雑誌「数学セミナー」1968年7月号に掲載された荒木不二洋氏の「定義のうらおもて 数学の一つの学び方」というエッセイを読んで考えたことがある。
このエッセイは,群の公理系はさまざまな形のものが知られているが,そのうちのひとつを紹介し,その公理系からいくつかの基本的な定理を導いてみせた後,公理系をほんの少し変更するとどういうことになるかを吟味するという,題材は初等的であるものの,大変教育的かつ興味深い内容である。
始めの方を読んでいて,「公理系のこれをこう変えたらどうなるのかな」と思いついたことがあるのだが,読み進めるとその考えはすでに想定済みだったようで,僕が思いついたのと全く同じ改変を公理系に施すとどうなるかが詳しく(そして僕が予期していなかった程度の深みまで)解説されていた。
この記事が面白かったので友人の gk 氏に紹介したところ,もともとの公理系の正確な内容に関する問い合わせがあり,その質問内容からヒントを得て,また別の改変の仕方を思いついた。
それは次のようなものである。
集合 G には,その任意の2元 a,b に対して,それらの積 ab と呼ばれる G のある要素を対応させる演算が定義されているものとする。
積は結合則を満たす,すなわち,G の任意の元 a,b,c について,(ab)c=a(bc) が成り立つものとする。
さらに G には次のような性質を満たす元からなる部分集合 E があるものとする。
このような性質を満たす E の元は右単位元と呼ばれるが,僕が考えたかったのは,これらの仮定から,E が実はただ一つの元だけからなること,つまり右単位元の一意性がいえるか,という問題である。
右単位元の一意性が証明できればそれでよし。
もし一意性が必ずしも成り立たないならば,そのことがはっきりわかるような反例を作りたい。
しばらくあれこれ試行錯誤した結果,自分なりの解答を得た。
久々に頭を使う体験をした。
自分にはこの問題は解けないような気がしていたが,考え続ければそれなりに成果が出るという,研究の基本を思い出すことが出来たのでこのような遊びはとても有意義だった。
※ この記事で述べた体験から学んだことは,その後,ちょっと違った話で役に立った。
このエッセイは,群の公理系はさまざまな形のものが知られているが,そのうちのひとつを紹介し,その公理系からいくつかの基本的な定理を導いてみせた後,公理系をほんの少し変更するとどういうことになるかを吟味するという,題材は初等的であるものの,大変教育的かつ興味深い内容である。
始めの方を読んでいて,「公理系のこれをこう変えたらどうなるのかな」と思いついたことがあるのだが,読み進めるとその考えはすでに想定済みだったようで,僕が思いついたのと全く同じ改変を公理系に施すとどうなるかが詳しく(そして僕が予期していなかった程度の深みまで)解説されていた。
この記事が面白かったので友人の gk 氏に紹介したところ,もともとの公理系の正確な内容に関する問い合わせがあり,その質問内容からヒントを得て,また別の改変の仕方を思いついた。
それは次のようなものである。
集合 G には,その任意の2元 a,b に対して,それらの積 ab と呼ばれる G のある要素を対応させる演算が定義されているものとする。
積は結合則を満たす,すなわち,G の任意の元 a,b,c について,(ab)c=a(bc) が成り立つものとする。
さらに G には次のような性質を満たす元からなる部分集合 E があるものとする。
- G の任意の元 a および E の任意の元 e に対し,ae=a が成り立つ。
- G の任意の元 a に対し,G のある元 b と E のある元 e があって,ab=e が成り立つ。
このような性質を満たす E の元は右単位元と呼ばれるが,僕が考えたかったのは,これらの仮定から,E が実はただ一つの元だけからなること,つまり右単位元の一意性がいえるか,という問題である。
右単位元の一意性が証明できればそれでよし。
もし一意性が必ずしも成り立たないならば,そのことがはっきりわかるような反例を作りたい。
しばらくあれこれ試行錯誤した結果,自分なりの解答を得た。
久々に頭を使う体験をした。
自分にはこの問題は解けないような気がしていたが,考え続ければそれなりに成果が出るという,研究の基本を思い出すことが出来たのでこのような遊びはとても有意義だった。
※ この記事で述べた体験から学んだことは,その後,ちょっと違った話で役に立った。