担当授業のこととか,なんかそういった話題。

主に自分の身の回りのことと担当講義に関する話題。時々,寒いギャグ。

堅いものをたたくと音が出る。

2013-04-02 10:34:15 | physics
固形物をたたくと音がする。

そんなことは日々常に経験することである。

逆に,大きな音がすると窓ガラスやドア,壁などが振動する。

それも,ヘリコプターが通り過ぎる時などに体験することであるし,こぶしを軽く握って口を覆い,「あ゛~」と声を出してみれば手のひらに振動を感じることから,容易に確かめることができる。


ここでは,この二つの現象について思ったことを述べる。


一つ目。固形物をたたくと音がすることについて。

机をたたくと音がする。たたき方を変えたり,たたく位置を変えると音程などが変わる。

それはなぜなのか不思議であるが,そうなる理由を僕は知らない。

ただ,その理由の解明につながりそうな一つの仮説というか,物のとらえ方を思いついた。

それは,信号処理や電気工学風の解釈の仕方である。

コンとたたくのは,物体に撃力,すなわちほんの一瞬だけの強い力を加えることである。その様子をグラフにすると,それはまさにディラックのデルタ関数であるといってよいだろう。

フーリエ解析的に考えると,デルタ関数はホワイトノイズ的である。つまりあらゆる周波数の振動を同じ強さだけ含む。

ところが,物体には固有振動という,お気に入りの振動数がある。それは一つだけではなく,整数倍を全て含むのかもしれない。さらに,互いの比が整数比にならないような別系統の固有振動を持つことがあるのかどうかも気になるところだが,そうしたきわめて基本的なことでさえ,僕は何も知らない。我ながら情けないが,事実なので仕方がない。

で,何が言いたいかというと,あらゆる振動数を含むデルタ関数の衝撃に呼応して,物体は己の固有振動数にだけ反応して共鳴するのではないかということである。いわば,物体がフィルターの役割を果たすのではないかという仮説である。これは電気工学における周波数フィルターという考え方にヒントを得た。ラジオの電波を受信して選局するための同調回路が念頭にある。

システム理論風の語彙を用いれば,コンとたたくというのはインパルス入力であり,その入力に対する応答が物体の出す音だということになる。

このようなとらえ方は新奇(珍奇?)なものではなく,きわめてスタンダードなものだと思うが,その方面の教科書等を参照して確認したわけではないから自信はない。


二つ目。音が物体を震えさすことについて。

音は空気の密度の粗密であるという。

物体が振動すると,物体表面に接する空気が引かれたり押されたりする。その直接の結果として空気の密度の粗密が生じるというのは,それなりにイメージもでき,納得できる。

ところが,その逆,空気の粗密波,つまり音波が物体の表面に到達すると,物体の振動に変換するのはなぜだろうか。

仮に空気が疎な部分が物体表面に到達したら物体が少しふくらみ,密な部分に触れたら少しへこむのだとしたら,物体が変形したことになる。物体の変形は力が作用した結果生じたものであろうから,空気から物体に力が及ぼされたことになる。それは一体いかなる力なのだろうか。

空気と力,と並べれば,直ちに「圧力」という用語が連想される。空気の物理的な状態を定める状態変数としては,温度,圧力,体積,そして密度の4つが定番だろう。これらのうち,力に関係のありそうな物理量は圧力しか見当たらない。ところが,空気の振動は密度の粗密であるという。それがどう圧力と関係するのか,よくよく考えてみるとギャップがあることに気づいた。

これまで僕は,空気のふるえが物体に伝わる,というフレーズでもって,音でガラスがびりびりと震えるといった現象を片付けた気になっていたのであるが,いかにして空気のふるえが物体に伝わるのか,両者の境界上で何がどうやりとりされているのかの詳しいメカニズムをきちんと理解していなかったことに気づいた。

物体の振動によって音が生じるという現象を逆にとらえれば音によって物体が振動しそうだということならば,次のように考えれば想像がつく。物体をたたいて音を出す様子をビデをで撮影したとする。撮ったビデオを再生すると,物体の表面から空気の粗密波が外に向かって進んでいく様子が確認されるだろう。そこでビデオを逆向きに再生する。そうすると,物体に向かって進む音波が物体に接触すると物体が振動するという風に見えるのではないか。

ただ,この考え方には大きな問題点がある。たたかれた物体がボンと大きな音を出したあとにも小さな振動はしばらく続くだろうから,微小ながらも音は出続けているはずである。したがって,ビデオを逆再生したとしても,大きな音の波が物体にぶつかる前から物体が小さく振動していたことになる。これでは疑問に答えているとは言い難い。

逆は必ずしも真ならずというが,物理的な考察についてはビデオを逆再生したらどうなるかを考えると現象の理解が深まるように最近感じている。

ここまでだらだらと書き綴ってきたが,やっぱ空気の圧力変化が物体の振動を引き起こすということでいんじゃね?という気分になってきた。

物体の振動は,空気の接する部分の体積変化を引き起こす。空気の熱伝導速度よりも体積変化が速いとすれば断熱変化であるとみなして差し支えない。そうすると体積変化はただちに圧力変化を意味する。空気の分子量に変化が生じるような激しい衝撃ではないだろうから,空気の平均分子量も一定とみて差し支えない。そうすると体積変化は密度変化にも直結することとなる。

というわけで,体積変化が状態方程式を通じて圧力変化に変換され,密度の定義を通じて密度変化に変換されるというのが事の真相であろう。


一応の結論に達したから,今のところは結構満足かな。
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