランが本格的に核を手にしたと判断されるときには、アメリカがどんなに自制を求めても、イスラエルは核の引き金を引くことに躊躇しない可能性が大きい。中東での本格的核戦争は世界経済にトドメを刺すことになるだろうから、それを避けるためにもアメリカは最大の迫力でイランに脅しをかけざるを得ない。北朝鮮など相手にする余裕など1ミリもないのは明らかである。こんな状況で選挙を前にすれば、「大目に見てやるから、頼むから言うことを聞いてくれ!」となるのは仕方がない。北朝鮮に足元を見られた背景は明らかである。

中国はアメリカほどではないが、10年ぶりの権力移譲のタイミングでドロドロした権力闘争が明らかになっている。ロシアですら、プーチンが大統領に返り咲くことが確定しながらも、選挙で票があくまでは楽勝ムードではなかった。選挙に勝って目に涙を浮かべたのは単なる演技だろうが、その様な演技をしなければならない様な背景があるのだろう。その中国とロシアは、今回、本気で北朝鮮に自制を求めているようであるが、それはドスの聞いた脅しではなく、「もー、いい加減にしろよな!」という諦めに似たニュアンスであろう。エスカレートさせればさせただけ、自分のカードの価値が高まるのである。本来ならば、日米韓で9手ぐらい先を読んだ詰め将棋の様な王手で迫らなければならないが、1手先の選択肢が殆どないのが現状である。

そんな中での日本である。どうしても後手後手に回ってしまうのは分かるのであるが、後手に回って、しかも誤った判断をされたのではたまらない。屈辱的ではあるが、色々な意味で、発射されたミサイルを傍観せざるを得ないのが現実であろう。田中防衛相には変な欲を出させないように、良識ある人にお守りをして頂きたい。

キムジョンウンは常軌を逸した処刑や韓国の哨戒艇を撃沈するぐらいだから、爆弾テロなどでの北によるゲリラ的な報復は容易である。例えば、原発施設でのテロが起これば、それが成功しようとしまいと、政権が吹っ飛ぶぐらいのインパクトがある。北の策略という明確な証拠さえ残さなければ、北朝鮮への軍事的な制裁などは発動できないであろうから、日本としては地団太を踏むしか手はない。一方で、キムジョンウンも足元は盤石でないから、調子づいてやりすぎると寝首を掻かれる恐怖がつきまとう。暴発は予測できないが、「やられたらやり返せ」的な言い訳を与えないことが最低限でも重要である。「ブラフ」が「ブラフ」として成立するためには、最後の引き金を引かずに相手を追い詰めるのが重要である。だから、田中防衛相が何かの勘違いでトンチンカンな命令を発動したら、それは取り返しがつかない。その責任を誰が取るのかと思うとぞっとする。

この状況で、田中防衛相の問責決議を参院で可決してしまうというのもひとつの手ではあるが、如何せん、そんなことで国会が紛糾する事態も望ましくはない。結局、八方ふさがりで「何でもっと早く手を打たなかったのか?」「何であんな人事を行なったのか?」という話になってくる。

やはり、日本は平和ボケしているのは間違いないらしい。アメリカ頼みなのは良いが、今回はアメリカにあまり多くを期待しない方が良いのも事実である。八方塞がりな現実だからこそ、せめて、閣僚にはプロ中のプロを任命して欲しいと、当然のことを改めて思い知らされた。

←人気ブログランキング応援クリックよろしくお願いいます