044:ドライ（梅田啓子）

カナダドライ・カナダドライ・カナダドライ・ひとりの部屋に気が湧き上がる

043:輝（梅田啓子）

輝いていしは一年　いまだわが黒髪なでる人のなき頃

　　　　　　　　　　　　　　　　　一年＝ひととせ

042:稲（梅田啓子）

車窓より稲光見ゆ　いずこより我に向けらるる憎悪のあらむ

車窓より稲光見ゆ　いずこより我に向けらる憎悪のあらむ　（推敲）

041:喫（梅田啓子）

自意識がとんがっていた十九歳ジャズ喫茶にて体をゆする
 

040:勉強（梅田啓子）

おいちゃんが「勉強するよ」と言ったから筍二本のつもりが三本

039:蹴（梅田啓子）

背中には届かないから膕を蹴りたい　いまだ触れないひかがみ

背中には届かないから膕を蹴りたい　いまだ触れ得ぬひかがみ

038:的（梅田啓子）

僕的には・・牧笛・墨滴・朴念仁　過渡的なのか末期的か

037:牙（梅田啓子）

ごまかしや嘘がささえる日常と気づきたる今　牙もてあます

036:右（梅田啓子）

左手に重きを持ちぬ歌しるす右手はつねに達者にあれよ

035:むしろ（梅田啓子）

白、ピンクの花むしろなす芝桜　目立たぬように後れぬように

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊後＝おく

ピンクと白の花むしろなす芝桜　目立たぬように後れぬように　（推敲）

034:聞（梅田啓子）

新聞の勧誘員が言い放つ「朝日とるなら奥さんアカでしょ」

033:滝（梅田啓子）

岩壁にシュプール描き袋田の滝は墜ちゆく深緑の間

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊間＝あい

032:詰（梅田啓子）

変わることあらねば詰ることはせず躑躅の赤がふくらみてゆく

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　※　詰＝なじ、躑躅＝つつじ

031：大人（梅田啓子）

アホかわいい女ばかりがモテるなか柴咲コウは大人のおんな

アホかわいい女ばかりがモテる世に柴咲コウは大人のおんな（推敲）