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英語と子育て

英語を通して子どもたちの夢をサポートするブログです

「今、何分?」は「なんふん』?「なんぷん」?

2011-10-24 | 言語獲得
随分前のことですが、次男が「母さん、今なんふん?」と聞くので吹き出したことがあります。

    「’なんふん’じゃなくて’なんぷん’でしょ?」
 次男  「はあ~? なんふん、でしょ」(と、真面目な顔)

聞くとまわりの友人は「なんふん」と言うらしい。日本語の危機だ!と思うと同時に、私もいささか不安になってきました。
それで、まわりに聞いてみたのですが、意見が別れて、結局、日本語に詳しい友人に聞きました。

ちゃーんと法則があるのです



 ちょっと小さいですが拡大してみてください。音がきれいに別れています。この原則からいくと、「何分」は「なんぷん」でしょう。

     

 日本語がとっても堪能なアメリカ人のSくんとほかの講師も一緒に交えて食事をした時です。

 私   「日本語で一番難しいのはなに?」
 Sくん  「Countingですね」そして「言い方がいっぱいありますね。覚えるの大変 

確かに! 言語学的には「数量詞 Quantifier」と呼ばれるのですが、私たち英語学習者にとって、英語の数量詞も簡単じゃありません。

 でもSくん言いました。 「でも、英語なら'some pieces of paper'は'some papers'って言っても全然OK」「日本語は数を数える時から全部違うもの

 確かにそうです、紙は「いちまい、にまい」
         瓶は「いっぽん、にほん」

 もっと難しいのだってあります。例えば、お米は「いちごう、にごう」
 それぞれのものにそれぞれの数え方があります。挙げだしたらきりがありません。

 この数の数え方ひとつで「ネイティブ」なのか「ノンネイティブ」なのか聞けばいっぱつでわかります。

 Sくんに「日本人はどうやって覚えるんですか?」と聞かれて首をひねりました。基本的なものー特に音韻的なものは「学習」した覚えはあまりなく、子ども時から「習得」しています。

 おそらく、絵本をたくさん読んで、まわりの大人が言っているのを聞いて、習得しているんですね。

 Sくん 「はあ~道は長いです 

 いやいや、その若い脳でどんどん読んで覚えていってねと励ましました。

 私たち日本人は日本語が母語でラッキーです 

暗唱・朗読をしよう

2011-05-16 | 言語獲得
東北大震災より2ヶ月あまりが経ちました。

 震災の一ヶ月後の4月11日にアメリカ、ワシントンのナショナル大聖堂で「日本応援ミサ」が宗教を問わず開かれ、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」が朗読されましたが、このニュースを見て目頭が熱くなったのは、おそらく私だけではないと思います。

 「雨ニモマケズ」を読むと、この主人公とクリスチャンの姿勢がかぶりますが、作者の宮沢賢治は法華経の信者です。

 実は、この詩にはモデルがいます。

 花巻出身の齋藤宗次郎という人です。禅宗寺の三男坊でしたが、内村鑑三に導かれてクリスチャンになりました。当然家からは勘当され、幼い女児を亡くしながらも、新聞配達などで生計をたてながらまわりの人の世話をし、この詩のような生活をしていました。内村のもとへ行くべく上京する時は、齋藤を見送る人でホームはあふれんばかりだったそうです。その中に宮沢賢治もいました。



 私は小学生の頃にこの詩を暗唱しました。この詩を暗唱している日本人は多いと思います。

 私の子どもたちは「ゆとり教育」の中で、小学校でそういうチャンスがありませんでしたが、当時NHK教育テレビで「にほんごであそぼ」という番組を見ていて、それをきっかけに覚えました。この番組は非常に魅力的で、我が家の子どもたちは一時、とりつかれたように「寿限無」などの落語や早口言葉などを口ずさんでいました。

 この番組の監修者である齋藤孝さんはこの「雨ニモマケズ」を「半世紀以上にわたる日本の暗唱文化の砦」と言っています。

 暗唱・朗読はリズムやテンポそして響きを身体全体で感じるところにおもしろみがあります。特に音に出すことによって足腰と肚を鍛え、息を強く深くしますので、生きる力をも鍛えられることでしょう。そしてなにより身体で覚えていきますので、なかなか忘れることがありません。

 数年前、京都の立命館小学校のオープン授業を見学に行った時、朝のモジュールタイム(所謂、朝の学習タイム)で、算数は「百マス計算」、そして国語は詩の朗読や暗唱をやっていました。朗読の時は全員立っておこなっていました。

 なにを朗読していたか記憶が定かではないのですが、かなり長いものを子どもたちが朗々と唱っているのに感銘を受けました。

 朝一番におなかから声を出して朗読すると脳が活性化して、その後の授業の理解度がアップすると先生がおっしゃってました。

 日本も昔、寺子屋の時代は孔子の「論語」を朗読し覚えたと聞きます。その時は意味がわからなくても人生の中で時を重ねるにつれて意味がわかってくるものです。長い人生の中で、ふと意味がわかる瞬間があるでしょう。そういう意味で名文は人生を豊かにします。

 「日本語を体得するという観点からすると、子どもの頃に名文と出会い、それを覚え、身体にしみ込ませることは、その後の人生に莫大なプラスの効果を与える」と齋藤さんは述べています。

 「英語のコミュニケーション能力」も「母国語能力」が基本だと思います。


 追記:
「にほんごであそぼ」で取り上げられた詩などを収録した「声に出して読みたい日本語」(齋藤孝 著、草思社)が発刊されています。我が家の本棚にも3巻が並んでいます 

 

「子どもの頭は柔らかく、大人になると固くなる」ってほんと?

2011-01-04 | 言語獲得
大晦日の前日に家族でハリーポッターの映画を見に行きました。前作から時がたっていますので、ちょっとした登場人物の名前とか系図がつい頭の中で混乱したり忘れたりしています。

 それに比べ我が家の息子たち・・・長男はすべてのシリーズ本を4-5回読んでいるので当然といえば当然なんですが、次男はほとんど読んでいないにもかかわらず、「そこまで覚えているの!」と舌を巻くほど、場面の展開、情景、名前の一字一句までも正確に覚えています。この記憶の良さを学校の勉強でも発揮してくれたら嬉しいのだけど

 それはさておき、よく「子どもの頭って柔らかいね」とか「最近頭が固くなっちゃってマニュアルが読みづらい」なんて言葉を同世代で聞きます。この子どもと大人の脳の違いというのは何でしょうか?

 実は脳には「臨界期」と「可塑性」というふたつの大きな特徴があります。

 「臨界期」というのは英語ではクリティカル・ピリオド(critical period)と言い、生物学者のレネバーグが述べたのですが、ある「決定的」で「重要」な時期を指します。要するに、その時期を逃すと、発達しないよ、習得は難しいよ、という特別な時期です。人間の言語も12歳くらいまでが臨界期ではないかと推測されています。

 また「可塑性」というのは、物理的に言うと、「変形しやすい性質。外力を取り去ってもひずみが残り、変形する性質。塑性」(広辞苑)というもので、脳の場合、「脳の機能が環境の影響で変化し、その変化を一時的でなく、ずっとあとまで維持する性質」を指します。

 脳の臨界期のメカニズムはまだ研究中ですが、その時期がどうやら幼児期にあるらしいことが、いくつかの実験でわかってきました。だから子どもの頃に習得したことは、ある時期は離れていても、あとからやってみると案外できたりするわけです。そしてこの臨界期に神経回路や脳の機能が著しく発達するということです。そしてさらに「可塑性」は臨界期をピークとします。 (詳細は「頭のいい子ってなぜなの?」ヘンシュ高雄 著、海竜社、を参考にしてください)

 要するに、子どもの脳はあらゆる情報を吸収し情報マップを広げるわけですから、五感を刺激する情操教育が大切だということは言うまでもありません。「何が何でも早期教育」というのでは困ります。早ければいいってことはありません。適年齢に適切なことを学ばせましょう。またこの時期は音にも敏感ですから、楽器や言語のインプットに有効であると言えますね。

 その後、脳は16歳で成人と同じ大きさになり成熟します。大学受験時は脳のピークと言われており、おそらく一番学習能力が高い時期でしょう。それ以降機能は確かに低下しますが、刺激によって可塑性の維持は可能です。その刺激はある意味「学習」と言えるでしょう。

 大人になっても絶えず外界からの刺激を受けて、「学習」を続け、子どもに負けないくらい柔らかい脳を保っていきたいものです 

 私もまだまだ息子たちに負けてはいられません 

 

バイオリンと英語

2010-11-26 | 言語獲得
長男は生後3ヶ月でアトピー性皮膚炎と診断されました。四六時中身体が痒いので、この子は集中力がつかないのではないかと、とても心配しました

 集中力をつけるのに何かいい方法はないかと考えていた時に友人から勧められたのが「スズキメソード」のバイオリンでした。
 
 「スズキメソード」というのはヴァイオリニスト鈴木鎮一氏が音楽を通して人間を育てることを目的とした教育法で、バイオリンをただ弾くことが目的ではありません。とにかく本物の音楽をたくさん聴いて身体で理解し心を育てていくというものです。ですから楽譜が読めない幼児でも始められるのです。これは文字が読めなくても母語をマスターしていく過程と同じです。アメリカにもたくさん教室があります。

 さて、4歳になった長男をレッスンに連れていくと、やってみたいといいました 最初は箱バイオリンといって、空箱と定規で作ったバイオリンをあごで挟んで持ってまっすぐ立ち、鉛筆を弓にみたてて手に持ち、構えるというところからレッスンが始まるのですが、それとは別に始めた頃からとにかくどこででもバイオリンの練習曲を聴きました。

 車に乗っている時はもちろん、リビングにいる時はいつもテープやMDがかかっていました。とにかく聴いて耳で覚えるのです。中学生になると通学中もウォークマンで聴いて曲を覚えていました。「好きな音楽は?」と聞かれると「ドボルザーク」と答えて、友達が引いたそうです

 バイオリンを持ったらその音がでるところに指を押さえるのですから(というか指が勝手にその音を探して動いているように見える)、ちょっとした狂いも自分でわかるようになります。おかげで一緒に聴いている私もバイオリン曲に詳しくなりました。

 この「耳で覚える」というのは言語獲得のプロセスと全く同じです。本物の音をたくさん聞いて、自分でその音を作り出していく―調音していくわけです。ですから幼児から本物の音に触れていると、その後口からでてくる音も本物なのです。

 この「スズキメソード」のもうひとつの特徴は親子で取り組むことです。レッスンにはもちろん同席しますし、家庭練習では母親は「お母さん先生」と呼ばれ、子どもと一緒に学んでいきます。これは相当きついことです。毎日コツコツ何かやるということは、大人でも大変なことですが、子どもならなおさら・・・おまけに親子で。息子の年齢が高くなってくると「音があってる、あってない」で喧嘩になることもありました。でも今思いますと、こうした時間が息子との一対一で向き合う凝縮した、そして充実した時間でした

 結局この長男は大学受験ギリギリまでバイオリンを弾いていました 学校の試験前でも試験中でもレッスンを休むことはありませんでした。試験は前もってスケジュールがわかっているのですから、それにあわせて準備すればいいと言い聞かせてありましたし、本人もだからといってレッスンを「休む」と言ったことはありませんでした。

 大学にはいってからは学生オケにも入り、友人関係を拡大していきました。楽譜はいつの間にか読めるようになっていました。今でも「あれ弾いて」と言うと、暗譜ですらすら弾いています。耳に残っているのでしょう、これには感心します。

 こうしてみると「スズkメソード」のバイオリンも英語学習もよく似ています。まずは小さい頃に本物の音をたくさん聴いて吸収すること。これがその後のアウトプットに繋がるのです。
 


 

マザリーズの効用

2010-11-11 | 言語獲得
おなかの中の赤ちゃんがお母さんの声を聞いていることはよく知られています。妊娠中は一心同体ですから、一番よく聞く音はお母さんの声でしょう。

 だから生まれてからも赤ちゃんはお母さんの声を聞くと安心します。お母さんも生まれたての赤ちゃんに話しかけます。たとえ赤ちゃんがそれに応えなくても話しかけます。これが子どもの言語獲得の第一歩です。

 お母さんはかなり高い調子でゆったりと赤ちゃんに話しかけます。これはお母さんの赤ちゃんへの愛情が音となって表われてくるからです。このお母さんの語りかけを「マザリーズ(Motherese)」と呼びます。そして赤ちゃんはその音を快く感じ、また敏感に感じます。

 私は今までに何百人の生徒を教えてきましたが、親子でひとつの特徴があるように感じます。

 元気溌剌でおしゃべりなお母さんのお子さんは概してよくおしゃべりをします。女の子はお母さんのしゃべり方そっくりに話します。反対にお母さんがもの静かな方ですと、お子さんもどちらかというと静かなお子さんのようです。

 もちろん100%ではなく、お母さんがものすごくおしゃべりなのに、お子さんが無口というパターンもありますが、とてもまれです

 言語獲得研究者のウィークス(T. Weeks)によると;

前言語段階(単語レベルで発する前)の幼児に語りかける母親言葉は、情報というよりも情愛に満ちており、子どもの注意をひきつけ、言語習得の基礎になる大人と子どもの間の暖かい絆をつくりあげるために役立っている。
 
 抱っこする時、おむつを変える時、たくさんたくさん赤ちゃんに話しかけましょう。お母さんがたくさん語りかければ語りかけるほどに赤ちゃんは快く感じ、脳が発達していきます。

 もちろんお子さんが大きくなってきても、たくさん話しかけてください。お子さんが話しかけてきたら、手をとめて目をみて応えてほしいです。そうすればコミュニケーションを上手にとれる子どもに育っていきます。

 親子の対話がコミュニケーションの基礎になるのです。