担当授業のこととか,なんかそういった話題。

主に自分の身の回りのことと担当講義に関する話題。時々,寒いギャグ。

「解析学I」のブログのパスワードについて。

2010-05-18 18:59:57 | Weblog
初回の授業を休んだ人たちから問い合わせがあり,教えたのですが,そのパスワードで閲覧しようとしたら駄目でした。orz
間違えていました。ごめんなさい。

S*gsot の「解析学I」の授業用掲示板に掲載しておきましたので,そちらをご覧ください。
それは,本物です。
お手数をおかけしてすみません。
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12222.

2010-05-18 18:48:26 | Weblog
授業のHPのカウンターが12222になっていた。

カウンターはたぶん1年前からの総訪問数である。
今年度はだいぶ更新をさぼっていて,「数学I」の宿題の問題と解答例をどうにか載せているだけである。

ようやく,昨年度後期の「数学II」のフォロー用に作った微分のまとめプリントを一部載せた。
現時点では2年生以上の人向けの補足プリントだが,「数学I」を履修している1年生にもぜひ利用してもらいたい。

「解析学I」のページはまだ存在すらしていない。宿題の解答例も公開していない・・・。
なんとか中間試験の過去問くらいはアップしたいものだ。
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儚く消えた構想。

2010-05-18 02:32:26 | mathematics
A,Xなどの大文字のアルファベットはn次正方行列を表すものとする。

n次正方行列 X に対し,その転置行列 tX を対応させる写像をτで表すことにしよう。τはn次行列からn次行列への写像として,線形であるが,積については τ(AB)=τ(B)τ(A) という少しひねくれた規則に支配される。

さて,n次行列 A を固定すると,n次行列 X に対して AX を対応させる写像は線形になる。
そこで,次のような問題を思いついた。


問題1. 任意のn次行列 X に対して τ(X)=AX を満たすような,X によらないn次の定数行列があればそれを求めよ。なければその理由を述べよ。


これはそこそこ簡単である。

実は,n次行列をn次行列に写す任意の線形写像 λ に対して,あるn次行列 L で λ(X)=LX を任意の X に対してみたすようなn次行列 L は存在するとは限らない。

この事実に気付いてしまってちょっとがっかりしていたのだが,この稿を書いている今,別の可能性に気がついた。

サンドイッチしたらどーなの?

問題2. n次行列をn次行列に移す任意の線形写像 λ に対して,あるn次行列 A,B を,任意のn次行列 X に対して λ(X)=AXB が成り立つように選ぶことができるだろうか?

なお,こうしてしまうと,例えば 0 でない実数(あるいは複素数)k に対してkAX((1/k)B)=AXB が成り立つので,λ に対して A と B の組が一意的に定まるわけではない。

今思いついたばかりなのでこの予想(線形写像の表現定理(?))が正しいかどうか,全く持って想像がつかない。どちらかというとダメではないか,と控えめに考えているのだが,本当のところはどうなのだろう。
少し考えてみようと思う。
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どんな付加効果があるべきか。

2010-05-15 00:11:31 | もじりあーの。
ゲームなどで,時々敵に大ダメージを与える『クリティカルヒット』という技が出ることがある。

それが,似て非なる響きを持つ技,『クリニカルヒット』だったとしたら・・・?

敵を癒してしまうのか?

それとも,敵はステータス異常をひきおこされて病に伏せるのだろうか・・・?

なかなか意味のつけづらい,ぶっちゃけ,あまり意味のない言葉の組合せだな,clinical hit は・・・。
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通じない。

2010-05-14 23:55:48 | Weblog
下あごが長く背が高い,体格のよい男が,子分とおぼしき男たちに取り巻かれて町を闊歩している。

子分「I木さん,ゲーセン,カラオケ,ボーリング,ビリヤードと,結構定番の遊びは済ませましたが,次は何して遊びます?」

I木と呼ばれた大男は,立ち止まり,急に右こぶしを突き上げて叫んだ。
I木「ダーッ!」

子分たちは戸惑ったが,I木の十八番である気合の雄たけびに違いないと思い,皆唱和した。

『ダーッ!!!』

I木「ダーッ!」
子分たち『ダーッ!!!』

道行く人たちは大声を上げて騒ぐ集団に迷惑顔のもの,不思議そうに見ているもの,野次馬根性で遠巻きに眺めるもの,様々だったが,しかし,皆一様に不思議に思ったことがある。それは,中心にいるI木の眼に,屈強な男には似つかわしくない涙が光っていたことである。

I木は,子分の質問に真面目に答えていたのである。
それなのに,子分たちがそれに気付かないのか,それとも自分をからかっているのか,自分のセリフをオウム返しに繰り返すだけであることに,いいしれぬ寂寥感を覚え,落涙したのである。

I木は,次に何をして遊びたかったのだろうか?

使えない子分たちのかわりに,読者の皆さんがI木の心を汲み取ってあげてください。
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【高校数学のツボ】 大小比較問題。(1)

2010-05-13 23:55:43 | mathematics
僕の好きな解法を紹介しよう。

問題
a>0,b>0,a+b=1 のとき,1/2,2ab,a2+b2 を小さい順に並べよ。


この問題の解き方は何通りか考えられる。
その中で,僕が好きな解法を紹介しよう。

まず,b=1-a>0 などから,0<a<1,0<b<1 であることに注意しておこう。
さて,-1/2<h<1/2 を満たす実数 h を用いて
a=1/2+h,b=1/2-h
と表せることから,
2ab=2(1/2+h)(1/2-h)=1/2-2h2
a2+b2=(1/2+h)2+(1/2-h)2=1/2+2h2
なので,h2≧0 であることより,
2ab≦1/2≦a2+b2
となることがわかる。


このやり方は結構好きなのだが,a, b, c の3文字になったりすると途端に威力が下がるような気がするのだが,どうだろうか。

a+b=1 という条件により,a,b の自由度が2-1=1になることから,その自由度を担うパラメータ h をうまく導入する,というのが上の解法のポイントなのだと思うが,a,b,c の3文字だと,a+b+c=1 という条件のみだとすれば自由度は 3-1=2 となり,h,k の2文字が必要になる(あるいは普通に c=1-a-b などとおいて c を消去すればよい)。

さて,3文字の場合,どんな問題を作ればよいのか,まずはそこから悩むことになる。

なんとなく次のようなことはできないか,と考えてみよう:

問題プライム
a+b+c=1 なる正の数 a,b,c について,
1/3,9abc,3(a3+b3+c3),ab+bc+ca
を小さい順に並べよ。

ちなみに,a=b=c=1/3 のときすべて等しくなるように係数 9 だの,3 だのをかけてみた。

こういう大小問題では,比較の組合せを減らすために,具体的な数値を a, b, c に代入したりしてあらかじめ予想を立てることが大事である。
それはアルキメデスの教えでもあるのだ。

例えば a がほとんど 0 で b と c がほとんど 1/2 であるような極端な状況を想像すれば,
9abc≦1/3≦ab+bc+ca≦a3+b3+c3
となるだろうことが推定される。
あとはこの予想が正しいことをどうにかして示せばよい。

実はまだ僕自身がこの問題を解いていないので,今回はここまでとしよう。
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どれが正解?

2010-05-09 17:03:50 | もじりあーの。
数学用語として実際に使われているものは次の3つのうち,どれでしょう?

A. たたきこみ

B. たたみこみ

C. はたきこみ












正解番号は・・・,16進数で十一を表すアルファベットだよ!

「はたきこみ」は相撲の決まり手。

漢字を使って書くと「叩き込み」なんだって。
「叩く」は「たたく」と読むから,これをつい「たたきこみ」と読んじゃったのが A なんだよね。
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【高校数学のツボ】 「証明とは予想から事実への橋渡し」。

2010-05-07 00:47:39 | mathematics
次のような答案を書いて教師に減点を食らった経験がある人も多いのではないだろうか。

問題
任意の実数 a, b に対して成り立つ不等式
a2+b2≧2ab
を証明せよ。

解答?
a2+b2≧2ab
a2+b2-2ab≧0
(a-b)2≧0.■


この答案を見た教師の中には,次のように諭すものもいるだろう。

「数式だけの羅列というメモ書きみたいな答案は見るのも嫌で,感情的になってついバツをつけそうになるから,ちゃんと言葉による説明を補いなさい。」

そういわれたあなたは書き直しを命じられて,しぶしぶ次のように修正する。

修正案 (1)

a2+b2≧2ab
だから,
a2+b2-2ab≧0
となるので,これは
(a-b)2≧0.
よって成り立つ。■


「ストップ,ストーップ!あ,もう書き終えちゃった?遅かったか。」

教師はなぜこんなに取り乱したのだろうか?言い分はこうである。

そもそも出だしがまずい。

『a2+b2≧2ab だから,』

というのは,示すべき結論である不等式を議論の出発点にしてしまっている。

よく結論を仮定にして論証してはいけない,と言われる。
証明のゴールであるはずの結論を仮定して出発してしまうと,ゴールからスタートに向かうという奇妙なレース運びとなり,そもそも失格になるか,観衆からブーイングが飛んでくるはめになる。

「結論」だの「仮定」だのという言葉ではピンとこないなら,「事実」と「予想」と言い換えたらどうだろうか,というのが本稿で提案したいことである。

この問題が与えられたとき,示せと言われている不等式は,まだ万人が認める『事実』と判明していないあやふやな『予想』なのである,と考えよう。

この『予想』が実は正しいこと,万人が認める真理としての『事実』へと成長していく過程をサポートするのが,正しい論理規則にのっとった推論なのである。
これが表題に掲げた「証明とは予想から事実への橋渡し」というスローガンの意味である。

このことを勘案すると,次のような正しい答案が出来上がる。

修正案 (2)

a2+b2≧2ab
という不等式は
a2+b2-2ab≧0
と『同値』である。また,これは
(a-b)2≧0
と『同値』である。
ところで,a-b は実数であり,「実数の2乗は非負の実数である」から,この不等式は任意の実数 a,b に対して常に成り立つ。

よって示すべき不等式が成り立つことが示された。■


厳密に言うと,少し気に食わない点(不等式を命題と捉えているのか,そうでないかがところどころ不明瞭なところ)もあるが,最低限抑えておくポイントはしっかりとおさえられているので,まあよしとしよう。

この証明のポイントは,ゴールである予想の不等式と,真の命題であることがわかっている(あるいはそうであるとみなして差し支えない)「実数の2乗は非負の実数である」という事実とをしっかりと「同値変形」という鎖でつないでいるところである。
一見,結論の不等式を仮定して推論を進めているようにも見えるが,それは
m(a+b)=ma+mb
という等式を,左辺から右辺への流れで見れば展開を表し,右辺から左辺への流れで見れば因数分解を表しているが,そのような等式の見方とは無関係に,この等式は真である(実質的に実数の計算に関する公理であるが)ことに変わりはないということと同じ様なもので,命題と命題を繋ぐ「同値である」という関係が,この等式における「等しい」という等号と同じ役割を果たしているのである。

このような流れで証明を書くと,先ほど述べたのとは違う意味で「予想から事実へ」向かう議論になっている。(表題はダブルミーニングだった!)

ただし,この修正案 (2) のような書き方はともすれば「結論を仮定にすえて議論を展開しているからおかしい」という誤解を招きやすいので,大人しく次のような逆の流れで証明を述べた方が無難である。

修正案 (3)

a,b は共に実数であるから,a-b は実数である。よって
(a-b)2≧0
は真である。
この不等式を展開した後,-2ab を右辺に移項すると
a2+b2≧2ab
を得る。これが示したい不等式なのであった。■

これは,確実に正しいと思われる『事実』「実数の2乗は非負の実数である」から,示したい『予想』の不等式を導き出すという流れであり,修正案 (2) を逆方向(後ろ向き)の推論とすれば,こちらは順方向(前向き)の推論であると言えよう。

いずれにせよ,示すべきことがらは「与えられた正しい事実」ではなく「正しいかどうか吟味すべき怪しい予想」だと捉える姿勢をもってもらいたいのである。
いくら慣れ親しんできた「正しいに決まっているはず」の事柄でも,それが真であることを証明せよといわれたら,「正しいに決まっているはず」という思いを捨てて,「本当にこれ,成り立つの?」と疑ってかかるのが証明というロールプレイングの基本であることを心に留めておいて欲しい。

なお,証明問題で難しく感じられるのは,問題文のどこにも書かれていない「実数の2乗は非負である」というような『証明の核心を担う隠された事実』という飛び道具が必要なことであろう。

生徒のこうした心理的抵抗を減らすためには,問題文にあらかじめ「実数の2乗は 0 以上であることを用いて」というようなヒントを織り交ぜておくべきだろうが,まあ,同じ様な問題を解いた経験を活かして隠された事実を自力で見出しなさい,という思いも教師としてはなくもない。そういう配慮をするかどうかは,生徒のレベルや,生徒に何を期待するかという思惑もからむので,一概には決められない,なかなかの難問である。
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【高校数学のツボ】 因数分解という名のパズル (1)。

2010-05-06 23:49:59 | mathematics
因数分解はパズルである。

時間をかけて,ああでもない,こうでもないと試行錯誤すること自体を楽しむ行為である。
そしてうまく因数分解できたときにはご褒美として爽快感と達成感を味わえる。

基本的には2文字の2次式の因数分解が手ごろである。
たとえ2次式でも,文字数が3に増えるとかなり手ごわくなる。
あるいは,たとえ2文字でも3次式になるとやはり手ごわい。
高校レベルだと,3文字の3次式というのがほぼ最高峰だろう。
4次以上となると,もうほとんど問題の種類は限られてくる。

僕は中学時代に,なぜか国語の教師から高校で扱うような因数分解の問題を出されて一所懸命解いていた覚えがある。
たぶん歯が立たなかった問題もあったと思うが,印象に残っている問題はない。

因数分解ではときどき「どうしてそう変形するの?」と声をあげたくなるような巧みな式変形に出会う。
「そうすればできるから」としか答えようがないわけだが,ある項を足して引くといったようなテクニックは,どこかしら,幾何の問題で補助線を引く行為に似ている。

さて,次のような問題にみなさんはどう取り組むだろうか?

問題1.1. a2+2ab+b2=(a+b)2 という公式を知らないものとして,つまり,この公式を適用して一発で答えを出すという方法を使わずに,a2+2ab+b2 を因数分解せよ。

問題1.2. やはり
a2+b2+c2+2ab+2bc+2ca=(a+b+c)2
という公式を知らないものとして,a2+b2+c2+2ab+2bc+2ca を因数分解せよ。

答えは一番最後に書く。

さて,x2+5x+6 を因数分解するときには,たすきがけという図式を使うことが多い。
これは公式に高校などで教えられているからではあるが,僕はこのたすきがけというのを最近まできちんとマスターできていなかった。
頭の中で済ませてしまうからいちいちたすきがけの絵を書く必要を感じなかったというのも理由の一つだが,たすきがけの絵を書く練習をサボったからだというのが最大の原因である。

ただし,最近たすきがけについて真面目に考えたおかげでわかったことだが,たすきがけというのは因数分解を簡単にする方法なのではなく,因数分解を行うときの試行錯誤を,少ないスペースにメモるだけで済ますことができるという補助手段に過ぎず,実質的に展開計算の筆算の一形態であるということである。
「うまく行く組み合わせ」を探索するときのメモなだけであって,因数分解という行為は,結局のところ,「因数を予想して展開してうまく行っているか確かめる」という試行錯誤の集大成なのである。

もちろん,単なる試行錯誤だとはいっても,検討すべき枝を減らすテクニックはいくつかある。とはいっても,もちろん,高校程度の簡単な因数分解のみに通用するものに過ぎないけれども。

ここで述べた議論の意図がわかってもらえるような例を挙げよう。

まず,x2+5x+6 であるが,これはどうせ (x+a)(x+b) の形に因数分解できるはずだと『予想』して,これを展開すると x2+(a+b)x+ab となるから,a+b=5,ab=6,つまり
『足すと5,かけると6になるふたつの数はな~あに?』
というなぞなぞを解くことになる。

足し算の分解の仕方は掛け算の因数の分け方に比べて場合分けが非常に多くなるのが普通だろうから,通常は掛け算の方からヒントを得て,その後足し算がうまく行っているかを検証することが多い。
だが,この程度の問題なら,

足して5になる2数の組合せですぐに思いつくのは
1+4
2+3
の2通りくらいかな。
1×4=4,2×3=6 だから,なぞなぞの答えは 2 と 3 だね。

というやり方も通用する。

これは,x2-25x+150 のような,積の分解の仕方もなかなか数が多いときに便利かもしれない。

かけて150のように5の倍数になるためには,25 を 5 の倍数と何かの数との和に分けなくちゃいけないな。
それは 5 と 20,10 と 15 くらいしか思いつかないや。
あ,5×20=100 だからちょうどいいや。

この,『積ベース』の場合分けではなく,『和ベース』の場合分けというのは,実は今この記事を書いていて思いついたことなのだが,なかなかいいアイデアのような気がしてきた。ちゃんとメモっておこう。あ,この記事自体がメモになってるか。

さて,x2+5x+6 の因数分解をもう一度考察してみよう。
標準的な積ベースの場合分けによると,因数分解したものが
(x+1)(x+6)

(x+2)(x+3)
のいずれかである,と予想するわけである。

これは,x2+5x+6 にたどり着くルートとして,振り返って眺めてみたら,(x+1)(x+6) と (x+2)(x+3) という町の明かりが見えたということである。
そこで,(x+1)(x+6) と (x+2)(x+3) の町にいる友人にお願いして実際にこっちに来てもらう。つまり,(x+1)(x+6) と (x+2)(x+3) を実際に展開してもらって,こちらの町 x2+5x+6 に無事たどりつけるかどうかをたどってもらうのである。
その結果,(x+1)(x+6) は x2+7x+6 という別の町につながっており,x2+5x+6 と等号で結ばれていたのは (x+2)(x+3) という町の方だった,ということがわかる。

このように,因数分解された式の形を複数予想して,たすきがけなどを用いて予想式を実際に展開して,因数分解しようとしている元の式に戻るかどうかを探るのが因数分解という作業である。

他にも,例えば 3x2+11x+6 という式を見たとき,どういう推理をして予想の数を減らす(=可能世界を減らす?!)のか,といったことも解説したいのだが,それは稿を改めることとしよう。

では,お待ちかね,問題の解答を述べよう。

解答1.1.
公式を知らないものとして,という設定でお願いしたわけだが,我々はすでにこの公式,つまり因数分解の結果をよく知っているのだから,その記憶を消し去ることなどできやしない。
せっかくだから,その,すでに知っている知識を最大限に活用することとしよう。解答を書くときだけ,知らなかったふりをすればいいのだから。そういうRPGなのである。

a2+2ab+b2
において,2ab=ab+ab と分けて・・・(*)
a2+2ab+b2=(a2+ab)+(ab+b2).
この各項を部分的に因数分解して(かっこよく,この操作を『部分因数分解』と呼ぶことにしよう!部分について解決すると,それが全体の解決に繋がることがよくあるのだ。そうはいっても,必ずそれでうまく行くとは限らないのだが。),
(a2+ab)+(ab+b2)=a(a+b)+b(a+b)
を得て,共通因数 (a+b) でくくれば(「くくる」という言葉は学習指導要領には載っていない非公式の用語(スラング)なのだが,これほど便利な言葉もない!教科書にも載っていないかも?載せてもよい,むしろ載せるべきだと思うのだが)
a(a+b)+b(a+b)=(a+b)(a+b)=(a+b)2
となって因数分解が完了する。

途中,(*) の印をつけた箇所は,「え~,なんでそうするの!」と叫びたくなるようなテクニカルな式変形であろう。
そう思いついたのだから仕方がない,としか答えようがないのだが,理屈をつけられなくもない。
先ほどの式変形を逆再生すれば,
(a+b)2=(a+b)(a+b)=a(a+b)+b(a+b)=a2+ab+ab+b2
となって,なんのことはない,この展開の仮定を逆にたどっただけだというのが種明かしなのである!
そういわれてしまうと,なんということもないつまらない計算に思えてくるが,コロンブスの卵という言葉がまさにぴったりだろう。

解答1.2.
部分因数分解を行う。
a2+2ab+b2 などという式を見ると,ついむらむらっときてしまうのも無理はない。

a2+b2+c2+2ab+2bc+2ca=(a2+2ab+b2)+(c2+2bc+2ca)=(a+b)2+c(c+2b+2a).

はて,困った。部分分数分解を行ったけれども,これ以上進めそうにない。
これはグループ化の仕方が悪かったのである。
もちろん,ここからもう少し工夫すればどうにかならなくもないのだが,ここは先人たちの知恵『どれか1文字について式を整理してみよ。さすれば道は開かれん!』という言葉に素直に従って出直すことにしよう。

例えば c について降べきの順に整理すると
c2+2(a+b)c+(a2+2ab+b2)=c2+2(a+b)c+(a+b)2={c+(a+b)}2=(a+b+c)2
と,ごくあっさりとケリがつく。
ここで,部分因数分解がちゃんと活かされていることに注意されたい。

因数分解というのは,このように,少し式変形の道を誤ると途端に八方塞に陥ってしまうという,『不安定性』を内包しているのである。
正しい道を短時間でかぎつけるというのは勘と経験の賜物であるが,それにしたって試行錯誤が本質であることに変わりはない。
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久々に渋い問題。

2010-05-02 23:14:29 | mathematics
三角関数の重要な特徴である周期性に注意を払ってもらおうとして,演習の授業でついうっかり不用意に次のような問題を出してしまった。

問題の問題

f を実数全体で定義された,定数関数ではない実数値関数とする。
0 ではないある実数 T が存在して,すべての実数 x に対して
f(x+T)=f(x)
が成り立つとき,f を周期関数といい,このような性質をみたす T を f の周期という。
f が周期関数であるとき,正の数の周期のうちで最小のもの(それを基本周期という)が存在することを示せ。


実はこれは任意の周期関数について成り立つ性質では『ない』,というのがまずいところなのである。

しかし,僕もただでは転ばない。問題のある問題はさまざまな新しい問題を生み出す豊かな土壌でもあるのだ。この ill-posed な問題から派生した2つの問題を掲げておこう。


問題1. 上の問題がまずい理由,すなわち,『正の周期のうちで最小のもの』が存在しないような周期関数の例をひとつ挙げよ。


問題2. f が連続関数であるという仮定を付け加えれば上の問題は well-posed な問題になること,つまり連続な周期関数は基本周期をもつことを示せ。


どちらの問題も大学生にとってはかなり難しい問題である,と思う。

今回の件で痛感したのは,自分が周期関数についてほとんど何も知らなかったということである。

そして,周期関数というのはなかなか取り扱いが難しいことがわかった。
ひとつ賢くなった気分である。

周期関数は数学のみならず物理や工学で重要な役割を果たすので,非常に深く研究されているだろうと思うのだが,周期関数の理論を詳しくまとめたテキストはあるのだろうか?
図書館で探せばいいのだが,たぶん読むのにかなり苦労しそうな気がするので,あまり深入りするのもなぁ,と,探す前から躊躇してしまったりして。
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