今日のうた

思いつくままに書いています

関口宏のもう一度! 近現代史

2020-10-17 09:06:35 | ②一市民運動
「関口宏のもう一度! 近現代史」は、関口宏さんと保阪正康さんとで
番組が進行します。
保阪さんの穏やかな、それでいて毅然とした解説に、歳はあまり違わないのに
父から歴史を教えてもらっているような、親しさと安心感があります。

番組の中で、保阪さんから次のようなお話がありました。
関東大震災の混乱の中、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマが流布し、
自警団によって罪のない多くの朝鮮人や中国人が殺されます。
保阪さんのお父さんはたまたまその場に居合わせ、負傷している朝鮮の人に
水を飲ませているのを警察か自警団に見つかり、
耳を激しく殴られたそうです。
そのことが原因で、生涯片方の耳が聞こえなくなってしまったそうです。

デマを簡単に信じ、敵を作って攻撃する。
こうしたことは、今の日本でも公然と行われています。


番組の放送時間等です。(BS・TBS 毎週土曜日12:00~12:54)
    ↓
https://www.bs-tbs.co.jp/culture/sekiguchikinngenndaishi/

10月10日の放送は、「治安維持法の改正」についてでした。
治安維持法は1925年(大正14年)に公布し、1928年((昭和3年)
に改正。さらに1941年(昭和16年)に全面改正されます。
議会内でも表現が曖昧でおかしいという意見がありました。

しかし1928年の改正案は、国会で否決されたにもかかわらず、
田中義一内閣が議会を無視し、「緊急勅令」という形をとって
強引に改正してしまったのです。


この法律は共産主義者を取り締まるものでしたが、
「目的遂行罪」という、表現が曖昧なままに検察の判断に
委ねられてしまいました。これにより
恣意的判断による拡大解釈が行われて、労働組合や文化的研究、
宗教活動さえも対象になっていきました。
協力者にも適用させました。
そして報道規制や罪のごまかしへと突き進んでいくことになったのです。
つまり検察の恣意的判断でどうにでもなったのです。


さらに全国都道府県に「特別高等警察(特高)」が設置されて
あらゆるものを取り締まり、際限がありませんでした。
その結果、関係のない人まで数十万人が捕まったそうです。
そして拷問による死者は90人、獄中死は1600人だったそうです。

国会を無視して強引に通してしまった法律や、
表現が曖昧のまま通してしまった法律は、
のちのち禍根を残すことになります。
これは現在にも言えることです。


次に「張作霖爆殺事件」を扱っていました。
1928年(昭和3年)、関東軍は独自の判断で張作霖を爆殺し、
犯行を中国側の仕業と報告します。
これは関東軍参謀・河本大作の謀略によるもので、張作霖を利用しながら
満州権益を広げるという政府の考えを無視した行動でした。
関東軍は、蒋介石のゲリラ隊の仕業だと報告します。
田中義一首相ら政府は、関東軍の仕業だと疑います。
そしてこの考えは世界中に広まります。

田中義一首相はこれを公表し、責任者を軍法会議にかけ、厳重に処分
することを決意し、天皇に上奏します。
ところが陸軍が動き出し、「軍のメンツが立たない」と猛反対します。
田中首相は、陸軍と対立して内閣が倒れることを恐れて弱腰になり、
国として報告書を書かなければいけないのに、それをやらなかった。
厳重処分どころか、メディアの報道規制まで行い、
「張作霖爆殺事件」と言わせず、「満州某重大事件」と報道させた。

本来なら軍法会議にかけられて死刑となるところを、
河本大作は英雄視され、東条英機にも「よくやった!」と褒め称えられた。

これが全てのボタンのかけ違いの最初で、
戦争へと突き進んでいくことになる。
  (引用ここまで)

処分を曖昧にしたりごまかしたりすることは、
それが世の中にはびこることとになり、
さらなる悲劇へと突き進んで行くことになる。
今の日本の状況は、当時の状況と酷似していると思う。


※これまでの番組の内容が本になり、10月15日より購入できるそうです。
 また抽選で30名にプレゼントされます。(番組のHPより応募できます)
 私は応募しました。番組はこれからも続きます。


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逃亡者

2020-10-13 17:30:32 | ③好きな歌と句と詩とことばと
中村文則著『逃亡者』を読む。
思い入れが強すぎると、何から書いていいか分からなくなるので、
「幻冬舎plus」のインタビューを参考にさせて頂きました。

この小説の中にも、インタビューの中にも、【公正世界仮説】という
言葉が出てくる。中村さんの言葉を引用するとこれは心理学の用語で、
「人々は社会が公正で安全であると思いたい。
なぜならそうでないと不安だから。だから、そうでないことが書かれて
いると”知りたくなかった”という感想になってしまう。それで別の理由を
つけて批判したりもする。ただ、公正世界仮説的な考えが行き過ぎると、
何があっても”お前が悪いからだ”という、個人批判の社会になって
しまうんです。今、まさにそうなっていますよね。これから世の中は
どんどんぎすぎすしていくと思いますよ」 (引用ここまで)

まさに今の日本を覆っている空気を言い当てている。
嫌なものは見たくない、聞きたくない、今の生活がこのまま続いて欲しい。
何か事が起きると、そうさせてしまったのは"自己責任"となる。
国の借金がどうなろうと、核のゴミで国が身動きできなくなろうと、
地球温暖化で将来、地上に住めなくなろうと、公文書が廃棄されようと
このままでは新型コロナウィルスが更に蔓延してしまおうと、
とりあえず今、自分に何事もなければいい。

この小説にはさまざまな問題が提起されている。
ヴェトナムから来た留学生の恋人を失うという事件をベースに、
中村さんのルーツが長崎にあるということから潜伏キリシタンや
外国人の労働問題、第二次世界大戦中の日本兵の過酷な状況や残酷な行為、
貧困問題、LGBT、ネトウヨ、差別団体によるデモ、従軍慰安婦や
南京大虐殺などの歴史問題、ジェンダー、格差、断絶、右傾化する日本、
新興宗教と政治などなど。
これらが物語の中に見事に溶け込んでいる。
そしてトランペットをめぐるスリリングな展開とミステリアスな内容に
押しつけがましさがなく、どんどん先が読みたくなる。
娯楽作品としても成功している。

特に感銘を受けた言葉は、第二次世界大戦を表わした次の言葉だ。
「この戦争は、他国を巻き込んだ日本のジトクだと思った。
 日本はジトクをしながら死んだのだった。」  (引用ここまで)
これ以上に、あの戦争の本質をずばり言い当てた言葉が
かつてあっただろうか!
しかも40代前半の作家が書いたとは・・・。私は度肝を抜かれた。
日本での彼への評価が低すぎると思う。
世界的にも、もっともっと評価されるべき作家だ。

心に響いた言葉に付箋を貼っていったら、付箋だらけになってしまった。
インタビューの最後の部分を引用させて頂きます。

「僕は政治に理想は求めていないんです。政治家は常識的なことさえできて
いればいい。新型コロナに上手く対処している台湾、韓国、ドイツは、
人権を重んじる政権という共通点がある。だから一人一人の苦しみから
政策を決められるし、普段人権に敏感な政府が自由を制限するから国民も
聞くことができる。日本は、何かあった時に、政権ではなく個人に責任を
押し付ける論客が多いのが問題。それは断絶を生むだけです。
公を擁護して、個人の責任に還元している言論人たちに考えを
改めてもらえたら、世の中がちょっとよくなると思います。
あとは基本的に、国民は政治家に文句を言いながら暮らすのが普通
だと思っています。僕は政治に興味はないけど、今の政権があまりにも
酷いからいろいろと意見を言っているだけです。
今後もそうやっていきます。」 (引用ここまで)

日本学術会議が推薦した会員候補6人が任命されなかった問題でも、
政権を擁護する意見があちこちからあがって跡を絶たない。
詭弁を弄してまで、事実を曲げてまで、仲間内で擁護し合う。
こうした狭い世界で、自分たちのいいように政治を回して来たのだな、
と改めて思った。

私はBS・TBSで「関口宏のもう一度!近現代史」を観ている。
ちょうど昭和に入ったところだが、戦争に突き進む当時の世相が
今の状況と驚くほどよく似ている。
順番が前後するが、インタビューの中でも中村さんがこのことに触れている。
引用させて頂きます。

「今の時代は、明治と昭和初期の劣化コピーが流行っていて、第二次
世界大戦の前と似ていると感じているんです。あの頃と今が呼応している、
と意識しながら書きました。従軍慰安婦のことなども、史実を書いています。
あれも、知りたくなかったという人はいるんでしょうけれど、過去を直視
しなければ改善も成長もない。ほかにも、日本軍の兵士たちは
相当残酷なことをしてしまった。兵士にもいろんなタイプがいましたが、
狂気までいかなくてもああいう死ぬか生きるか分からない状態で
聖人君子でいられなかった人は多いと思う。それはつまり、兵士個人個人
が悪いというより、戦争そのものがいけないという側面がある。
もの凄く過酷でしたから」      (引用ここまで)


楽しくないこと、面倒なことははなるべく避けていたいけれど、
これ以上、未来を悪くさせないためにも、まずは知ることだ。
(我ながらこの歳まで、何も知らずに生きて来てしまったものだと思う)
この本は楽しみながら読めて、しかも読み終わった後にたくさんのことを
学んでいたことに気づく。



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若者の7年8カ月(元SEALDsメンバー)追記

2020-10-03 09:31:30 | ②一市民運動
長くなったので追記を分けます。

追記1
川越宗一著『熱源』の中に次のような場面がある。
サハリン(樺太)に住む少数民族のギリヤークは、ロシア語が出来ないために
ロシア人に騙されて土地を奪われる。
この地に流刑になったポーランド人はこのことに憤りを感じて、
ギリヤークのための学校を作ろうとする。
その時の言葉を引用させて頂きます。

 ぼくはきみたちに、ロシア人に侮られず、
 騙されないための知識を教える。
 必要な文明の成果を自ら選び、
 血肉とできるような”人(ニグブン)”を育てる」

 ギリヤークたちに本当に必要なものは、文明国の公民として
 生きていける知識だ。
 自らの権利を知り、主張できる力だ。 

 (引用ここまで)

※時代こそ違うが、今の日本人に求められているのは、
 まさにこれだと思った。
(2020年9月27日 記)

追記2
加藤陽子さんが、日本学術会議の新会員に推薦されたにもかかわらず、
菅氏によって任命を拒否された。
加藤さんの著書『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』を読んだばかり
だったのでショックだった。
この本には中高生への5日間の集中講義が入っている。
中高生といってもかなりレベルの高い内容で、ともに本気で質問し、
それに本気で答えている。私が知らないことが多くあった。

若い人は特にこの本を読んで、加藤さんが日本学術会議の新会員に
ふさわしいのか、ふさわしくないのかを
自分で判断して欲しいと思います。
(2020年10月3日 記)

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