今日のうた

思いつくままに書いています

BOOTLEG

2019-12-31 16:37:14 | ⑤エッセーと物語
市民講座で短歌を始めて数か月が経った頃だと思う。
公園のメタセコイヤが葉を落とし、冬空いっぱいに細い枝を伸ばしていた。
じっと見ていると、枝全体が膨らんだり、縮んだりして深呼吸をしているように見え
次の歌を詠んだ。

 冬空に毛細血管拡げゐるメタセコイヤが深呼吸する

自分でも気に入ったので歌会に出したところ、
当時の講師から言われたのは、「こんなのは誰でも詠んでいるよ」。
酷くショックを受けた。悔しくて、思わず反論した。
「そんなことを言ったら、何も詠めなくなるではないですか」
このことは15年経った今もはっきりと覚えている。
その後、私のどんな歌をも受け入れてくれる指導者に出会って、
自分の短歌を続けることができた。

こんなことを思い出したのは、YouTubeで吉岡里帆さんと米津玄師さんの
トーク番組を聴いたからだ。
米津さんの言葉を要約すると

「過剰なオリジナル信仰があって、見たことがあるかないかといった
 過剰な二元論がある。
 見たものがないものを突き詰めると、素っ頓狂なものになってしまうことがある。
 いろんな人間のエッセンス、いろいろな人間の一部を噛みちぎりながら、
 飲み込みながら、胃の中で醸造しながら、ある種のスクラップの寄せ集めみたいな
 存在だと、自分は思っている。

 過剰なオリジナル信仰の人たちに対して、
 『あなたたちからすると偽物、本物ではないかもしれないけど、
  こんだけ美しい音楽が作れるんだぞ』、という意味を込めて
  アルバムのタイトルを〈BOOTLEG〉にした」   (引用ここまで)

〈bootleg〉は密造酒とか、海賊版の意味で、ここでは「海賊盤」の意味で使っている。
お見事!というほかはない。ますます彼が好きになった。
「普遍的な音楽、どこか懐かしい、美しい音楽」を目指しているという。
彼の声は澄んでいて、しかも艶がある。
外野の声は遮断して、更なる境地を目指して欲しい。

「灰色と青」、「loser」、「orion」、「春雷」、「amen」、
「TEENAGE RIOT」も好きだが、「Flamingo」が一番好きだ。
あの歌は彼にしか作れない。


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おそまつ川柳 ①

2019-12-28 09:02:10 | ⑮川柳
以前所属していた結社の方から歌集が送られてきた。
私が短歌を辞めて5年になるだろうか。久しぶりに読む歌集はとても新鮮だった。
ダイナミックな自然詠、自然とともに、伝統とともに生きる生活詠、達観した人生観、
そして何よりお人柄が偲ばれるユーモア溢れる歌のかずかず。
鯖好きにはよだれが出そうな装丁も素晴らしい。

読み終わって、なんだかむずむずしてきた。表現するっていいな。
そんなわけで今朝、「おそまつ川柳」を思いつきました。
おそまつなら載せるな、と言われそうですが・・・。
川柳を学んだことはありませんが、無責任にでたらめに、胸の内を詠もうと思います。

(1)新語発表 「丁寧に説明する」はしないこと 

(2)国会に案山子(かかし)を置くを閣議決定   (議員人数分の案山子は見もの)

(3)年の瀬に天の計らい 萩生田・秋元



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新聞記者

2019-12-24 09:40:22 | ④映画、テレビ、ラジオ、動画
シム・ウンギョン、松坂桃李主演の映画「新聞記者」を観る。
DVDがリリースされた直後に予約を入れたにもかかわらず、1ヶ月待たされた。
上映当時も、全国映画動員ランキングでは何度も上位を占めた。

今、こうした映画が製作され、上映され、評価されることは、喜ばしい限りだ。
商業映画である以上、細部に異なる箇所があるにはあるが、
まさにこの映画に描かれているのは、現在の日本そのものだ。
これはノンフィクション映画だと思う。

特に主演のシム・ウンギョンが素晴らしい。
演技を抑えることで、まばたき一つで多くを語っている。
感動を押し売りする日本映画の、過剰な演技に辟易していたので、
彼女はとても新鮮だ。
この映画は台湾でも韓国でも上映されるという。
日本人、いや世界中の人々が必見の映画だ。

新聞記者の父親の次の言葉が心に響いた。

「誰よりも自分を信じ、疑え」


第43回日本アカデミー賞で、「新聞記者」が3賞に選ばれた。
最優秀作品賞、最優秀主演女優賞にシム・ウンギョン、最優秀主演男優賞に松坂桃李、
優秀監督賞に藤井道人、おめでとう!
主演女優賞に呼ばれた時のシム・ウンギョンの驚き、震え、涙を見て、
日頃わすれていた大切なものを見る思いで涙が出た。
彼女は最高に美しかった。

国民の危機感がこのような映画を作り、そして評価されたことはとても嬉しい。
上にも書いたが、日本だけではなく世界中の人に観て欲しい作品だ。
そして日本の現状を知って欲しい。

松坂桃李がインタビューで語っていたが、この作品が映画化されるまでに
一転、二転、三転、四転、五転して、ようやく完成したそうだ。
その圧力の酷さは想像に余りある。
それでも貫き通した映画人の、心意気に対する作品賞でもあるのだろう。
こうした作品を日本で観ることのできる幸せを今、味わっている。

彼はまた、テレビドラマ「微笑む人」に出ていた。
この人の可能性は計り知れないものがある。
(2020年3月7日 記)

昨日の新聞(3月11日)によると、イオン系映画館などで上映中のほかに
 凱旋上映が続々決定し、3月13日からは多くの映画館で
 観られるようになるそうです。 バンザ~イ!

※「権力とメディア」は興味深い動画です。ニューヨークタイムズは素晴らしい!
  (2019年6月1日 HUFFPOST)
         ↓
https://www.huffingtonpost.jp/entry/staff-writer-movie_jp_5cf1e8a9e4b0e8085e3a4e07?fbclid=IwAR2sU6enLRTwGp6eIFVT87YEVxjyG_gp9WfctXRs80KMzYiXt-E8RVrigDQ




(画像はお借りしました)
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むらさきのスカートの女

2019-12-14 21:20:25 | ⑤エッセーと物語
今村夏子著『むらさきのスカートの女』を読む。
芥川賞受賞作ということで読んだのだが、若い読者を呼び込みたくて
ここまでレベルを下げたのだろうか。

読みやすく内容が奇天烈ではあるが、話の進行や結末に無理があるように思う。
リアリティが乏しく、話の展開についていけなかった。
村田沙耶香著『コンビニ人間』とは明らかに違う。
思い付きやおふざけで書いたように思えて、読み終わったあとに腹が立った。


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武器ではなく命の水を

2019-12-07 09:09:12 | ②一市民運動

今日(12月7日)23時から、ETV特集・選「中村哲さんをしのんで

武器ではなく命の水を」を放送します。

12月12日(木)午前0時から再放送もあります。

https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/20/2259690/

 

 

 

 以前、載せた投稿を再度載せます。

①「2016年9月7日『NHKドキュメンタリー』」

https://blog.goo.ne.jp/keichan1192/e/c2aba70f7f51979197a3344aff8b8ce9

 

 

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すべての、白いものたちの

2019-12-02 10:19:50 | ③好きな歌と句と詩とことばと
韓江(ハン・ガン)著『すべての、白いものたちの』を読む。
以前、ラジオ番組「荻上チキSession-22」で韓国文学を特集した際に、
この本を翻訳した斎藤真理子さんが初心者向けに薦めていたものだ。
韓江(ハン・ガン)さんは、ポーランドの翻訳家、ユスチナ・ナイヴァル氏に
ワルシャワに招待され、13歳の子どもと一緒に8月の終わりから晩秋までを
この地で生活することになる。

こうした知識は「あとがき」を読んで初めて知る。表紙の白いものも、後になってわかる。
削ぎ落された文章を淡々と描くことで、読者は想像を巡らしながら読むことになる。
 そして後になり、「あっ」とつじつまが合う。
歴史をふまえ、詩のひとつひとつがチェーンストーリーのようになっている。 
「白」を基調にした詩はどれも、つめたく美しく純度が高く、そして深く、
 私の心にすうっと入ってきた。
気に入った詩の中から一部を引用させて頂きます。
(好きな詩はたくさんあるのですが)

 ①白く笑う  
 白く笑う、という表現は(おそらく)彼女の母国語だけにあるものだ。
 途方に暮れたように、寂しげに、こわれやすい清らかさをたたえて笑む顔。
 または、そのような笑み。  
 あなたは白く笑っていたね。
 例えばこう書くなら、それは静かに耐えながら、笑っていようと  
 努めていた誰かだ。
 その人は白く笑ってた。  
 こう書くなら、(おそらく)それは自分の中の
 何かと決別しようとして  努めている誰かだ。

 ②白髪  
 鳥の羽毛のように髪が真っ白になったら昔の恋人に会いに行きたいと言っていた、
 中年の上司のことを彼女は思い出す。すっかり年をとって、一本残らず  
 完全な白髪になったら・・・・・・一度だけ会いたい。  
 もう一度あの人に会いたいときが来るとしたら、きっとそのとき。  
 若さもなく肉体もなく、  
 何かを熱望する時間がすでに尽きたとき。  
 邂逅のあとに残されたことはただ一つーーー体を失い、ほんとうの決別が来る、  
 そのことだけというとき。

 ③わかれ  
 しなないで しなないでおねがい。  
 言葉を知らなかったあなたが黒い目を開けて聞いたその言葉を、  
 私が唇をあけてつぶやく。それを力をこめて、白紙に書きつける。  
 それだけが最も善い別れの言葉だと信じるから。  
 死なないようにと。生きていって、と。       (引用ここまで)

   
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