今日のうた

思いつくままに書いています

泣きなが原

2016-06-12 10:55:53 | ③好きな歌と句と詩とことばと
石牟礼道子全句集 『泣きなが原』を読む。(2015年5月30日初版1刷)
心に残る句を引用させて頂きます。


 角裂けしけもの歩みくるみぞおちを

 死におくれ死におくれして彼岸花

 祈るべき天とおもえど天の病む

 にんげんはもういやふくろうと居る

 樹液のぼる空の洞(うろ)より蛇の虹

 椿落ちて狂女がつくる泥仏

 さくらさくらわが不知火はひかり凪

 水子らの花つみ唄や母恋し

 花びらの水脈(みお)越えてゆく蛇の子が

 ポケットに含羞を入れ逝きしかな

 坂道をゆく夢亡母(はは)とはだしにて

 ひがん花 棚田の空の炎上す

 蝋梅の身じろぐほどや冬陽ざし

 うつし世の傷口いえず冬の稲妻

 稲妻やいつひらきたる夜の梅

 立春の空くろぐろと牡丹雪

 またひとつ断念したり冬椿

 存在の闇深くして椿落つ

 わが耳のねむれる貝に春の潮

 うなだれて向日葵らみなねむりいし


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