047：ひまわり（梅田啓子）

トラクターに掘り起こされし広き野にひまはりの茎のあちこち刺さる

トラクターに掘り起こされし広き野にひまはりの茎あちこち刺さる （推敲）

046：設（梅田啓子）

常設の小屋にあらざる「黒テント」中野の空き地に芝居してゐき

（記憶が曖昧で中野でなかったらすみません）


＊もしかしたら「黒テント」ではなく、「赤テント」だったかもしれません。

045：楽譜（梅田啓子）

卒業式に「大地讃頌」子は弾けり楽譜はいまもピアノの上に

044：鈴（梅田啓子）

子の多き男やもめの鈴木さんいつもつけにて洋服を買ふ

043：宝くじ（梅田啓子）

松坂の年俸聞きて宝くじ買ふ気の失せぬ　茶漬けをすする

042：鱗（梅田啓子）

この花をなにゆゑ神は選びしか蛇の鱗のジギタリスの紋

041：存在（梅田啓子）

われといふ存在消したき思ひ湧くリュックを背負ひ街にまぎるる

040：粘（梅田啓子）

粘液の交はり禁止されてゐる近未来映画のに・ん・げ・ん・か・な・し

039：王子（梅田啓子）

キムタクもハンカチ王子もヨン様もタイプにあらず　柊の花

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　※柊＝ひいらぎ

038：有（梅田啓子）

われに子の有りや無しやと問ふほどに子は忙しく暮らしゐるらし

037：Ｖ（梅田啓子）

筑波嶺（つくばね）に雨降りやまずＶ字谷の岩にすべりて方位うしなふ

036：船（梅田啓子）

船頭の櫓（ろ）をこぐたびに空ゆれて渡りし沼に橋の架かれる

035：過去（梅田啓子）

pass-passed、take-tookと大声に生徒と一緒に過去形唱へき

034：岡（梅田啓子）

岡場所の女に惚れたる岡つ引き十手いぢりてため息ばかり

033：すいか（梅田啓子）

すいか柄の浴衣を着たるをみなごは打上げ花火におびえて泣きぬ


訂正

＊「すいか」→「すいくわ」