今日のうた

思いつくままに書いています

今ここにある危機とぼくの好感度について

2021-05-30 11:25:31 | ④映画、テレビ、ラジオ、動画
NHKドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」が終了した。
前にも書いたが、このドラマは「ジョゼと虎と魚たち」の渡辺あやが
脚本を担当している。この脚本が抜群にいい。
この脚本を採用したNHKがいい。
今、まさにこの時期に放送されるべき作品だ。
ドラマの舞台となっている帝都大学を日本国家に、帝都大が主催する
「次世代科学技術博覧会」をオリンピックに置き換えれば、
今の日本の状況にぴったりと当てはまる。

内容は、帝都大学の研究所から「サハライエカ」が逃げ出す。
この蚊が在来種と交わったことで、人間にアレルギー反応を
引き起こし、人によっては死に至らしめる蚊が発生する。
だが大学は「次世代科学技術博覧会」を控え、このことを
隠蔽しようとする。もし漏洩したら大学は最大規模の損失を出し、
評判がガタ落ち、文科省からの交付金は大幅に削減され、
大学は存続の危機に陥る、というのだ。
だからどんなに追及されようとはぐらかし、証拠を廃棄し、
すべて無かったことにしようとする。マスコミ対策も怠りない。
まさに真実は闇に葬られようとしていた。
感染者が次々と出ているのに、だ。
「次世代科学技術博覧会」が成功裡に終わりさえすれば・・・。

ここに松重豊演じる総長が、松坂桃李演じる何とも頼りない広報担当と、
あらゆる妨害を排して真実を公表する。
総長の言葉が素晴らしく、今の日本にとっても重要な言葉なので
引用させて頂きます。

「弟子が孔子に問うた。『もし先生が政治を志すとしたら
 何をなさいますか』
 孔子の答えは『必ずや名を正す』というものだった。
 俺の解釈は、
 病気を認めるしかない。  
 病名を付けなければ治せない。
 どんなに嫌でも、正しい名を付けなければ
 病気を重くするし、死にかけているなら
 まずそれを認めるしかない。
 どんなに嫌でもまず病名を知らなければ
 治療が始まらない。
 問題には正しい名を付けなければ
 それを克服することが出来ない。

 帝都大は過ちを犯した。
 ゆえにしかるべき責任を取らなければならない。
 蚊の流出が真実なら、どんなにつらくとも、それを
 証拠不十分と言い換えてはならないのだよ。
 「次世代科学技術博覧会」も人命には代えられない。  
 帝都大の尊厳、賠償、存在の危機を考慮しても  
 その名に恥じない選択をしなければならない。
 私は学者だ。誇りをもって孔子の教えに従うまでだ。
 
 我々がこのまま生き残って行けるとは、私にはどうしても思えない。
 なぜなら腐っているからだ。
 今や組織としては腐り切っている。。
 不都合な事実を隠蔽し、虚偽でその場をしのぎ、
 それを黙認し合う。
 何より深刻なのは、そんなことを繰り返すうちに
 我々はお互いを信じ合うことも、敬(うやま)い合うことも
 出来なくなっていることです。
 お互いに信頼も敬意も枯れ果てたような組織に、
 熾烈な競争を生き残っていく力はありません。

 もし本当にそれを望むなら
 我々は生まれ変わるしかない
 どんなに深い傷を負うとしても
 誠の現実に立ち向かう力
 そしてそれを乗り越える力
 本当の力を一から培(つちか)っていかなければならない。
 たった今から、おそらく長く厳しい闘いになる。
 これはその第一歩です。     (引用ここまで)


総長の言葉は、今まさに私たちが問われていることです。
決まってしまったことは変えられない、
動き始めたことは止められない、
どんなに状況が変わっても、どんなに反対が増えても、
終わった後に悲惨な結果が待ち受けていることが明白でも、
決めたことは突き進む。

「NO!」と言えない国民では、今も太平洋戦争の時と同じです。
原発しかり、リニアモーターカーしかり、辺野古埋立てしかり、
そしてオリンピックしかり・・・。このままでは将来、
日本はとんでもない国になってしまうだろう。
ドイツ在住の日本人医師が、「五輪変異株」について言及していた。
新型コロナウィルスは未知の病です。
今後、どういった変異を遂げていくのか、誰にも解らない。
高齢者で持病のある私は、「オリンピックには殺されたくない!」
という思いが、日に日に強くなってきている。

※いまだ監視されているようで、妨害が入りました。
 しばしブログをお休みします。
(2021年6月1日 記)

追記
「7/22 コロナ禍の五輪開催を考えるVol.5 なぜ私たちは
 反対の声をあげるのか #いまからでも五輪中止を」
            ↓
https://www.youtube.com/watch?v=OU5jo6FTyLk&t=8399s

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロング、ロングバケーション & 春との旅

2021-05-23 17:16:42 | ④映画、テレビ、ラジオ、動画
コロナで死が一歩近づいたように感じるこの頃、
借りる映画も老いを扱ったものが多くなった。
だからと言って死を真正面から扱った映画は、今は観たくない。

①ロング、ロングバケーション(原題はThe Leisure Seeker)
leisureの原義は、好きなように行動する自由が認められている。
バケーションよりもleisureの方が映画に合っている。
ハリウッド映画の名優、ヘレン・ミレンとドナルド・サザーランドが
夫婦役で出ているのでアメリカ映画と思ったら、イタリア映画だった。
全身に散らばったガンを患う妻と、アルツハイマーで記憶が飛ぶ夫。
子どもたちはそれぞれに入院と施設を進めるが、そんなものくそ食らえ
とばかりにキャンピングカーで自由に生きることを選ぶ。

自由はもちろん責任が伴う。
夫はおもらしをするし、すぐに居なくなる。
妻のことも忘れるし、昔の恋人の名前で呼んだりする。
車はパンクするし、レスキューを待っていれば強盗にだって遭う。
その度に、妻は独り言のように怒りや罵りの言葉を発する。
こうすることで、気持ちを整えているのだろう。

冒険の楽しみもいっぱいだ。知らない人と自分たち家族の
昔の幻灯(8ミリ?)を観たり、夫の教え子と出会ったり、
たまにはホテルに泊まって二人でワインやダンスを楽しんだりする。
今は手を煩わす夫だが、永い年月、夫を尊敬し愛してきたのだろう。
ヘレン・ミレンの、何が起きても笑い飛ばす強さ、軽やかさ、
賢さ、逞しさ、そして愛情深さに惚れ惚れした。
笑いながら観ているうちにしっかり心に刻まれる、まさに職人芸を
見る思いだ。ジャニス・ジョプリンの曲(Me & Bobby McGee)がいい。
自由でいたけりゃ責任が伴う。このことをしっかり心に刻み付けた。

②春との旅
こちらは日本のどこにでもいる、仕事は出来ても一人では生きられない
男の物語だ。
原作・脚本・監督小林政広。仲代達矢演じるおじいさんは漁師をして
いたが、今は足が少し不自由で、二十歳の孫の世話になっている。
妻は病死、娘は自死、孫は学校が廃校になり給食の職を失う。
孫の自立を妨げるおじいさん。見ていてイライラする。
自分の面倒を看てくれる兄弟を探して、孫とおじいさんの
旅が始まる。孫役の徳永えりがいい。

メーキングビデオの中で、監督は次のように語っている。
「スタッフをはじめ、役者にやさしくしてはダメだ。
 やさしくすると役者がダメになる」
突き放し、遠くから見守る。徳永は暗闇の中、朝まで一人で海を
見ているように命じられる。
誰も助けてはくれない。頼れるのは自分だけ。
こうした環境の中で、彼女は成長していったようだ。
いい監督に出会うことは、役者冥利に尽きるだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

雪のなまえ

2021-05-18 10:28:51 | ③好きな歌と句と詩とことばと
村山由佳著『雪のなまえ』を読む。
これまで読んできた村山作品とは、あまりにも違うことに驚いた。
タイトルからして美しい。

小5の主人公・雪乃は、教室でいじめられている少女と話をした、
ただそれだけで今度は雪乃が標的にされる。
陰湿ないじめ、関わると自分が標的にされることを怖れて、
誰も雪乃に近づかなくなる。そして不登校。

この間に生じる両親と雪乃の苦悩や確執を丁寧に描いている。
そして編集者の母は東京に残り、雪乃と父は曾祖父母が住む
長野で暮らすことになる。
慣れない農業、都会とは違う人間関係。
こうした中で人の力を借りて、3人は自分の居場所を
見つけていく。

一日にしていじめの標的にされる怖さを、
この小説を読みながら思い出した。
私が小6の時に、町の有力者の娘と同じクラスだった。
父親は教育長も兼ねていて、先生も他の生徒たちも
彼女には一目置いていた。
当時、教室の椅子に腰かける時に、後ろからそっと椅子を引き
ずっこけさせる遊びが流行っていた。
後ろの席である彼女が、私にこれをしたのだ。
怪我はなかったものの、非常に危険な遊び、いや遊びでは
すまされないものだ。
彼女に抗議したところ、次の日からクラスの子たちは私を
避けるようになった。
そして誰も私に話しかけてくる子はいなくなった。
この状態はいつまで続いたのだろう。
記憶はそこで途切れているので、そんなに長くは
続かなかったと思う。

コロナ禍で大人も子どもも、いつ明けるとも知れない、
重く垂れこめた梅雨空の下で暮らしている。
こんな状態では、いじめが増えているかもしれない。
今、いじめを受けている子も、いじめている子も、
見て見ぬふりをしている子も、その子のお父さん、お母さん、
おじいちゃん、おばあちゃん、そして私とは関係ないと
思っている子にも、この本を読んで欲しいと思った。

この本の帯には次の言葉がある。
この言葉に癒される人が必ずいると思う。

 つらいことから、どうして逃げちゃ いけないの?

自然から学んだ曾祖父の宝物のような言葉を吸収しながら、
雪乃は自分の尊厳を守りつつ居場所を見つけていく。
曾祖母の次の言葉に、涙がとまらなくなった。

 だから、謝ることなんかちっともねえにょ。いいだかい?
 雪ちゃんはね、ずいぶん大人になっただけど、まだ子どもだに。
 そんでもって、子どもはね、大人っから心配してもらうのが
 仕事だに。あんたの父やんだって母やんだって、きっと
 そう思ってるだわ。な?          (引用ここまで)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

岸辺のアルバム

2021-05-04 09:28:27 | ④映画、テレビ、ラジオ、動画
「Cats Howling」で、金平さんが「岸辺のアルバム」について語っていた。
1977年にTBSで放送された連続ドラマだが、急に観たくなった。

当時は録画機器がなく、ところどころを観ていたように思う。
印象に残っているのは、初回八千草薫がお風呂を掃除しているシーン
(今、観直すとかなりセクシーで驚く)や、一人でテレビを観ながら
鮭をおかずにお昼を食べているシーンだ。
「専業主婦って孤独だな」と、初めての子が生まれ、てんやわんやの
私には強く心に残った。

今は便利だ。1話から15話までDVDを借りることができる。
(YOU TUBEで観られます)
画質が良く、古びていないどころか内容が瑞々しい。
眼のために少しずつ借りるつもりが、面白くて次々と借りてしまった。
1974年に起きた多摩川水害が背景にあるが、その3年後に作られた。
番組の冒頭にその時のニュース映像が流れる。
そしてジャニス・イアンの「ウィル・ユー・ダンス」の曲と共に、
緑におおわれた岸辺へと変わっていく。この展開は見事だ。

原作・脚本は山田太一、プロデューサーは堀川敦厚(とんこう)。
演出は鴨下信一(2021年2月10日にお亡くなりになりました)を
はじめ3人が担当している。
川沿いに住む4人家族の物語だが、彼らの生活には常に
多摩川と小田急線がある。
川のせせらぎ、子どもたちの水遊び、釣り人、焚火をする人、
ボート遊びや土手を散策をする人。
時間により季節により、川は趣を変えてゆく。そして電車の音。
当時、私鉄沿線にマイホームを持つことは夢だった。

生活に根差した脚本が素晴らしい。手のしぐさ、視線の動き、
掃除機のコードを引っぱる時に見せる心の揺蕩(たゆた)い、
こうしたことを丁寧に描いている。
まさにドラマ作りのバイブルだと思う。
特に鴨下信一演出の時の、八千草薫の可愛らしさ、ちょっとした
仕草に垣間見える控えめな色気が好きだ。
見ているだけで爽やかな風が吹いてくるような気品。
いくつになっても若さや美貌に固執する女優もいるが、
私は八千草薫の自然体の美しさが好きだ。

その他にも24時間戦っている夫の労働環境の悪さや、会社が
立ち行かなくなると、武器の売買や人身売買のようなことにまで
手を染めようとする会社の体質。(この体質は今も変わらない。)
そして70年代は今よりも、アメリカ人による
日本人蔑視があったのだろう。
家庭内の問題だけではなく、こうした社会問題を扱っていて、
44年経った今も決して色褪せず、よくぞこんなドラマが
作れたものだと思う。

最終回は当時の多摩川本堤防決壊の映像を交え、
まるでドキュメンタリーのようで、水の力に言葉を失う。
そして渦巻く濁流の上をゆく電車。
総力をあげて本気で作ったドラマに、涙が止まらなくなった。

現在のように規律にがんじがらめにされることなく、
自由に作りたいドラマを作っているように感じた。
当時の方が、自由に良質なドラマが作れる時代だったのだろう。
人間はもしかして、退化しているのかもしれない。

最近、このドラマに出演している風吹ジュンと国広富之を観る
機会があった。風吹ジュンは映画「浅田家!」に出ていた。
この映画では黒木華が日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞を
受賞しているが、もし彼女が出演していなかったら、
風吹ジュンが優秀助演女優賞を受賞したのでは、と個人的には思った。
国広富之はNHKのドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」で
気の弱い上田教授役を演じている。

鴨下信一、堀川敦厚、八千草薫、杉浦直樹、津川雅彦、竹脇無我が
お亡くなりになっている。
44年の年月を思った。              (敬称略)

追記1
「今ここにある危機とぼくの好感度について」は、「ジョゼと虎と魚たち」
の渡辺あやが脚本を担当している。
この脚本が抜群にいい。ドラマだとここまで言えるのか!と感心してしまう。
そして毎回、あの人を想像して笑ってしまう。あと2回が楽しみだ。
(2021年5月11日 記)

追記2
2023年11月29日に山田太一さんがお亡くなりになりました。
ご冥福をお祈りいたします。
これからゆっくり山田さんが遺された作品を観ていこうと思います。
(2023年12月2日 記)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする