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重度自閉症者の死亡事故で和解 逸失利益支払いで、札幌地裁/命の価値をめぐる裁判のニュース

2009-12-21 00:09:19 | 法律・裁判
重度自閉症者の死亡事故で和解 逸失利益支払いで、札幌地裁(共同通信) - goo ニュース

 不幸にも、愛する人を交通事故などで失った場合、故意・過失のある加害者に対して刑事裁判とは別に民事裁判で、損害賠償を求める事になるケースがある。

 その際に、逸失利益という考え方で損害賠償額を計算することになる。もし、交通事故などがなければ、将来、被害者が得られるはずだった利益のことで、労働できたであろう期間の収入から、生活費等の必要経費を引く。また、前払いという性質であることから、その間の金利も控除する。死亡や後遺障害によって、得られなくなった収入を、その就いている職業や年齢を考慮して計算される額である。学生等、未だ、就職していない者も、一定の基準に沿って計算される。
 しかし、この逸失利益の考え方は、本来は、健常者を前提としたものである。
障害者の場合は、軽度と中度の知的障害者については、判決や和解で逸失利益が認められたケースがあるが、重度障害者については、ニュースで紹介されている4日の札幌地裁での和解以前は、認められていなかった。

 2005年8月、原告の両親の重度自閉症の長男(当時17)のたっちゃんは、ヘルパーとともに路線バスを利用して札幌市内の公園へ出かけた際、バスから降りたところを乗用車にはねられ死亡した。たっちゃんにとっては、初体験の路線バスを利用した外出であった。たっちゃんが家を出たのが、午前10時で、自己の連絡を受けたのは、午前11時20分であった。母親が病院に向かう途中、タクシーの中でたっちゃんの死亡の報を知らされた。
 
 加害者である運転手側の損害保険会社は、重度障害を理由に、たっちゃんは将来に渡って収入の見込みはなく、逸失利益はゼロ円と算定した。
 両親にとって、生きている価値がゼロだと判断されたことや、誰も責任をとることのない結果に対して、加害者の運転手らを相手取り、逸失利益約4千万円を含む約7300万円の損害賠償を求め、提訴した。
 この訴訟は、12月4日に、札幌地裁(中山幾次郎裁判長)で和解が成立した。約1563万円を逸失利益とみなし、加害者側が計約4013万円を支払う内容であった。

 弁護団によると、重度障害者で逸失利益が事実上認められたのは全国でも初めてであり、札幌地裁は、和解案の算定根拠として、当時の北海道の最低賃金(時給641円)を基に、週休2日で1日8時間労働できたものと見込み、生活費等を控除した約1131万円を提示した。また、障害年金を基に、さらに20歳から65歳までの障害年金計約431万円を加え、逸失利益とみなした。これに両親に対する慰謝料などを合計して約4013万円とした。

 なお、和解金の支払いについては、すでに原告は自賠責保険で3000万円を受け取り済みのため、加害者と事故当時付き添っていたヘルパーが計約1000万円を支払う事になった。

 さらに和解には、事故が再度起こりうる停留所周辺の構造を、バス会社が障害者に配慮する改善を行うという内容も含まれた。障害者も、健常者に対しても、生活する上で、安全が配慮された街づくりに対する要望に関する内容も盛り込まれたことになる。全ての人が生きやすい世の中をつくることを考える上でも、意義のある裁判であった。

 今後、逸失利益の算定において、今回の裁判所の考え方が定着するかどうかは分からないが、損害賠償を算定する上で、「生きている」事の意味を問題提起したケースであった。


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