担当授業のこととか,なんかそういった話題。

主に自分の身の回りのことと担当講義に関する話題。時々,寒いギャグ。

<読書感想文1001>暗号解読・上

2010-03-28 23:56:15 | 
サイモン・シン,暗号解読 上,新潮文庫,2007.


友人が面白いと言っていたので,読んでみた。
確かにものすごく面白い。
暗号作成者と暗号解読者の,息が詰まるような頭脳戦も面白いが,暗号に携わった人々のドラマや世界の歴史が動くさまが,冷静でいながら飽きさせない絶妙なタッチで描かれている。
その根源にはもちろん原著の魅力があるわけだが,翻訳者の青木薫氏の力量によるところも大きいだろう。
難解な暗号のカラクリが明快な筆致で説明されており,読者をなんとなくわかった気にさせてくれる。
ただ,エニグマ暗号についてはあまりよく分からなかった。これは記述のせいというより,そもそもが極めて複雑な話だろうから,ちょっと読んだだけで分かろうという僕の怠慢と,理解力の乏しさに問題があるのだろう。

ところで,面白いには面白いのだが,暗号は当然秘密を隠すということが目的で使用されるわけだから,諜報合戦のような,人間活動の暗部がクローズアップされるため,そこには「大人の論理」が展開されており,そういう世界とは縁がなく,気ままに生きている僕は少し辟易してしまった。

上巻ではエリザベス女王の時代からエニグマに守られたドイツのUボートが列強を苦しめた第二次世界大戦までの暗号の歴史が語られている。
暗号にかかわった様々な人々が登場するが,その中でもヴィジュネルとバベッジが変わっていて気になった。
このふたりは私財をためた後,後半生を好きな研究に捧げた生き様に共通点がある。
中でもバベッジは,僕の勝手な命名ではあるが,「イギリス的な天才」の一人である。僕には,イギリスにはときどき正式な教育を受けた学者ではなく,独学で学んだ後,驚くべき業績を上げた天才が何人も輩出されたというイメージがあるが,バベッジはそのうってつけの例である。スケールの大きな未完の計画を立てるところが,どことなくロシアの化学者メンデレーエフを髣髴させる。

あと,第I章の最後にスコットランド女王メアリーの犬のエピソードがあったが,それは,つい「メアリーの犬」というタイトルで小説化するか,映画化したいと夢想してしまうほどに印象的だった。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« カンヒかヒカンか。 | トップ | 洟(はな)垂れ。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事