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超音波を聴く?!

2014-10-16 17:33:07 | 工作・実習
この間,立命館大学で超音波を用いた狭い領域でのみ音が聞こえる装置が開発されたというニュースをみた。

それを知った時の第一印象は,

超音波じゃ聞こえないんじゃね?

という疑問だった。

詳しく調べる前に自分なりに考えてみたところ,次のようなアイデアに到達した。

超音波は通常の可聴音に比べて振動数が高く,波長が短い。そのため指向性がよく,音をあまり拡散させない。そのことがこの技術を開発したポイントらしい。

しかし,超音波とはヒトの可聴域の上限である20kHzよりも大きい振動数の音波を意味するそうなので,そのままでは音は聞こえない。

ここでラジオの電波の仕組みが思い起こされる。ヒトの声や音楽で用いられている音に比べてずっと振動数の高い電波を利用して音声を遠方に伝えている。そこで用いられているのは変調という技術である。それを超音波で実現すれば済むことではないだろうか。

さらに次のように考えを進めた。

二つの超音波スピーカーから少しだけ振動数の異なる音波を出したら,二つのスピーカーが向けられている狭い領域ではうなりが耳で聞き取れるのではないだろうか。

つまり,二つの超音波のうなりとして音声が再現されればいいのではないだろうか。

ここまで考えたら,できれば自分の手で実験して確かめたいところである。

しかし,二つの大きな技術的困難が僕を阻む。

一つは,そもそも超音波を発生させる装置を自作するのが難しそうなことである。以前,秋月通商のカタログで超音波実験キットのようなものがあることを知ったが,僕には敷居が高い。

もう一つは,変調をどうするか,である。上で述べたアイデアは周波数の差を利用するもので,音声信号を超音波の周波数の変動として伝える必要がある。それはつまりFMと呼ばれる変調の仕方であって,それをどう電子回路で実現すればよいのか皆目見当がつかない。


というわけで,自分で試してみるのは断念し,ネットを検索して答え合わせをすることにした。

まず立命館大学の公式ニュースサイトで簡単な概要を知る。西浦敬信教授自らの解説してくださっている動画へのリンクもあるので大変勉強になった。ただ,そこで一つ気になったのはキャリア波と側帯波という用語である。これらは確かAMの理論で出てくる用語ではなかったろうか。やや詳しい解説資料にも目を通したが,変調方式の名称は具体的に書かれていなかった。


「超音波スピーカー」というキーワードで見つかった Wikipedia の「パラメトリック・スピーカー」という項目には,大体僕が想像した通りのことが書かれていた。

ついでに秋月通商で販売されている超音波スピーカーのお値段を見てみると,あらビックリ,1個100円とお買い得!
通常のコーンスピーカーに比べれば小さいにもかかわらず同じ程度の値段なわけだから,やや割高なのだろうが,その程度なら大した投資ではない。

どうせなら僕の技術上の問題点をすべて解決してくれる,パラメトリック・スピーカー実験キットが便利なのだが,そちらは11,800円(税込)だそうだ。DC12Vで動かすそうなので,そのアダプタまで込みだと12,700円になる。うーむ・・・。この手の話に興味を持ってくれそうな人におねだりしてみようかなぁ。


超音波スピーカーを用いて限定された領域でのみ音が聞こえるようにする,という技術は僕が思いついたわけではなく,そういったキーワードからより詳しい動作原理を推測しただけである。しかしその際,正解に至ったのはラジオの通信方法と,もう一つ,波の重ね合わせを利用するという発想を知っていたことが大きい。波の重ね合わせをうまく利用した例としては,周囲の組織を傷つけることなく患部の細胞のみレーザーで死滅させる医療技術がある。それについては確か佐藤文隆・松下泰雄共著『波のしくみ』(講談社ブルーバックス)で学んだような気がする。記憶違いかもしれないが,確かこの本にそのことが紹介されていて,波の重ね合わせを利用するとは実にうまいことを考えたものだと強く印象に残ったのであった。


いつも思うことだが,からくりを知った後では簡単なことのように思えたとしても,最初にそれを思いつくことは至難の業である。それだからこそ,最初に思いついた人々に敬意を抱かずにはいられない。
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