けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

思考実験と試行実験(大阪から始めてみよう!)

2012-03-04 17:41:02 | 政治
今朝のフジテレビの報道番組、新報道2001に橋下大阪市長と民主党古川元久国家戦略担当相、自民党の林芳正政調会長代理が出演し、議論を行なった。この中でもっとも興味を引いたのは、ベーシックインカムに関する議論である。このベーシックインカムと生活保護などの社会保障制度のあり方の議論が面白かった。

以前のブログ「セーフティ・ネットのあり方について考える」でも書いたが、現実的な財源を考えると、ベーシックインカムは実現性はほとんどなく、思考実験的な意味合いが強い。しかし、その思考実験においては全ての前提条件がとっ払われるために、過去のしがらみの影響を受けずに、白紙のキャンバスの上にゼロから制度を組み立てるならばどの様な制度が好ましいかを議論できるようになる。橋下市長も、「ベーシックインカムを導入する」という公約をするつもりは毛頭なく、番組中でもあくまでも「ベーシックインカムの導入を検討する」という表現で、その思考実験の意義を強調しているように聞こえた。

話は少し逸れるが、橋下市長が西成区での生活保護に関連した発言として「特区でも何でも良いから、大阪に任せてもらえればやる」という発言に対し、民主党と自民党の出席者の回答が対照的だった。まず、民主党の古川国家戦略担当相は「では検討する」と如何にも元官僚的な発言に終始する一方で、自民党の林政調会長代理は、「これとこれだけ(大阪市の)権限でやらせてほしいと(具体的な要望を)いただければ、すぐ法案にまとめられるよう厚生労働省と議論する」とかなり具体的な協力内容を約束していた。政治的な技術としては、素人の民主党に対し、まかりなりにも経験豊富な自民党の差を見たような気がした。自民党の歴史の中で確立された制度が族議員を産んだという背景は褒められたものではないが、政策を実行に移すための党内手続き的なルールは圧倒的に自民党の方がしっかりしている。野田総理が党首会談で「仮に51対49でも、党で決めたら、しっかりと野党の皆さんと協議をする」と手続きを経たものは党員は従うべきだという立場を示しながらも、殆どの民主党の国会議員はそうは思っていない現実があることは否めない。やはり、党内手続きを経て、与野党間協議/国会での議論を経て、採決により法案が成立し施行されるという流れを円滑に進める土俵が存在しないと、何事もうまくは行くはずがない。

さて、話を元に戻すと、西成区を中心とする特区的な考え方による大阪限定の試行実験というのは、実は非常に面白い考え方なのかも知れない。関係ないとお叱りを受けるかも知れないが、東京都の新銀行東京という取り組みの中で膨大な不良債権を産んだ経験が思い出される。不景気の時代に、東京都特有の下町の膨大な数の中小企業に対する銀行の貸し渋り、貸し剥がしの問題解決のために、行政側がリスクを負って貸し渋り対策を行うという発想は決して悪くはない。しかし、不良債権化した時の責任の所在を曖昧なままにして業務を開始してしまったために、悪意を持った利用者による借り逃げを許してしまった。膨大な損失が生まれたが、国家規模ではなく東京限定だったために、あの程度の不良債権で済んだのかも知れない。試行実験では、範囲を限定的にすることで失敗したときのリスクを最小化し、一方で限定的ながらも実行することで問題点を洗い出し、その結果を踏まえて国家規模での対応を考えるというアプローチが取れる。つまり、複雑化した問題に対して一気に厳密解を求めるのではなく、近似解から徐々に最適解に迫ることが可能になる。年金や生活保護を初めとする社会保障制度のありかたを見極めるために、折角だから大阪を利用してみても悪くないと思えた。

さて、最後であるが、今日、一番言いたいことを書いておく。ベーシックインカムの話を聞いていて、ふとあることが頭をよぎった。反則技ではあるが、ベーシックインカムは究極の少子化対策&経済対策になるような思いが頭に浮かんだ。例えば、一人当たり月7万円だとすれば、独身であれば月7万円で生活しなければならない。今時、アパートを借りるにも4~5万円はするだろうから、これでは生活レベルは低くならざるを得ない。しかし、結婚すれば14万円に一気になる。7万円のアパートを借りても、二人で7万円の生活費が残るので、まだ何とかなる。更に子供が生まれれば、生活は更に楽になる。3人も子供がいれば、働かなくても月35万円だから格段に生活は楽になる。子供を産めば産むだけ生活が楽になるという不思議な世界である。

同様のことは、高齢者間でも起きうる。一人で7万円では生活できないが、複数人でグループを組み、その集団を単位に共同で家を借りて生活するのである。本来であれば介護保険に頼らなければならない状況でも、相互扶助という形で問題を自己解決できるかも知れない。もともと高齢者と言われる人たちの中には、まだまだ元気に社会貢献できる人がいるのであるが、隣近所の小さなコミュニティが崩壊して中々助け合いができない状況になっている。ベーシックインカムは、その様な人たちを力技で結びつける求心力になる可能性があるのではないかと思った。現在の賦課方式の年金制度では「若い現役世代が高齢者世代を扶養する」という考えだが、7万円のベーシックインカムを求心力として集まった「65歳から75歳ぐらいの世代が更に高齢の世代を扶養する」という考え方が成り立つかもしれない。つまり、階級化された世代内で、相互扶助的な社会保障制度を組み立てることができるかも知れない。国や自治体は、その様な人たちが集まれる集合住宅を作り、相応の対価でグループ化された集団に賃貸するのである。別に国や自治体が全額出して建てなくても、ある条件を満たす範囲で民間で建てる住宅に融資してやれば、目標の戸数を税金を投入せずに建てることは可能かも知れない。もちろん、その様なコミュニティに加わらずに一人で生きたい人は自由に生きればよい。強制はしないが、相対的に一人暮らしの方が厳しくなるので、自己責任で判断すればよい。

さらに、この様な形で将来に対する不安が払拭(最低限度の生活は保証される)されれば、無理に将来のために貯蓄をしなくても大丈夫だという気持ちになる。そうなれば、溜め込まれた貯蓄が消費に回るという効果も生むかも知れない。ベーシックインカムの議論を嫌う人は、「働かざる者、食うべからず」を合言葉に、モラルハザード状態を恐れているように思う。確かに、制度の移行期間中にその様な者が増えることは予想できるが、景気が良くなり生活が安定するに従い、より高いレベルでの生活の安定を望むものが増えてくる。その結果、最終的にはモラルハザードとなる人は限定的となり、私の当てずっぽうの予想では今の生活保護受給者以下になるのではないかと思う。生活保護受給者が増えたのは、やはり景気の低迷と先行きの不安から、真面目に働くことがバカバカしく思えたのが大きな理由だと思うから・・・。だから、景気を改善し、将来への不安を払拭することは、モラル自体を高める副次的な効果を生むのかも知れない。

なおこのように考えると、ベーシックインカムの最も大きな効果は、少子化に歯止めをかけ出生率が爆発的に改善することで、将来の国家としての経済発展も期待でき、長期的な戦略・制度設計を立てられるようになることだと私は予想する。さすがに大坂でもベーシックインカムの試行実験はできないから、ベーシックインカムについては思考(≠試行)実験をするしかないが、考えれば考えただけ、色々なものが見えてくるような気がする。

多くの国民の英知を集結させる時かも知れない。

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