岩井俊二原作・脚本・監督の「チィファの手紙」を観る。
この作品は同じ題材で、日本と中国とで作られている。
日本での映画のタイトルは「ラストレター」。
あらすじは、
中学時代に妹が憧れていた姉のクラスの転校生は、
お姉ちゃんのことが好きだった。
二人は大学で再会し、交際が始まる。
だが姉はならず者と結婚してしまう。そして二人の子どもをもうけるが、
夫は蒸発し、姉は自殺する。
妹は姉の代理で中学の同窓会に出席し、姉の死を報告しようとする。
だが姉と間違えられ、スピーチまですることになる。
そこで憧れの転校生と再会し、手紙を介した物語が始まる。
脚本もさることながら、妹役のジョウ・シュンが抜群にいい。
遺された二人の子どもを見守る妹家族があったかい。
妹が、姉の息子に
「もういいから 大丈夫だから
心配ないよ きっと大丈夫だから
そんなに苦しまないで 分かってるよ
大丈夫だから 大丈夫だよ 一緒に帰ろう」 (引用ここまで)
妹の子(Aとする)は、姉の娘(Bとする)が心配で
しばらく泊まることになる。
A:「あたしね、好きな人ができた
この人好きかもって 気づいたのが12月
隣の席の男子
やっぱり この人のことが好きだって
気づいたのが1月
そのまま冬休みに入って
そのまま気持ちが膨らんで
もうどうしようもないくらい膨らんで
そうしたら だんだん怖くなってきて
冬休みが終わって教室で再会したら
絶対 顔真っ赤になる
授業中 彼が隣にいたら
絶対 顔真っ赤になる
B:「まさかそれが登校拒否の理由?
そんなこと?」
A:「言わなきゃよかった」
B:「いいじゃん そんなの大丈夫よ」
A:「だからね、わたし学校に行く
今日 睦睦(ムームー=姉の娘)の話を聞いたら
恥ずかしくなった
自分はちっちゃいなって思った
だから あたしも頑張って
学校に行こうと思った 彼に会いに」 (引用ここまで)
妹が、姉の息子に
「泣いていいのよ 泣いたらきっと楽になる
男の子も 泣いていいの
いい子ね 泣きなさい (引用ここまで)
当時の姉は、中学の卒業式で挨拶をすることになっていた。
姉のことが好きな転校生は文章を書くのが上手なので(後に作家になる)、
挨拶を見てもらうことになる。
その時の様子がフラッシュバックされる。
「本日、私達は卒業の日を迎えました
中学時代は私達にとって
おそらく生涯忘れがたい
かけがえのない想い出に なることでしょう
将来の夢は? と問われたら
私自身 まだ何も浮かびません
でも それでいいと思います
私達の未来には 無限の可能性があり
数えきれないほどの人生の
選択肢があると思います
ここにいる卒業生 一人ひとりが
今でも そしてこれからも
他の誰とも違う人生を歩むのです
夢を叶える人もいるでしょう
叶えきれない人もいるでしょう
つらいことがあった時
生きているのが苦しくなった時
きっと私達は幾度も
この場所を思い出すのでしょう
自分の夢や可能性が
まだ無限に思えた この場所を
お互いが等しく 尊く 輝いていた
この場所を」 (引用ここまで)
こんなに素晴らしい挨拶をした姉が・・・
姉の結末が分かっているだけに、涙が出た。
心が柔らかくなるような、いい映画だ。
追記1
同じ題材で同じ監督が作った日本版「チィファの手紙」を観る。
タイトルは「ラストレター」。
「チィファの手紙」は岩井監督が伸び伸び撮った様子が窺われる。
上にも書いたが、妹役のジョウ・シュンが抜群にいい。
軽妙な演技で笑わせたり、甥をいたわるシーンなど彼女なしには
この映画は考えられないほどだ。
とかく日本映画は、内容よりも客を呼べる俳優にスポットライトを
当てがちだ。俳優を引き立たせるために作られた映画ほど
つまらないものはない。
「ラストレター」の出だしは妹役の松たか子から始まる。
声が甲高い。(歳をとると高い声が苦手になる。)
美人で明るくて素敵なお母さん、もしかして彼女のために作られた
映画なのだろうかと不安になった。
以前テレビでラグビーを題材にしたドラマを観たが、
その時は夫や息子を怒ってばかりいる役だった。
怒るにしてもそれぞれ状況が違うはずだが、ワンパターンだった。
今回は明るい役だが、明るさが独りよがりで平面的なのだ。
このままドラマは進行してしまうのだろうか。
だが脇を固める役者に救われた。
木内みどり、森七菜、豊川悦司、中山美穂。
妹の子の役の森七菜は、自然な演技が際立っている。
これは天性のものなのだろうか。
「チィファの手紙」では、ならず者の夫の肩書くらいしか語られていない。
「ラストレター」では、豊川悦司によって彼の苦悩やそうせざるをえなかった
心の内を生身で知ることができた。
中山美穂は、下に書く「ラブレター」から25年が過ぎ、堂々とした
女優に成長していた。そして
最初に感じた私の危惧を吹き飛ばすようにして、映画は終わりを迎える。
だがやはり私は、「チィファの手紙」が一番好きだ。
最後に、岩井俊二監督三部作の最初に撮られた「ラブレター」を観る。
冬山が美しく印象的だ。
初々しい中山美穂が二役を演じ、ファンにはたまらないだろう。
この映画も、中山美穂のためにあるような映画だった。
それにしても、25年前も豊川悦司は相も変わらずうまい。
岩井俊二監督には伸び伸びと、外国で映画を撮って欲しいと
個人的には思った。
(2021年3月17日 記)
追記2
私は森七菜を「ラストレター」で初めて知ったのだが、
第44回 日本アカデミー賞の新人優秀賞に選ばれていた。
おめでとうございます。これからが楽しみな役者だ。
(2021年3月20日 記)
この作品は同じ題材で、日本と中国とで作られている。
日本での映画のタイトルは「ラストレター」。
あらすじは、
中学時代に妹が憧れていた姉のクラスの転校生は、
お姉ちゃんのことが好きだった。
二人は大学で再会し、交際が始まる。
だが姉はならず者と結婚してしまう。そして二人の子どもをもうけるが、
夫は蒸発し、姉は自殺する。
妹は姉の代理で中学の同窓会に出席し、姉の死を報告しようとする。
だが姉と間違えられ、スピーチまですることになる。
そこで憧れの転校生と再会し、手紙を介した物語が始まる。
脚本もさることながら、妹役のジョウ・シュンが抜群にいい。
遺された二人の子どもを見守る妹家族があったかい。
妹が、姉の息子に
「もういいから 大丈夫だから
心配ないよ きっと大丈夫だから
そんなに苦しまないで 分かってるよ
大丈夫だから 大丈夫だよ 一緒に帰ろう」 (引用ここまで)
妹の子(Aとする)は、姉の娘(Bとする)が心配で
しばらく泊まることになる。
A:「あたしね、好きな人ができた
この人好きかもって 気づいたのが12月
隣の席の男子
やっぱり この人のことが好きだって
気づいたのが1月
そのまま冬休みに入って
そのまま気持ちが膨らんで
もうどうしようもないくらい膨らんで
そうしたら だんだん怖くなってきて
冬休みが終わって教室で再会したら
絶対 顔真っ赤になる
授業中 彼が隣にいたら
絶対 顔真っ赤になる
B:「まさかそれが登校拒否の理由?
そんなこと?」
A:「言わなきゃよかった」
B:「いいじゃん そんなの大丈夫よ」
A:「だからね、わたし学校に行く
今日 睦睦(ムームー=姉の娘)の話を聞いたら
恥ずかしくなった
自分はちっちゃいなって思った
だから あたしも頑張って
学校に行こうと思った 彼に会いに」 (引用ここまで)
妹が、姉の息子に
「泣いていいのよ 泣いたらきっと楽になる
男の子も 泣いていいの
いい子ね 泣きなさい (引用ここまで)
当時の姉は、中学の卒業式で挨拶をすることになっていた。
姉のことが好きな転校生は文章を書くのが上手なので(後に作家になる)、
挨拶を見てもらうことになる。
その時の様子がフラッシュバックされる。
「本日、私達は卒業の日を迎えました
中学時代は私達にとって
おそらく生涯忘れがたい
かけがえのない想い出に なることでしょう
将来の夢は? と問われたら
私自身 まだ何も浮かびません
でも それでいいと思います
私達の未来には 無限の可能性があり
数えきれないほどの人生の
選択肢があると思います
ここにいる卒業生 一人ひとりが
今でも そしてこれからも
他の誰とも違う人生を歩むのです
夢を叶える人もいるでしょう
叶えきれない人もいるでしょう
つらいことがあった時
生きているのが苦しくなった時
きっと私達は幾度も
この場所を思い出すのでしょう
自分の夢や可能性が
まだ無限に思えた この場所を
お互いが等しく 尊く 輝いていた
この場所を」 (引用ここまで)
こんなに素晴らしい挨拶をした姉が・・・
姉の結末が分かっているだけに、涙が出た。
心が柔らかくなるような、いい映画だ。
追記1
同じ題材で同じ監督が作った日本版「チィファの手紙」を観る。
タイトルは「ラストレター」。
「チィファの手紙」は岩井監督が伸び伸び撮った様子が窺われる。
上にも書いたが、妹役のジョウ・シュンが抜群にいい。
軽妙な演技で笑わせたり、甥をいたわるシーンなど彼女なしには
この映画は考えられないほどだ。
とかく日本映画は、内容よりも客を呼べる俳優にスポットライトを
当てがちだ。俳優を引き立たせるために作られた映画ほど
つまらないものはない。
「ラストレター」の出だしは妹役の松たか子から始まる。
声が甲高い。(歳をとると高い声が苦手になる。)
美人で明るくて素敵なお母さん、もしかして彼女のために作られた
映画なのだろうかと不安になった。
以前テレビでラグビーを題材にしたドラマを観たが、
その時は夫や息子を怒ってばかりいる役だった。
怒るにしてもそれぞれ状況が違うはずだが、ワンパターンだった。
今回は明るい役だが、明るさが独りよがりで平面的なのだ。
このままドラマは進行してしまうのだろうか。
だが脇を固める役者に救われた。
木内みどり、森七菜、豊川悦司、中山美穂。
妹の子の役の森七菜は、自然な演技が際立っている。
これは天性のものなのだろうか。
「チィファの手紙」では、ならず者の夫の肩書くらいしか語られていない。
「ラストレター」では、豊川悦司によって彼の苦悩やそうせざるをえなかった
心の内を生身で知ることができた。
中山美穂は、下に書く「ラブレター」から25年が過ぎ、堂々とした
女優に成長していた。そして
最初に感じた私の危惧を吹き飛ばすようにして、映画は終わりを迎える。
だがやはり私は、「チィファの手紙」が一番好きだ。
最後に、岩井俊二監督三部作の最初に撮られた「ラブレター」を観る。
冬山が美しく印象的だ。
初々しい中山美穂が二役を演じ、ファンにはたまらないだろう。
この映画も、中山美穂のためにあるような映画だった。
それにしても、25年前も豊川悦司は相も変わらずうまい。
岩井俊二監督には伸び伸びと、外国で映画を撮って欲しいと
個人的には思った。
(2021年3月17日 記)
追記2
私は森七菜を「ラストレター」で初めて知ったのだが、
第44回 日本アカデミー賞の新人優秀賞に選ばれていた。
おめでとうございます。これからが楽しみな役者だ。
(2021年3月20日 記)