先日、たまたま少し安く入手できたチケットで、プラハ交響楽団の演奏を聴きに行ってきた。
場所は横浜みなとみらいホール
曲は
スメタナ:交響詩「わが祖国」より「モルダウ」
モーツアルト:ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調「トルコ風」
ドボルザーク:交響曲第9番ホ長調「新世界より」
席はA席
私はバレエとミュージカルを見に行くことが多い。
その場合、せっかく見るのなら、見難いともったいないので、S席しか買わない。
でも、今回はオケ。
しかも、私は演奏に関しては全くのド素人。
なので、音が聞ければOKだったので、席は安いほうがよい、と思ってA席にした。
しかも、元々オケの演奏はとても好きだったが、CDで満足、というほうだった。
昔から寝つきがとっても悪いほうだったので、いつもCDをかけて寝ていた。
そうすると、すぐに眠れた。
以前、知り合いの演奏会でも、すぐに寝てしまって、ちょっと悪かったなあ、という思いでもある。
なので、今まで、オケの演奏会はチケットを買ってまでは行くことはなかった。
それが、昨年、オーストリアへ行ってから変わった。
ザルツブルグでの夕方、たまたま時間が合ったので、ミラベル庭園を散策していた。
そしたら、そこの建物から、観光客向けに毎日開かれている演奏会の演奏が、聞こえてきた。
それが、とってもすばらしかった。
観光客向けでも、こんなにすばらしいなんてすごいなあ、と思った。
とにかく音が違う。
ちなみに私は音にも全くこだわりがないほうだった。
そんな、私でも違いが分った。
後で知ったが、やはりバイオリンなどの楽器はヨーロッパで作られたものなので、あちらの気候で演奏したほうが、よい音がでるそう。
そんなこともあり、後日、その旅行中のウイーンで、やはり観光客向けの演奏を聴きに行った。
それも、とってもよかった。
また、話は変わり、NHKBSで放送中の「アマデウス」を欠かさず見ている。
まんがの「のだめカンタービレ」も大好き。
のだめに出てくる曲とかが解説されると、「なるほどね」と、より、曲を聴くのがおもしろいから。
そのなかで、ピアニストの仲道郁代さんがウイーンに行った時、現地の方から言われたことを話していた。
それは、ウイーンのワルツは楽譜上、単なる三連符でも、実際の演奏は1番目が少し長い、ということ。
ほんとうにわずかだけれども。
それを聞いて、そっか、ウインナーワルツを聴くなら、やっぱりウイーンの方々の演奏で聞きたいなあ、と思ったことがあった。
話は今回のプラハ交響楽団に戻る。
「モルダウ」は大好きな曲。
昨年の旅行でチェコに行ったことがきっかけで、聞くようになった。
モルダウを生演奏で聞けるなら、是非、チェコ人の演奏で聞きたい。
そんな風に思っていたこともあり、行くことに決めた。
席は写真のように、なんと指揮者さんと正面から向き合う席。
つまり、演奏者の後ろの席。
そして、S席のお客さんとは向かい合わせ。
ちょっと驚いた。
演奏者の方もよく見えた。
夫はオペラグラスでさらに眺め
「やっぱり、楽譜は『モルダウ」でなく『ヴルタヴァ』って書いてあるねえ」
などと、昨年行ってたまたま知ったことを、かも通のように言っていた。
(モルダウ川は現地の方は『ヴルタヴァ』と呼ぶ)
A席だけど、私にとってはかなり特等席。
とってもよい席だった。
演奏は演奏者、指揮者が入場すると、すぐに始まった。
その瞬間、涙が「ドバーッ」と出てきた。
とにかく涙が止まらない。
演奏中なので、かばんををごそごそして、音を立てるのをはばかられた。
でも、鼻水も止まらないくらい、泣けてきた。
そしたら、隣の席の若い女性も、同じように泣いていた。
なんとなく、それを見たら私も遠慮なく泣いた。
家にモルダウのCDはあり、よく聞いている。
そんな知っている曲なのに、こんなに泣けるなんて、予想していなかった。
そして、さらにその後も指揮者の方を見ていたら、涙が止まらなくなってしまった。
(ちなみに隣の女性も同じように、「モルダウ」の後の曲でも泣いていた)
この指揮者の方、ズデニュク・マーカルさんは、とても有名な方。
でもオケど素人の私は存じ上げなかった。
ただ、ネットで色々調べていたら「のだめのドラマで、ヴィエラ先生役をされた方」と知り、生意気にも前から存じ上げている方のような気持ちになった。
演奏を聴いていて思ったこと。
昨年のチェコ旅行から帰って来てから、チェコの歴史に興味を持つようになった。
(実は私はそれまでチェコに全く興味が無かった。夫がチェコへ行きたいというので、付いて行ったのだ)
チェコの歴史はテレビのBSで、たまに放送される。
それによると、チェコは昔から占領されることが多かった。
国民の心の中も辛かったらしい。
有名な音楽家の中でも亡命された方も多い。
私の勝手な受け取りなのだが、この「モルダウ」は川の流れを曲にしたものだけど、そんなチェコの歴史の中の人々の心の中のようにも思う。
国が占領され、人々の中にいろいろな感情が起こるけれども、それでも、時間はちゃんと流れている。
悲しい、辛い、そんな感情もあり、そんな曲を聴いていると、自分の中の悲しみや辛さを受け止めてもらえたような気持ちになる。
元々、そんな風にこの曲をCDで聴いていたのだが、生演奏で、さらにその気持ちを癒してくれたような気持ちになった。
チェコの歴史を体験された、チェコ人の方々の指揮や演奏だったから、感じられたような気がした。
だから、最後の拍手は本当に感謝だった。
2番目の曲はモーツアルト。
実は昔、ピアノを習っていた時、一番長く習っていた先生は私に「ベートーベン」「モーツアルト」ばかり、指導してくれた。
私が「モーツアルト」を弾くと、「なんか、合ってるね」と家族に言われることが多かった。
でも、私は嫌いじゃないけど、好きでもなかった。
まんが・のだめの中で、モーツアルトの曲は完成された作品、とある。
クラシック大大大好きの義兄も「モーツアルトがいかにすごいか」をかなり語ってくれたこともあった。
(でも、おにいさん、すご~い、って印象派覚えているが、内容の詳細は忘れましたが…)
今回の演奏を聞かせていただいて思ったのが、モーツアルトの曲は綺麗すぎて、好きになれなかったような気がする。
確かに長調も短調も使っているのだが、どちらも綺麗すぎて、10代の私には「都合の悪いものは見ない」(ちょっと言いすぎですが)みたいな感じがしたようだ。
特に10代の私は悲しみと怒りの感情が強くて、でも、それをどこにも表現できなくて、辛かった。
それで、無意識に強く押さえ込んだため、今になって体に影響が出てきている。
人間の魂は本当は美しいもので、きっとモーツアルトの曲のようなんだろうな、と今は思う。
でも、10代の私は「悲しみや怒りの感情を感じてはいけない」ような気持ちにさせられた(というより、私が勝手にそう感じたのだが)んだと気が付いた。
だから、私は「モルダウ」が好きなような気がする。
「モルダウ」も綺麗な曲だけれども、もっと人の感情に寄り添ってくれているような気がする。
それは、チェコの歴史やスメタナの人生と関係しているような気がする。
(もちろん、映画「アマデウス」でモーツアルトの人生も楽ではなかったことも知っているのだけど)
そんな感じで、演奏会を聴いた。
意外な感動で、行って良かったなあ、と思った。